「学校の公務として位置づけ、すべての小中学校又は特別支援学校に置いて、関係機関との連携協力の体制整備を図る」という趣旨で置かれたのが特別支援教育コーディネータ(以下コーディネータと略す)である。
誰がIEPの作成に関わるかである。我が国の学校には教師の他、養護教諭、栄養士がいる。言語治療士、ソーシャルワーカ、理学療法士、学校心理士は常駐しない。とどのつまり、教師がIEPの原案を作ることになる。他に誰も一人の生徒を知るものがいないからだ。コーディネータは黙って印を押すことになる。
今や6人に一人の生徒は貧困家庭で生活する時代だ。貧困は生活のリズム、栄養、保護者の養育責任、生徒の自尊心など心身に影響を与える。栄養士やソーシャルワーカの果たす役割は大きいのだが、彼らがIEPの作成に関わることはない。多くの場合、学級担任が一人で作文する。時にコーディネータが作成に立ち会うこともあるが、コーディネータは、自分も担任学級を持つ。コーディネータは兼任であったりだから、IEP作成に傾注することは極めて難しい。
IEP作りにおいては、2段階の過程を踏むのが原則だ。まず、担任やコーディネータから、IEPによる指導がふさわしいと上がってくる生徒を特定する作業である。発達相談の資料や保護者の要望、担任教師からの観察資料を基にしてIEP作りが必要かが話し合われる。もし、必要でないとされると、当面は経過観察となる。
次に、IEPが適当とされる生徒はIEPの有資格者となる。そしてIEPカンファレンスが開かれ、作成から指導に至るタイムラインが作られ、実際の個別の指導は数週間後となる。こうした作成過程のマネージメントは一体誰がするのかは学校によって異なる。校内の分掌体制では、コーディネータを誰がするのか、学年主任がするのか、、、コーディネータが腰掛け仕事となり、事なかれ主義になっては困る。
「担当する複数の教師、職員、保護者、外部の専門家が連携し協力しながら、子どもの教育ニーズに応じて適切な教育を準備する」という趣旨は、全くの作文である。それを知る苦い経験をしたプロジェクトを紹介する。