留学の奨め その3 リベラルアーツと多様性

一体、なにを学びたいのかを考えることから大学選びが始まる。多くの読者は、ウィスコンシン大学(University of Wisconsin, Madison)とかUCLA(University of California, Los Angeles)とか、ミシガン大学(University of Michigan)、さらにはスタンフォード大学(Stanford University)などの名前を知っているだろう。こうした州立や私立の大学は超難関の研究中心の総合大学である。だが規模は小さくても将来役に立つことを学べる大学はいろいろとある。

「多様性」はアメリカの大学の特徴である。アメリカの大学はもともとはカレッジ(college)として創設された。例えば聖職者を養成し、町や村のリーダーを養成することを主たる目的として定めた。そのために教養を幅広く身につけ、決断力を養い、リーダーシップをとれる人間になる教育をするようになった。これをリベラルアーツ教育(Liberal Arts)といい、ここにリベラルアーツ・カレッジ(liberal arts college)が誕生する。1636年に創立した牧師養成の機関がハーバード大学(Harvard University)がそうである。ハーバードはアメリカ最初のカレッジといわれる。やがて新しい専門分野を加えていきながら、大学院レベルの研究に力を入れている総合大学として発展して世界で最も入学が難しいといわれる。

アメリカには州立、私立を含めて4,000以上の大学がある。その中心は小さなカレッジであることを知っているだろうか。カレッジとは単科大学のことだ。いわば4年制のリベラルアーツの大学である。少人数のコミュニティのゆえ、手厚い指導のもとで幅広い知識を習得できる。アートや音楽の専門大学や、歯科技工、機械、教師養成、軍の士官養成大学などもある。あえて大きな総合大学を選ばずこうしたカレッジで勉強し、総合大学の大学院へ進む者が多いのがアメリカのカレッジの特徴といえる。どうしても職業技術を身につけたい者には、コミュニティ・カレッジ(Community College)を選び最低限の教育や職業訓練を受けることができる。このようなカレッジは中小都市には必ずある。語学研修でコミュニティ・カレッジを選ぶのもよい考えである。

リベラルアーツ・カレッジなど多くのアメリカの大学は、「多様性」を重視している。できるだけバラエティの富んだ学生たちを入学させようという観点から入学審査を行う。たとえばエッセイ(小論文)でユニークなことを書いている、とか、推薦状の内容が秀でている、など、テストや高校の成績からだけではうかがえない資質を見いだそうとする。総合大学は別として、カレッジではテストや高校の成績が少しくらい低くても、エッセイや推薦状などで自己アピールすれば入学のチャンスを得られる可能性がある。リベラルアーツ・カレッジで有名ところは極めて授業料が高い。そのため高所得者の子弟が多い。ほとんどの卒業生は総合大学の大学院へ進む。

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