リベラルアーツ教育(Liberal Arts Education)を強調する大学が日本でも増えている。特に「国際リベラルアーツ」を掲げる学部の新設が相次いでいる。こうした学部のカリキュラムを「国際系リベラルアーツ」と呼ぶのだそうだ。我が国のリベラルアーツの雄は国際基督教大学( University: ICU)といえよう。だが大学の性質からみればInternational Christian Collegeと名付けるのが正しい。単科大学であるからだ。
ICUはベラルアーツ・カレッジとして「平和」、「学術基礎」、「専門知識」を統合しながら、バイリンガリズムによる世界基準の「全人教育」という理想を掲げて1949年に創立された。「国際的社会人としての教養をもって、神と人とに奉仕する有為の人材を養成し、恒久平和の確立に資することを目的とする」とある。アメリカの長老派教会によって支援され、財界からの寄付を受けて、リベラルアーツ・カレッジの形式を踏襲している。
ICUはもともと人文科学科、社会科学科、自然科学科の3学科から始まり、その後は教育学科・語学科・国際関係学科の設置で6学科となる。卒業要件単位の組み合わせについて自由度が高く、知識の統合と専門分野を超えた交流が学科間で行われることに特徴がある。これはアメリカ型のベラルアーツ教育を受け継いだものといえる。第二代学長の鵜飼信成はICUを名実ともにベラルアーツ・カレッジとして発展させた。
かつて筆者も北海道大学の教養部で1年半を過ごした。東京大学にも教養学部があった。リベラルアーツ教育が重視されていた。だが、教養部の勉強は高校の延長のような内容であった。目新しいことといえば、ドイツ語とフランス語のいづれかが必須であったことだ。ウィリアム・クラーク(William Clark)や内村鑑三の本を読めたのがよかった。今思えば、筆者も海外で学ぶ機会を得たのは、この教養部時代からなんらかの影響を受けたといえる。