『自閉症の息子たちのためにサービスを選ぶ』 その5 V.親がより良い選択を行うために –今後の課題–

都内のお住まいのM.N.氏から寄せられた投稿の最終回です。もし、これまで掲載してきた内容についてM.N.氏と個人的に情報を共有したいかた、もう少し公の場で討議したいというご希望がおありでしたら、私、成田までお知らせ下さい。M.N.氏にその旨お伝えして協議していきます。

I.誰のためにサービスがあるのか –家族のごく普通の地域での生活のために–
II.最初に受けたサービス –米国でのサービス–
III.帰国後のサービスの現状 –米国での経験を生かして–
IV.サービスを自ら選択する時代 –親が必要とすること–
V.親がより良い選択を行うために –今後の課題–
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V.親がより良い選択を行うために –今後の課題–

障害のある人とその家族がサービスを選択するに当たって議論されるべきことは、(a) サービスの質・量の充実、(b) 効率的な情報提供、(c) 本人と家族が選択する力をつける支援の3点です。特に3点目の本人と家族が選択する力をつける支援にポイントを絞って述べることとします。

1.専門家による支援
親は初めから子どもの障害についての専門家ではないので、専門家からの子どもの障害と発達段階についての説明、子どもとの関わり方と生活スキルの教え方などの指導を必要としています。そのような指導を受けることにより、子どもとの関わり方を理解でき、子育てに自信を持てるようになります。特に早期療育における、専門家が果たす役割は大きいと考えています。このように,子どもを理解することにより、親として子どもが必要とするサービスを考え、選択できるようになります。

2.セルフヘルプグループによる支援
同じような経験を持つ親と話し合うことにより、障害のある子どもを抱える家族同士で連携が育まれ、共感が養われ、それが色々な力になります。何よりも、障害のある子どもを抱えている家族が他にいることを知り、孤独な気持ちが癒されます。将来についての見通しについても先輩の親との話しの中から持てるようになります。親が疑問に思っていること、不安に思っていることを、専門家でない第三者に話すことはとても大切です。話し合うことで、具体的な解決策や解答がでなくても、問題が整理できたり、家族としての生活の在り方についての方向性のようなものが親に見えてきたりします。このような経験が、具体的に本人と家族に必要なサービスを選択する時の助けとなります。

3.継続的な相談コーディネータによる支援
継続的に本人に関われるコーディネータ(キーパスン)を中心とした個別教育計画/個別ライフプラン/個別援助プランなどの定期的な作成と見直しができるシステムが必要です。教育計画やプランを定期的に見直すことにより、本人、家族とも将来への見通しをもちながら、問題整理・解決ができます。このような経験の積み重ねにより、家族と本人がどのようなサービスを必要としているかを自ら考え、主張し、選択できるようになると考えます。

4.おわりに
障害のある子どもとその家族が、ごく当たり前に地域の中で生活できるようにすること、これこそが、医療・教育・福祉サービスの役割だと思います。親はこの目的のために,障害のある子どもたちのサービスを選択しています。しかし,家族は最初から障害のある子どもと様々なサービスを上手く利用して生活しているわけではありません。家族は子どもと関わりのある専門家や仲間の家族などに支えられ,また子どもの障害について様々なことを学びながら、本人と家族が必要とするサービスを考え、次第にそれらを選択できるようになのです。

最後に,障害のある人とその家族が自ら選択する力をつけ、また,この選択を可能にするためには,継続的に本人とその家族に関わることのできる『サービス・相談コーディネータ』の存在が必要だと考えます。このコーディネータの役割は,医療・教育・福祉の立場の関係者が連携して,本人と家族のニーズを理解し、これらのニーズに見合うサービスの提供をコーディネートすることです。

どのような制度の中で、誰が、その役を引き受けるべきかは今後の大きな課題です。しかし、二人の自閉症障害のある息子の親としては、一日も早くこのようなシステムができることを願っております。今,発達障害のある人を取り巻くたちの連携と創意工夫が問われているのだと思います。

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『自閉症の息子たちのためにサービスを選ぶ』 その4 IV.サービスを自ら選択する時代 –親が必要とすること–

今回は、『自閉症の息子たちのためにサービスを選ぶ』の4回目である。保護者が子どもに適切なサービスを探す努力が語られる。

I.誰のためにサービスがあるのか –家族のごく普通の地域での生活のために–
II.最初に受けたサービス –米国でのサービス–
III.帰国後のサービスの現状 –米国での経験を生かして–
IV.サービスを自ら選択する時代 –親が必要とすること–
V.親がより良い選択を行うために –今後の課題–
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Ⅳ.サービスを自ら選択する時代 –親が必要とすること–

これまでの経緯は1980年代半ばから1990年代の我が家のサービスを選ぶ現状から述べたものです。これを踏まえて、親がサービスを選択するために何が必要とされているか述べたいと思います。

1. 子どもの障害、発達段階、ニーズについての説明
障害のある子どもの親は,子どもの障害についての専門家ではありません。子どもの障害名を知って、慌てて専門書や関連のホームページで調べたりするのが現状です。最近では、親が参加することができる様々な講習会などもあります。

親は、子どもに関わる専門家による、障害の内容と発達段階についての丁寧な説明を必要としています。しかし、親の子どもの障害についての受容過程の段階や、また親がおかれている居住空間や社会的条件により、親が子どもの障害について説明を聞いたり知ったりする機会に差異が生じます。子どもの障害について、どれだけ親が的確に理解しているか否かで、家庭生活への影響は変わってきます。このように,親の障害に対する受容過程や社会的な状況に対応できるように、専門家やセルフヘルプグループが障害についての説明をする必要があると思います。

2.専門家による具体的な援助、教育方法の説明と指導
多くの親は、障害のある子どもの子育てについての知識や経験はありません。私のように障害のある子どもが二人いても、子どもにより障害の特徴が違うので戸惑うことが多くあります。具体的には、文字や数などの学び方が違います。

