懐かしのキネマ その25 【用心棒】

マカロニ・ウェスタン「荒野の用心棒」 (A Fistful of Dollars) の元祖が1961年に製作された【用心棒】です。監督の黒澤明は「映画の楽しさ、面白さを思い切り出したものにしたかった。それをただ一気に、面白ろがらせておしまいまで見せてしまう。その徹底的な楽しさだけを追求してゆく作品、それもまた映画なのだと思いました」と述懐しています。【用心棒】には、剣豪のハードボイルド的な浪人、桑畑三十郎を登場させています。侍には「武士に二言はない」といった倫理のようなものがあります。しかし、この映画は侍ずくめの行動を強調し、人情とか仁義など心理的な側面を深追いしません。

冒頭で犬が無邪気に手首をくわえて走り去ります。木枯らしに舞う落ち葉、舞台は宿場町です。かっこいいマリンバが響きます。二大勢力の縄張り争いに明け暮れ、すっかり荒れ果てた小さな宿場町。そこに流れてきたのが豪腕の三十郎です。三十郎は用心棒となりますが、嫌気をさして両派を煙に巻き同士討ちを企てます。

セットに大量の砂を撒き、軽飛行機のプロペラ1基を含む扇風機を総動員して風を起こし荒れ果てた姿を演出します。刀の斬殺音を取り入れ、10秒で10人を切ってしまう素早い立ち回りです。それまでの時代劇に象徴される歌舞伎的な立ち回りではなく、残酷な描写も取り入れリアルな殺陣を追求した作品です。撮影には望遠レンズを多用し、遠近法を駆使して、殺陣の迫力やスピードを効果的に見せています。三船俊郎と仲代達也が競演しています。