アメリカの文化 その15 大学の雇用

かつて勤めていた関西のとある大学で、『これぞ日本の蛸壺』というような姿を目の当たりにしました。学長選びのことです。教職員には、どこどこの大学を出たかによる鉄の団結のような組織があります。派閥というかマフィアのような存在です。マフィアは学長選挙の時に動き出します。かつて学長は選挙権のある教授の投票によって決められました。選対事務所のような所から盛んに電話などで勧誘がきます。私は一匹狼。派閥には属していませんでした。党派党略から独立すべき教員集団にも関わらず、選挙になるとがぜん派閥が元気が出るのは不思議でした。

このような大学での鉄の団結は、教員採用の時にも威力を発揮します。選考委員会のメンバーの多くはこうした派閥が占めます。表向きは公募ですが、書類選考の段階から内定者がいるようなものです。学閥の人脈を使い、教職を探す後輩などに連絡してあるのです。ですから一匹狼は、よほど傑出する業績や経歴を有しないと採用されません。

アメリカでの教員になるための応募手続きです。はじめは、募集している大学に自分の研究業績のレジュメ(resume)を送ります。研究業績にはポスドクの経歴ももちろん大事な要素です。この書類審査によって3名くらいが最終候補に選ばれます。候補者は大学での人事選考の面接に招かれます。この時の旅費は招く側が負担するのです。ここが日本と違うところです。首尾良くポジッションを得たにしても、大抵は3年の雇用契約です。ここから終身雇用身分であるテニュア(tenure)への途が始まります。雇用契約が切れ更新がないとまた仕事探しを始めます。その間業績を増やす努力を続けるのはいうまでもありません。

アメリカの文化 その10 テニュア

アメリカの大学では、身分保障を得られれば定年はありません。建前上は死ぬまで働いてもよいのですが、研究費をとれるという条件です。これは終身身分保障によるもので、「テニュア」(tenure)、あるいは「テニュアトラック」(tenure-track) と呼ばれます。

大学教員になるには、学位は必須です。博士号を取得すると任期付きの講師(lecturer)、ポスドク(post doctor)研究員、そしてテニュアが期待される助教授(associate professor)のいずれかのポジションを取得することになります。大抵は3年の雇用契約です。ここから終身雇用身分であるテニュアへの途が始まります。雇用契約が切れ更新がないとまた仕事探しで、渡り鳥のように転々と教職を探すのです。テニュアというのは、優秀な研究者に与えられる身分保障制度のことで、これによって学問の自由が保障されると同時に、経済的に安定した生活も保障されるのです。

professors work hard to stay on track

どの大学でもテニュアになるための基準があります。テニュアの審査応募資格としてはテニュアのポジションに在籍していること、審査期間の5年間に優れた研究業績があること、しっかりした学生指導の実績があること、学部の教務に精励していること、助教授(assistant professor) の肩書きを持っていることなどです。テニュアをとろうとする助教授は、いくつかの学内委員会の審査を通過して、大学の理事会が承認するのです。このように研究活動、教育活動、教務活動の全てにおいて優れていることが要求されます。

研究活動においては査読付き学術論文を複数発表していることも要求されます。審査付学会報告などを複数持っていないとテニュアの取得は困難といえます。テニュアをとると海外などでのサバティカル(Sabbatical leave)という自由な研究活動が与えられます。欧米では広く普及している休暇制度です。テニュアを得た教授は、大抵は5年毎に休暇を貰えます。休暇の期間は半年か1年です。半年の場合は給与は半額が支給され、一年の場合は無給というのが一般的です。