親は、特に障害告知後から幼児期までは、子どもとの関わり方や家庭での生活スキルの教え方などの指導を必要としています。そのような指導を受けることにより、子どもとの関わり方や子育てに自信を持てるようになります。このような説明と指導は、継続的に必要とされています。

3.親が子どもの将来像を持てるサポート
親が子どもとの生活についての将来像を持ちながら、自分らの生活を組み立てることは重要です。それを可能にするようなサポートが必要です。そのようなサポートとは、子どもの将来や可能性について見通しを持てるような情報を親に与え、親が頑張ってみようという気持ちをおこさせるサポートです。

4.サービスについての正しい情報
サービスを選ぶ最終段階では、親が入手する情報の量と質がポイントとなります。公的でない私的なサービスについては、口コミと親同士の情報交換によるものが圧倒的に多いのです。また、学校、作業所関係の情報などは,第三者による客観的なものがあればよいのですが、親による口コミ情報が中心で、情報として客観的でないことも多々あります。公的そして私的なサービスについての,効率的で客観的な情報提供システムが必要とされています。

5.専門家と相談する機会
サービスを選択する最終段階において、その選択についてのメリットとデメリットを専門家や障害のある子どもの保護者などと話したり相談する機会は、そのサービスの選択が最善であるか、子どもに対して公平であるかを判断するために大切です。

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『自閉症の息子たちのためにサービスを選ぶ』 その3 帰国後のサービスの現状 –米国での経験を生かして–

今回は、『自閉症の息子たちのためにサービスを選ぶ』の第三回目である。

I.誰のためにサービスがあるのか –家族のごく普通の地域での生活のために–
II.最初に受けたサービス –米国でのサービス–
III.帰国後のサービスの現状 –米国での経験を生かして–
IV.サービスを自ら選択する時代 –親が必要とすること–
V.親がより良い選択を行うために –今後の課題–
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Ⅲ.帰国後のサービスの現状 –米国での経験を生かして–

1998年の夏、私たち家族は帰国しました。長男は5歳、次男は4歳、三男は3歳 でした。三男の発達が順調でないことには気付いていましたが、すでに帰国する予定があったので,三男については日本に帰ってから対処しようという話し合いを夫婦でしていました。

1. 日本における三男の処遇
帰国してから三男は、1988年秋のホームリーブで帰国した時に次男が診察を受けた、児童精神科の医師の診断を受けました。三男も自閉症の障害があるのではということになりました。その病院にデイケアがあったので次男も三男もその待機児リストに加わりました。取りあえず次男は保育園に入園することができ、デイケアには翌年の4月から通えることになりました。

しかし,三男にとって、親が納得できる療育機関がありませんでした。親としては、総合的なアセスメントに基づいたプログラムではないこと,自閉症に対しての専門性が乏しかったことに納得ができませんでした。また、就学前の三人の息子を抱えての母親の付き添いが必要な通所は,物理的に無理でした。適当と思われる療育機関に通所できるまで、1年半待ちました。この間,家で母親と二人で過しました。療育機関に定期的に通えるようになるまでは、専門家による親の指導やアドバイスがないため、本人への適切な働きかけができず,また本人の状態を良く理解することが難しく、親として大変不安な状態でした。

2.米国と日本の違い
次男と三男の、障害の告知から療育や教育を受けるまでの日本と米国の違いには次のことがあげられます。

まず,日本では、子どもがアセスメントを受ける手はずを整えたり、子どもに必要な療育や教育の場を親とともに捜してくれたりする相談機関や相談相手がいないことが挙げられます。あったとしても、就学前と就学後で行政の管轄が変わってしまい、幼児期の重要な発達段階での継続性が途切れてしまいます。

次に、子どもの総合的なアセスメントを実施する機関がありません。日本では子どもの障害の診断を受けるために、色々な医療機関を訪ねなくてはなりません。知的障害を専門とする言語療法士、理学療法士、作業療法士が日本では非常に少ない現状です。それらの専門家による適切な子どもへの働きかけが十分でないため、子どもの総合的な発達が保障されないことは大変残念なことです。米国で次男が経験したようなアセスメントがあれば、多くの人が,より効率的に子どもへのサービスを行えると思います。

また米国では、親が文書開示を承認すれば、病院や言語療法のクリニックなどがカルテを教育委員会やShriver Centerに開示することができました。このことにより,子どもについての専門家同士の効率的な情報のやりとりができました。日本のように,何度も何度も同じ話を親が繰り返しする必要はありませんでした。

米国における,教育委員会との連絡役・相談役のコーディネーター、子どもの状態を把握するための総合的なアセスメントを行う専門機関、個別教育計画は、当時の混乱している家族にとり大変な助けとなりました。これらのサービスがない日本では、次男と三男のための医療的なサービス、教育的なサービス、福祉的なサービスを捜し、また,家族の生活を組み立てるために、現在でも親は大変な労力と努力を要求されています。

3.サービスを選ぶプロセス
私は、息子たちのためにサービスを選ぶにあたって、今までの経験にもとづき次のようなステップを踏んでいます。

(1)本人の障害と発達段階を理解し、興味、強さを知る。
何よりも大切なことは、息子たちを知ることです。息子たちの障害、発達段階、興味、強さの正しい理解がなくては、適切な教育の場やサービスなどを選択できません。発達障害といわれるように、息子たちは彼らなりに発達しています。本人たちのニーズにあった働きかけが,適切であればあるほど生活の幅が広がり、様々なことができるようになります。そのような働きかけをするには、彼らの生活の様々な場面で関わる専門家の知識と情報が必要となります。医師や臨床心理士による定期的なアセスメントは、必要不可欠と思われます。

(2)家族全体のバランスを考慮に入れ、本人に必要なサービスを考える。
まず、本人の状態を理解してから目標をたてます。目標に向けて、息子たちとの家庭での生活や学校での生活を計画します。これらの作業は、親だけでできる作業ではありません。息子たちと長い期間関わりのある、専門家の方々に相談しています。

