心理学のややこしさ その十三 百科全書とフランス革命後

残念ながら八王子市立図書館に「百科全書」はありません。というわけでネット上で大阪府立中央図書館の「フランス百科全書 図版集」を観ながら西周の気分に浸っております。

西周を大いに触発したフランスの「百科全書」の特色です。知識の秩序と関連づけ、有益な工芸の既述、さまざまな分野の学者や技術者の協力、諸知識を具体的に結びつける工夫として、各項目に参照項目を多用しています。工芸の既述はディドロが最も力を注ぎ誇りとしたとあります。直接職人の仕事場で職人から説明を受けたようです。多くの版画によるイラストを多用していることからもそのことが伺えます。

百科全書は、ドイツやフランスでは発禁されるのですがスイスやイタリアでは好評を博し、再版がでたそうです。「岩波哲学・思想事典」によれば、ロシアの女帝エカチェリーナ二世(Katharina II)は当時ヨーロッパで流行していた啓蒙思想の崇拝者で、全書の刊行で困難に陥ったときディドロに支援を差し伸べたというエピソードもあります。ディドロも招かれたサンクトペテルブルク(Saint Petersburg)を訪問したほどです。

百科全書では当時の時代精神が語られ、その中心的な努力は「国家から法律を」、「道徳から意思の自由を」といった思想が流れています。自然からは精神と神の存在を否定し去るという唯物論的な方向を示すのが全書です。