留学の奨め その5 図書館の利用

アメリカの大学の特徴はいろいろとある。その一つは図書館サービスの充実である。図書館の利用は留学生には力強い味方となる。多くのアメリカの大学図書館は学外者に対しても広く門戸を開放している。自分がウィスコンシン大学に行っても、理由を説明しパスポートを見せると入館証を発行してくれる。図書館の開館時間は大学によって異なる。閉館は21〜22時というところが多い。試験期間中は通常24時間開いている。

私立のボストン大学(Boston University)は市中心部にあるので、地下鉄などを利用して家賃の安いアパートから通学する学生が多い。そうしたこともあって、この大学の図書館は地下鉄の終電に合わせて午前2時閉館となっている。地下鉄沿線に住んでいる学生は2時近くまで安心して勉強できる。ボストンの郊外、ケンブリッジ(Cambridge)にあるハーバード大学は、徒歩圏内に大学寮や学生向けのアパートがあるので、そこにいる人は深夜でも安心して図書館を使うことができる。人文社会科学の図書館であるLamont Libraryは24時間開いている。

もし図書館が24時間開館というのであれば、利用者はいつでも帰れるというのが開館の大きな前提となる。日本の大学で24時間開館という例は京都大学の一部を除き、きいたことがない。恐らく京大近辺は徒歩圏内に学生寮やアパートがたくさんあって、夜中でも人通りがあるという恵まれた条件があるからではないだろうか。

アメリカにおける大学図書館の地域住民への開放を促す歴史は古い。税金で賄われている大学図書館がその門戸を開くのは当然だという観念がある。大学図書館の地域開放は善意や地域社会との良好な関係を築くためではなく、行わなければならない義務であるという主張が高まったのである。だが人口の増加により公共図書館は、地域住民に対するサービスが不十分になってきたこともある。高等教育への関心が高まり、新しい大学が次々に設立され、その教育をサポートするだけの十分な資料がなかったことなどから、大学図書館はその専門的な情報の保存と発信基地として地域に貢献してきたのである。

図書館の開放によって大学は地域社会と良好な関係を作り上げてきた。それに至るまで、長年にわたって大学図書館の地域開放の長所や課題が議論されてきた。そうした歴史を踏まえ、アメリカの大学図書館の多くは開放という姿勢をとり続けている。個々の大学の発展だけではなく、アメリカ全体の教育や研究水準の発展を志向するからだろうと考えられる。

screenshot_118  New York City Libraryscreenshot_119 George Peabody Library