また、家族のライフステージにより、障害のある子どもに重点的に家族の資源を集中できる時期とそうでない時期があります。サービスの選択が子どもを含めて家族全員にとって最善でなくてはなりません。

(3)実際の選択肢からサービスを選ぶ。
実際のサービスの選択肢は少なく、サービスについての情報は親が積極的に動かないと集められません。現実に欲しいサービスがなく家族で考え工夫し解決することも多くあります。

4.サービスを選べない現状とサービスが選びにくい現状
経験上,息子たちを育てるにあたって、サービスを選べない現状と選びにくい現状があることに気付かされます。まず,選べない理由としては、選択肢の中に必要とするサービスがないことがあげられます。たとえば、兄弟の幼稚園や学校への送迎が重なった場合、母親しか家族の中で送迎ができなければ、送迎サービスが必要です。しかし、柔軟性があり、またサービス料金が手ごろなサービスはありません。

次に選びにくい理由としては、本人にとり適切な指導やケア内容のサービスの選択肢が少ないことがあげられます。自閉症の息子たちはコミュニケーションの障害がありますので、特に耳鼻科、整形外科、形成外科などで治療が必要な場合に、医師が自閉症の障害ついての知識があると、診察や治療が受け易いです。しかし、障害のある子どもの診察や治療に慣れている医師や、専門の病院が少ないのが現状です。

加えて,適切なサービスがあるにもかかわらず,サービス全般についての情報が入手しにくいため、選びにくくなってしまう状況も問題です。療育機関や余暇活動プログラムについての情報が、効率的で客観的に提供されていたならば、息子たちがより充実した生活を送れたのにと思うこと多くあります。

5. コーディネータ役を果たす母親
親が障害をもつ子どもの状態を把握して、彼らの発達を保障し,そして家族に必要なサービスを考え選択する作業は、とても重要だと思います。このようなプロセスを踏んでサービスを選択できれば、家族として前向きに生活を送ることができます。しかし、このような作業を親だけでするのは難しいことです。コーディネータのような役割を果たす人、あるいは専門機関が必要だと思います。

コーディネータあるいは専門機関が、地域の情報や動向を把握し、それらの情報を親に説明できなくてはなりません。そして、そのようなコーディネータあるいは専門機関には、親、医療、教育、福祉関係者を同じテーブルにつかせ、障害のある子どものケアについて話し合いの場を提供することが求められます。そのような場では,コーディネータが継続的に本人にかかわり、本人と家族のニーズについて正しく把握し、関係機関に説明する役割を果たすことが要求されると思います。

我が家では、母親である私自身がこのようなコーディネータ役をしています。障害がある子どもと生活しながら、コーディネータ役を果たして、息子たちの将来を考えながらサービスを決定することには大変な労力が求められます。私がこのようなことができるのは、長期にわたり子どもに関わって下さっている、医師、臨床心理士や教育関係者と定期的に相談できるからなのです。

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『自閉症の息子たちのためにサービスを選ぶ』 その2 最初に受けたサービス –米国でのサービス–

I.誰のためにサービスがあるのか –家族のごく普通の地域での生活のために–
II.最初に受けたサービス –米国でのサービス–
III.帰国後のサービスの現状 –米国での経験を生かして–
IV.サービスを自ら選択する時代 –親が必要とすること–
V.親がより良い選択を行うために –今後の課題–
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Ⅱ.最初に受けたサービス –米国でのサービス–

次男に自閉症の障害があると初めて分かったのは米国で生活していた時でした。1年間ほど、米国ボストンで特殊教育のサービスを受ける機会がありました。その後、1988年に日本に帰国して以来、米国での経験を踏まえながら、我が家にとり必要なサービスを考え選択しています。この15年前のアメリカでの経験は、帰国後の息子たちとの生活を組み立てる上で貴重な指針となっています。

1. 小児科医の定期診断から
家族で加入していた健康保険(HCHP: Harvard Community Health Plan)は、ボストン市内の何ケ所かにクリニックをもっていました。保険に加入すると、家の近くにあるクリニックに登録します。家族全員の定期的な健康診断がありました。次男は1歳半で渡米しましたが、2歳近くになっても言葉がなく、耳が聞こえていないのではと思うことや、対人関係についても少し他の子どもたちとは違うように感じることがありました。ただ、長男も言葉が遅かったこともあり、環境の変化もあったので小児科の先生とも相談して様子を見ていました。

2歳の定期検診の時、小児科医の勧めにより、聴覚検査と精神科医の診察を受けました。クリニックには専門医がいるので、簡単に検査や診察の予約がとれました。また、バイリンガルの問題も考えられるため,言語療法士によるアセスメントを受けることにしました。

このような検査や診察の結果、二男には特別なニーズがある可能性が明らかになり、ベルモント町の教育委員会に連絡するよう言われました。公費で正式なアセスメントと,それに基づく教育を3歳になったら受けられるとのことでした。

2. ベルモント町教育委員会のコーディネータ
教育委員会に連絡すると、教育委員会の言語療法士の資格をもったMs. E. が二男の担当のコーディネータになりました。彼女は親へのインタビュ、アセスメントについての手続き、学校についての情報収集係、相談相手になってくれました。彼女は、面接のたびにお互いにどのような話しをしたかについて簡単なメモを作成して、帰る時に渡してくれました。この彼女とのやり取りの経験は、その後、三男の障害を理解して適切な療育や教育の場を捜し、選択する方法を考えるにあたって大変参考になりました。

3. 3歳児のスクリーニング
二男は,Ms. E. との話し合いで、3歳児のスクリーニングを受けることになりました。そのスクリーニングは,ベルモント町在住すべての3歳児が対象で、親へのインタビューと子どもの観察がありました。その結果、正式なアセスメントを受けることになりました。

