文化を考える その10 それぞれの家族史 その1 永住権

異文化体験については、さまざまなことが身の回りにある。成田家の歩みは、戦後の引き揚げを哀史を交えると史実になるような話題に満ちている。私小説が書けるくらいである。今それを真剣に考えている。

子ども3人はアメリカで育ち、教育を受け、仕事を得、家庭を持っている。長男が大学院時代、1990年8月湾岸戦争が起こった。その前月、選抜徴兵法が施行された。国民の男性と永住外国人の男性に連邦選抜徴兵登録庁への徴兵登録を義務化するものだった。彼は永住権を取得していたが、兵役に志願しなかった。それ以来、市民権の申請をためらってきた。幸い職に就き、結婚して家を持つことができた。

兵役に就くことは危険と隣り合わせではあるが、アメリカでの生活を円滑にするための有力な近道である。除隊後は大学で学ぶ奨学金(Pell Grant)が与えられる。経済的に貧しい階層の兵役志願率が高くなる。兵役は市民権を申請することのできる要件ともなる。

アメリカに住み仕事を得るには永住権が必要となる。通常であれば数年から10年くらいの時間と弁護士費用がかかる。ポートピープルなど人道上、配慮されるべき外国人は別である。さらにアメリカで多額の投資をする人々は優先的に永住権が所得できる。たぐいまれな頭脳の持ち主もそうだ。だが成田家はそのどれにも当てはまらなかった。

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