この結果、ボストン郊外にある知的障がいの研究教育センターとして知られるShriver Center でのアセスメントの結果を待ってから学校を決めたのでは、夏休み期間中に通う学校を決定することが事務手続きの上で間に合わないことがわかりました。ベルモント町の教育委員会は、HCHPのクリニックでの診断と言語療法士の診断と息子を何回か観察した結果、息子に学習する態度を学ばせる必要がある(He has to learn to learn.)という結論に達しました。息子の問題は何かと聞くと、教育委員会としては,見当はつくが、まだ正式なアセスメントが終わっていないので、息子の障害について何かコメントすることは公平でないと説明されました。

このようなアセスメントの結果、二男の教育の場として5、6件ほどの早期療育機関を紹介されました。教育委員会は,予算、通い易さなどからその中の一つを最終的に推薦しました。Ms. E.と見学にも行きました。話し合いの上で、Behavioral Intervention Projectというプログラムに通う事になりました。

4. Shriver Center でのアセスメント
Shriver Centerでのアセスメントの内容は、精神科医、臨床心理士、言語療法士、理学療法士、作業療法士による保護者への面接と本人の観察・テストでした。ソーシャルワーカーと看護婦は、自宅を訪れ面接を行いました。

最終的に全員の報告書が出揃うと会議が開かれました。まず、保護者に対して、精神科医、心理士、言語療法士、理学療法士、作業療法士、ソーシャルワーカー、看護婦各々の報告の後に、チームとしての総合的な診断の説明がありました。親の質問には、時間をかけて回答がなされ、保護者が質問しやすいようにと気を使っているのがわかりました。

親との話し合いが終わると、Ms. E. が呼ばれて、これから息子にどのような教育が必要なのかが説明されました。学習する態度を身につけるために、Behavioral Intervention Project のプログラムが教育の場として妥当との考えが示されました。

私たちは、このアセスメントを通して、息子の状態が良く理解できました。また、各々の分野の専門家との面接や、息子のテストに立ち会うことにより、子どもの発達に様々な側面があることを知りました。特に、自閉症障害の発達のアンバランスを理解する上で貴重な経験でした。

5. Behavioral Intervention Projectについて
このプログラムは、4歳から22歳までの、中度から重度の発達障害や行動障害のある児童・生徒を対象としていました。基本的な生活習慣の確立、学習、職業訓練(学校、地域での職場、下請けの仕事)を目的としてプログラムを行っていました。授業は公立の学校の教室で行なわれていました。学校への送迎は、居住している町の教育委員会の責任でした。家の玄関から学校までスクールバスで息子の送迎をしてくれました。

学校での観察が終わり、Shriver Center でのアセスメントが終わると,個別教育計画が作成され、それを親が承認する会議がMs. E.をも含めて行なわれました。個別教育計画では、知的な能力が高いとか低いとか、何ができて何ができないかは問題とされませんでした。子どもがどのような発達段階にあるのか、どのようなことをどのように教えることが必要で効果的であるかが、教師と親との間で話されました。本人がどのようなことができるようになれば、より彼の生活が充実したものになるかを考えながら作成されました。

個別教育計画の関係書類に署名した後に、担任は「私たちは親と各々の立場で、彼のために協力しあい連携するのです。なにかあったらすぐ気軽に声をかけるか、ノートに書いて下さい」と、言ってくれました。家で困っていることを聞かれたり、本人が興味をもっていることも担任の教師から聞かれました。これは、家族が家族として、障害のある子どもが積極的に家族の中で生活するためには、何が問題なのか、子どもがどのようなことができればよいのか、家族として何をさせてあげられるかを考えるきっかけとなりました。

主に、先生との連絡はお便り帳を通してですが、お互いに家や学校での様子などを書いたり、子どもができる課題について学校と家庭で協力できることを率直に書いたりしました。学年末には、1年間の子どもの変化について記録をもとに比較し、お互いに息子の発達を喜びあいました。

6. 米国での経験から
息子についてMs. E. やBehavioral Intervention Project のプログラムの教師と話す時は必ず、息子が今何を一番必要としているかを一緒に考えよう、保護者として何が一番困ったことなのかという問い掛けがありました。このようなやり取りにより、息子のニーズや家族のニーズについて考えたり、まとめたりすることができました。また、個別教育計画のおかげで家で取り組む目標が明らかになり、本人の発達にあった課題や躾けをすることができました。異国とはいえ、前向きな生活を送ることができました。
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『自閉症の息子たちのためにサービスを選ぶ』 その1 誰のためにサービスがあるのか

都内にお住まいのM.N.氏から、次のタイトルの手記を掲載させていただく許諾をいただきました。保護者の高齢化を考え、家族の支援から地域での支援への移行を望み、活動する姿が綴られています。日本の教育や福祉の現場にサービスの充実を強く期待しておられます。以下、五つの話題を順に取り上げます。

I.誰のためにサービスがあるのか –家族のごく普通の地域での生活のために–
II.最初に受けたサービス –米国でのサービス–
III.帰国後のサービスの現状 –米国での経験を生かして–
IV.サービスを自ら選択する時代 –親が必要とすること–
V.親がより良い選択を行うために –今後の課題–

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I.誰のためにサービスがあるのか –家族のごく普通の地域での生活のために–

1.   家族にとってのサービス
我が家には、大学一年生、都立養護学校高等部2年生、国立大学附属養護学校高等部1年生の三人の息子がいます。次男、三男は知的な遅れをともなう自閉症です。兄弟でも障害の内容は非常に異なり、各々の生活上のニーズは決して同じではありません。教育的なニーズが違うために、息子たちは別々の学校に通学しています。次男は、言語による理解が多少できるので、大きい集団での行動が可能です。一方、三男は表出言語が全くなく、言語による理解は限られた場面でしかできないので、小さい集団のほうが本人にとって適応しやすいのです。このような障害特性の違いを考えると、高等部卒業後の進路についても違った形の就労形態が予想されます。

加えて,地域で生活する上での支援の在り方も、次男と三男とでは同じ形をとることはないと思います。例えば、三男は、安全面から外出時には必ず付き添いが必要です。今後、ガイドヘルパーのサービスを積極的利用できればと思います。次男は早い時期にグループホームなどでの生活を始められたらと考えています。

しかし、身辺自立がまだ不完全な三男はそのための準備として、ショートステーなどのサービスを利用して、将来の家からの自立に向けた準備をしなくてはなりません。このように、発達障害のある子どもとその家族が医療・教育・福祉のサービスを必要とするのは、子どもの障害とケアの方法を理解し、彼らの発達を保障し、家族としてごく当たり前の地域生活を送るためなのです。

2. 医療の場、教育の場、福祉の場でのサービス
親が子どもに発達障害があると分かった時から、医療の場、教育の場、福祉の場で様々な専門家と出会い,子どもと家族が必要とするサービスを選択し、受けています。まず、医療の場をあげてみましょう。子どもの発達が普通とは違うと感じた時、やはり最初に相談するのは小児科の医師です。しかし、自閉症の障害の診断は,水疱瘡の診断のように簡単ではありません。最初から、その障害について詳しい医師に巡り合えればよいのですが、現実にはそうではありません。今でも息子たちは自閉症を専門とする精神科の医師と臨床心理士の定期診断を受けています。やはり、息子たちの身体的そして精神的な発達を把握しておくことはとても大切ですし、親としても安心できます。

次に教育の場を考えてみましょう。コミュニケーションに障害がある息子たちは、言語を中心とした集団での学習が困難です。彼らの発達にあった働きかけが可能な教育の場を捜すことは難しい課題です。小学校、中学校、高校を選択する時は大変悩みましたが,息子たちがお世話になっている学校関係者と医療関係者の意見を参考にしながら、息子たちにとり適切な教育の場を捜しました。

福祉の場でのサービスでは、公的なホームヘルプなどのサービスがありますが、最初はどのような種類のサービスがあり、どのようにしたら受けられるのかについて理解することは難しいものでした。また、自閉症という障害の特徴から第三者に預けにくい面があり、現実にはなかなか適切なサービスがないのが現状です。

このように、残念ながら医療・教育・福祉のサービスはまだ縦割りになっている場合が多く、サービスを受ける当事者としては、非常に不都合な面があります。障害のある子どもとその家族の生活をトータルに支える必要性と、各々の分野のサービス内容が重なり合うことを考えたならば、この三分野でのより良い連携が求められています。
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IEPはどうなっているか その15 Santa Clara市学校区の教育心理的サービスに関する報告書 その2 生徒の移行サービス計画

アメリカ個別障害者法(IDEA)によれば、障がい児教育における保護者の権利は、子どもが成人に達したときには、子どもに移るということが規定されている。カリフォルニア州では18歳に達した生徒は成人として認められる。同時に選挙権が与えられる。喫煙は許されるが、飲酒は21歳以上となっている。

生徒がIEPカンファレンスで移行計画の有資格者であると認められ、インフォームドコンセントが必要とあれば、全ての保護者の権利が生徒に適用される。これには、留意すべきこととか同カンファレンスへの参加、インフォームドコンセントと手続上での保護者の同意を含んでいる。以下、生徒の移行サービスのその2である。

1.通常のカリキュラムでの支援と標準テストの提供
通常カリキュラムでの支援であるが、生徒の通常カリキュラム内における活動を増やしてほしいという要求に関する修正案を明細に記述する。ここでは、プログラムの修正、職員、設備による支援、計画案やサービスの修正を行う。こうした配慮すべき修正案は、生徒の読み障がいや計算障がいに直接関連しているので、そうした指導では通常のカリキュラムベースで行われる。

以下は、修正の際に配慮される例である。
・Jamesは、リソースルームにおいてテストを行う。
・Carolは、計算機を使って計算をする。
・テスト問題に答える際、口頭で答えることが許される。
・Annは、指導中、聴覚訓練士の支援を得て、指導を受ける。
・ 口頭によって直接解釈することを許される。
・注意を集中させるために席を選択する。
・テストや課題に関する時間の延長
・生徒は点字によって応答することができる。
・コミュニケーションシステムは、口頭による参加の場で用いられる。
・ 小グループによる指導を提供する。
・場面における行動管理システムを提供する
・カリキュラムは認知レベルに応じて適用される。

○家庭生活場面における教育:
生徒が家庭生活において指導を受ける場面についてチェックすること。さらに生徒によっては、通常教育と障がい児教育の両方の指導を受けることもある。

○学業に関するスタンフォードビネー知能検査など:
a 生徒の学年レベルを検査する上で実施すべきテストを決定する。
b 生徒が検査に参加するのか、あるいはアセスメントを免除されるかどうかを記述する。もし生徒が免除されるならばその理由を記載する。
c 必要とされる配慮が一般的なものであるかどうかの情報を活用すること。
例:「生徒はその学年レベルのテストに加えて、幾つかの郡が指定するテストを受けること」
もし、生徒がいくつかの郡のテストを免除されるのであれば、その理由も記載する。

2.卒業移行IEPの作成
IEPに関するこの様式40-25aは、1998年に卒業する全障がい児のためにまとめられたものである。IEPでは、それまで生徒に提供されてきた移行サービスを要約している。場合によっては、さらに生徒が必要としている目標とサービスについて計画することが要求される。職業リソースに関する教師は、今後必要とするサービスを決定するために有益な情報を提供することとする。

様式40-05を活用し、IEPカンファレンス について保護者と生徒に通知する。もし、生徒がカンファレンスに出席しないならば、事前に生徒の情報を入手しなければならない。生徒の卒業移行に関係する親権代理人にもまた、カンファレンスに出席するよう勧告しなければならない。カンファレンスでは次のことを確認する。

○ 確認したものを文書化すると同時に、他の関連する教育情報についてもまとめること。
○ あらかじめ実施されてきたIEPを活用し、生徒の移行サービスと親権代理人の参加について記述すること。
○ 教育、職業、社会生活領域の目標を示すこと。
○ 計画した移行サービスの計画について要約すること。
○ もし、その生徒と保護者がサービスを受け続けることを望まないのであれば報告書にチェックすること。
○ IEPカンファレンスに出席する参加者は、その様式にサインすること。
○ 全ての参加者に文書で通知すること。

【筆者のコメント】
非常に細かい規定が、生徒の職業教育への移行に際して担当する行政に課せられていることがわかる。こうした文書は、保護者と生徒の権利を擁護するものとなる。保護者は、どのようなサービスを求めることができるかが規定によってわかる。それにより子どもの将来に向け、就労に向けて展望を持つことができる。

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IEPはどうなっているか その14 Santa Clara市学校区の教育心理的サービスに関する報告書 その1 生徒の移行サービス計画

個別の指導計画(IEP)の第2段階が就労に備えた移行サービス計画(以下移行計画と略す)である。「教育目標」、「就職目標」、「大人としての生活目標」が記述される移行計画は、Santa Claraでは16歳あるいはそれ以上の生徒のために作成される。

もし、生徒のために移行計画を作るのであれば、様式40-05を活用する。それによれば対象となる生徒をIEPカンファレンスに参加させなければならない。教師は、生徒に移行計画の内容を説明し、カンファレンスに参加することが大事であることを説明する。この注意事項は、様式40-15に記述されている。

教師は、実際のIEPカンファレンス前に生徒に会い一緒に移行計画の素案を作る。もし生徒がカンファレンスに参加できないのであれば、考慮事項として彼らの興味、関心などをカンファレンスで報告しなければならない。

前述のとおり移行計画には、教育、就職、成人生活の領域に関しての目標が含まれる。移行計画には、生徒に提供されるサービスについて略述し、サービスへの参加と生徒の役割について明記することになっている。

「教育目標」という項目では、生徒が受ける教育コースについて確認することが求められる。例えば、生徒は、事前に決められたコースに参加することになる可能性があることも伝えられる。「就職目標」では、職業教育プログラム、コミュニティを拠点とした指導プログラムとか職業スキルプログラムなどを選べることを示唆できる。

もし、移行サービスが学校主導で提供され、他のサービスと調整されるのであれば、移行計画の短期目標、サービスの中身が十分に考慮される。もし、移行サービスが提供や調節がなされないのであれば、その理由を明らかにしなければならない。

サービスを提供しない場合の理由としては、以下のことが考えられる。
・通常教育での指導を受けられる
・終日アカデミックなスケジュールが組まれている
・自主的に活動を行うことができる生徒である
・後日提供する予定である

移行計画では目標への達成のために、関連機関で支援する者の活動をまとめる。例えば次のように記述することができる。

・ソーシアルサービスに関する部局では、コンピュータを活用した指導を提供する
・リハビリテーションサービスに関する部局では、職業的スキル評価の結果を提供する
・コミュニティサービス部局では、グループホームを探す支援をする

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IEPはどうなっているか その13 Santa Clara市学校区の教育心理的サービスに関する報告書  その5 登下校の行動に関するIEP

登校や下校の方法を学ぶことは、どの子どもにとっても大事なことだ。スクールバスの乗降の仕方にもさまざまなスキルが要求される。しかし、その方法を習得することが困難な生徒も多い。簡潔な指示や分かりやすい題材を用意し、課題が難しい場合はお助けヒントのプロンプトをだし、子どもが反応できたら、直後に子どもの好きな物や活動、褒め言葉をだすなどが指導の基本となる。以下に紹介する記録は、通学バスの利用の仕方である。これも応用行動分析(Applied Behavior Analysis: ABA)の技法である。

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計画承認日:1995年1月19日
生徒氏名:A. B.
年令:16才
生年月日:1978年
教師:A. S.
実施学校:Santa Clara高校

1. 標的行動についての記述
標的となる行動とは、Aがシートベルトを開放して外す、座席から離れる、席を替わる、他の生徒を殴打する、または奇声をあげることである。

2. 介入適用の理由
Aがバスに乗車中、一定場所でシートベルトを着用した状態は、彼女の安全の観点から必要だからである。

3. 安全な抑制が用いられること
段階的な安全抑制を含む以下の手順が含まれる。

・前触れとしての状況:
自分の席に誰か座っている。命令的な仕方で指示される時。病気の時。

・強化子:
褒めることや注意を与えること、雑誌(Avon, ads, coupons)等、食べ物、図版カード、学校での好きな活動、たとえばパソコン、化粧や爪の手入れに熱中すること、地域への外出、家庭でテレビの時間、リュックサックのおもちゃ、お菓子の包みなどを強化子とする。

・介入指導:
Aの学校への行き帰りでのバス乗車に関する家庭・学校、通学途上における一貫した介入指導を行う。

1. 保護者は、バスの乗車前のAに対して、とるべきいつもの手順や行動について思いおこさせる。さらに保護者は、Aに対して、彼女がバスの中でふさわしい安全に必要な行動がとれれば、帰宅してからテレビを見ることができることも言葉で想起させる。

2. 保護者、学校職員、そしてバス運転士は、Aに穏やかな言葉で安全乗車が必要であることを指示し、指示や適切な結果や褒美がもらえることを気付かせる。
a. 職員は、Aにとってバスでの登校が、安全で適切に行われるための援助者であることを強調する。さらに、褒美としてはクラスの活動で特に好きなこと、朝食、絵カードなどを想起させる。

3. 運転士は、Aをバスに迎えると適切な行動をとれると褒美が与えられることや、自分がAの援助者であることを彼女に思い起こさせる。このような声かけをすることは、教育委員会が定めている。

4. 適切なおもちゃや書籍は、彼女の背負い袋に入れておく。

5. Aには、バスの後方に自分の席を割り当てられて、監督を受ける。

6. もし、Aが座席の留め金を外したり座席を変わろうとしたら、運転士は言葉でAに注意する。例えば、普通の語調で、「自分の席に座って、座席のベルトを締めなさい」などといった具合である。

7. 「いつ/そのとき」という関係や状況を明確に指示する。例えば、「シートベルトをして座っていたらラジオが聞けるよ」といった声かけである。

8. もし行動が安定しそれが持続した場合、彼女に対してバスのステッカーが貰えることを思い出させる。

9. もしふさわしい行動が継続、ないし持続しない場合、「〜しなさい。そうでなければ、あなたのおもちゃ/本を取り上げますよ」とAに注意を促す。

10. もし、ふさわしくない行動が継続し、拡大するような場合は、Aや他の生徒に危険を及ぼすような場合は、運転士は道路の安全を見計らって車を停車させる。
a. 運転士は、Aがおもちゃや本を手放すように指示し、取り上げる。次のバス停でそれを返してもらえることも伝える。

11. もし、ふさわしくない行動が継続し、拡大するような場合は、運転士は次の段階の安全かつ適切な選択肢のために責任者と協議する。

12. ふさわしくない行動が継続する場合は、通学責任者はただちに校長と協議する。

校区が広いアメリカ。黄色いスクールバスはどの街でも走っている。どのバスも年期が入っているが極めて頑丈につくられている。民間業者によって運営されている。

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IEPはどうなっているか その12 行動介入IEP その4

問題とされる生徒の行動への対処は、多くの場合、特別支援教育の基本とされる手法が使われる。応用行動分析、Applied Behavior Analysis: ABAである。生徒ができる適切な行動を増やしていくことで、相対的に不適切な行動を減らしていくという方法を採用する。生徒を取り巻く環境に解決の糸口を求めることで、行動の改善を図ろうとする視点で、生徒の行動に介入する。以下の記録は、そのことを詳しく伝えているので参考になる。

生徒氏名:A. B.
年令:16才
生年月日:1978年
教師:A.S
実施学校:Santa Clara高校

行動分析に関する評価についての要約
Aは、課題から別な課題に移る間や、自分が欲しない課題をすることを要求されたときに、欲求不満を表わす。彼女は、通常、哀れっぽく泣いたり、奇声を発することによって自分の欲求不満を表現する。時々、Aは、備品とか身の回りの物をたたき、椅子を投げるというように非常に興奮した状態になることもある。彼女はまた、たまたま彼女のそばにいる仲間への攻撃とか、課題をするように指示するスタッフへの攻撃を向ける。スタッフへの殴り、のどへの攻撃、服のひっつかみ、咬みつきなどの局面では、非常に興奮した状態になる。

先行な動作、結果、標的行動に関する詳細なsベースライン・データなどのついては、付随する評価報告に記述されている。

I. 行動の類型
A. 標的行動について
○哀訴や反抗への介入
身体的抵抗:
クラスまたは、地域社会から逃げだしたり、テーブルの下をはいまわったり、視線を合わせることを避ける行為のことである。
破壊:
身近にあるもの、テーブル、コンピュータ、いす、ロッカー、窓をたたいたりすることである。
攻撃:
クラスメイトに対して:たたいたり押したりすることである。
スタッフに対して:
叩く、押す、蹴る、のどをつかむ、あるいは咬みつくことである。

B. 選択/代替行動について
哀訴や奇声:正常な声をだす。
身体的抵抗:二つの領域から活動を選択させる。
破壊:席につけ、水を飲ませる。
攻撃:スタッフから離したり、寝かせたり水を飲ませる。

C. 目標と目的:適切な目標に関するIEPリストからの記録
職業訓練目標:絵で描かれた日課
職業訓練目標:集団活動
地域社会目標:ニーズを表現するための携帯用コミュニケーションブックの使用
社会的/情緒的目標:通常学級への出席
学習目標:与えられた課題への取組み

II. 行動介入
A. あらゆる生活環境における介入の場
□学校  □家庭  □地域社会  □仕事 □その他

B. 予防
1. 生活様式の高揚:(望ましい変化の一覧表)
・健常な仲間との統合を拡げる。
・グループ活動への参加を拡げる。
・身体運動活動への参加を拡げる。
・学校計画における絵を使った日課表による行動予測を拡げる。
・課題達成見込みについて予測を拡げる。

2.行動の代替(教示または、行動の代替についてのステップの一覧表)
哀訴:正常な声を出すよう指示したり、意図的に行動を無視していることをAに気付かせる。
奇声:Aに緊張をほぐす姿勢である“タートルポジション(床にうつ向け)“を教え、または別の指示を選択をさせたり、褒美をとりあげる。
破壊:寝かせて“タートルポジションをとりなさい“と指示する。
攻撃:寝かせて、危害を加えるような行動を抑えるために“タートルポジションをとりなさい“と指示する。

3.積極的処置(先行動作、結果または、教育計画における計画変更の一覧表)
・積極的強化:望ましい行動に賞を与える。
・強化:望ましい代替行動をするとき、ポジティブな強化を与える。
・他の行動についての異なる強化:望ましくない行動が起こった後は、一定時間は強化を与えない。
・自然な強化についての認識:活動または、行動についての自然に起こった結果である強化子を使用する。つまり調理活動をしたあとは、食べ物を食べることを褒美とする。
・漸次接近行動:標的行動に徐々に近ずくような行動については、僅かでも見られる積極的な変化を強化する。

4. 変容の設定(誘因、環境、活動、カリキュラム、教育方略、予測等についての 修正の一覧表)
・Aは、教師の近くで作業をするようにする。
・個別の日常スケジュール、計画の変更などは早めに知らせ、Aが適切な選択ができるように配慮する。
・Aに対して、日常の課題が作られそれが説明される。
・ルールや課題を説明する。
・自分が好きでないこと指示されたとき、課題を終えたときに与えられる褒美に随伴して、別の行動が与えられる。
・不適切な行動は無視され、適切な行動や活動には強化が与えられる。
・適切な行動を助長するために、まわりの仲間を強化するとともに不適切な行動を無視する。
・不適切な行動の代わり、適切な行動について指導したり別な指導を行う。
・教示の代わりや娯楽行動:正しく発声するよう指示したり、タートルポジションをとらせる。
・自分のニーズを適切に伝えれるように、機能的コミュニケーションシステムを用意する。

C. 標的行動に関する反応
最も少ない制約から最も多い制約を伴う介入の経過についての計画を列挙し、そのステップを含む。
・哀訴:正しくしゃべることや望ましくない行為に対しては、意図的に無視されることを気付かせる。
・奇声:正しくしゃべるよう、言葉で注意を促す。
・強化子を徐々に減らすようにする。
・適切な行動について彼女に気付かせる。すなわち、「Aさん、わかりますね。これが欲しければ普通のいいかたで言ってね。」とか、「こっちを向いて。両手を出さなくても誰もそれをとったりしませんよ。」などによって、褒美が減るのではないかという恐れを抱かせないように配慮する。
・日課や自分のすべきことに気付かせるようにする。
・褒美が得られることに気付かせる。この場合は、日課を描いたカードで選択させたりする。
・褒美があったり、なかったりする活動を選択させる。この場合も、活動を描いたカードを選択させる。
破壊:
・「タートル・ポジション」をとることをAに口頭で告げ、もし、彼女がその指示に従わないならば次のステップを考える。
・彼女が、いすに腰かける準備ができているかどうか彼女に尋ねる。もし、Yesならば、次のステップを考え、もし、Noならば床に1分間腰をおろし、それからもう一度尋ねる。
・椅子に1〜3分座らせ、それができたら即時に水を与え、1分後に好きな雑誌を与える。
・散歩をさせる。
・活動に復帰させる。
・攻撃:
・「タートル・ポジション」をとるようにAに口頭で告げ、もし、その指示に従わないならば次のステップを考える。
・床に横になることを命じ、平静にさせる。(1分間)
・彼女がいすに腰かける準備ができているかどうかを尋ねる。もしYesならば、次のステップを考える。もしNoならば、1分間、床に腰をおろし、その後もう一度尋ねる。
・椅子に1ー3分座らせ、それができたら即時に水を与え、1分後に雑誌を与える。
・散歩をさせる。
・活動に復帰させる。

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IEPはどうなっているか その11 Santa Clara市学校区の教育心理的サービスに関する報告書 その3

Santa Clara市を訪問したとき、頂戴したIEP関連の書類に入っていた一生徒の記録である。このような書類を外部の者にくれるというのが興味あるところである。個人が特定されなければよいという考えがある。他の人にも役立ててもらおうという精神がある。以下にこの記録を紹介する。

【コミュニケーション】
1. 受容
Aは、SICDで受容言語年令が3才8か月の範囲にある。彼女は、48か月レベルにおいてもいくつかの正反応を示した。他者から言われることを真剣に聞こうとし、あるいは注意をそらさないでいれば、それを理解できる。彼女はうまく話し言葉をとらえて、1〜2つの指示を理解し、それに従うことができる。ただ複数の指示や3つの行動を含んだ指示に従うことは困難である。

2. 表出
Aの言語年令は、4才レベルまで正反応を示し、36か月の発達の範囲にある。彼女はしばしば誤って発音し、ほとんどの場合、正しい発音にならない。しかしながら、いくつかの音を正しい言葉により近いものにできる。3つの数と3つの単語の復唱ができるが、それ以上は困難である。何かをするに高い動機づけがある場合、よく知っている状況や自分の好きなことであれば5〜6語文を使うことができる。ものの機能を尋ねる質問、例えば、どんな本?とか、what、when、whoを含んだほとんどの質問に答えられる。難しいのは、複数形の使用、if-whatの質問への答え、’how many’を理解することなどである。

Aは、時々非常に早口で、甲高く、いななくような声で話しする。ゆっくりと話すことを求められれば、わかりやすく話しができる。だが相手に十分理解しやすいように話すよう求められるのは、非常に高いフラストレーションとなる。機嫌が良い場合には、上手に話し、まわりのほとんどの人が彼女の言うことを理解できる。

3. 地域社会
Aは、いろいろな地域社会資源を積極的に活用している。彼女は、商店、モール、郵便局、図書館、公園、博物館、特別な催しなどいろいろな場所へ2〜3名の生徒と1名のスタッフメンバーの小グループとで行動できる。公共交通機関に乗り座席を選び、小冊子を読んだり、スタッフや級友と会話をしたりできる。自分が降りるべきバスの停留所を見つけその場所で降りられる。

彼女は、買い物が大好きである。浪費することはない。少しの助言で漫画とかテーマブック、飲み物、スナック菓子を選択し購入できる。図書館カードを持って月に2回は図書館を利用する。時々姉と一緒に映画館へも行く。授業の一環で、ある映画のプロダクションへ行ったこともある。

4. 教室での行動
教室にはA用の机があるが、机上が様々な活動で散乱していることが多い。彼女が興味のある活動を選択している場合、30分間は援助なしで活動できる。また、数唱、分類、ファイリングの課題訓練を強化を随伴されながら30分間は自分の机で課題をすることができる。機嫌が悪いときは、行動は低下しスタッフの援助を受けることが難しくなる。

【要約と提案】
Aは、認知機能が5才から6才程度の中度発達遅滞とてんかん性異常波のある17才の少女である。彼女の相対的に優れている点は、地域社会と余暇時間の活動に現われており、相対的に弱い点は、受容言語と表出言語である。ほとんどの領域において、前回の評価と同様のレベルを示しているが、彼女の日常行動と教室の成績は、過去3年間を上回る大幅な改善がみられた。

Aには、Santa Clara高校での現在のプログラムを継続し、地域社会や学校を基本にした環境で自助行為、地域社会、コミュニケーション、認知、運動スキルに焦点化した指導の強化を継続することを提案する。彼女は、現在の話し言葉/言語が、地域社会環境で適切となるようなスキルをめざし続けることも提案する。さらに、学校や交通機関の利用についての行動マネジメント計画がさらに更新されて、指導が継続されることも提案する。

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