ハングルで”기러기”とは雁、”아빠”はお父さんという意味である。お隣韓国の教育熱は我が国でも知られている。かつての我が国における受験戦争の比ではない。
韓国では、子息に英語での意思疎通能力を身につけさせようと懸命になっている。そのために子どもと妻を海外に送り出し、自国にて一人で働きながら生活する父親が沢山いる。こうした父親のことを「キロギ・アパ」「雁のようなお父さん」と呼ぶそうである。雁は渡り鳥で、父親が海外と国内を行き来することからこのようにいわれる。学歴社会を背景とする過度な教育熱と、孤独になった父親の精神的な負担などが社会的な問題となって久しいようである。
海外で学び仕事の経験を積むことが大事だと韓国人は日本人以上に考えているのは確かだ。現在アメリカの大学には韓国人が日本人の50倍はいるはずである。そして自国より住み心地が良いと感じているに違いない。
キロギ・アパといえば、筆者もその一人である。子どもたちをアメリカで教育し、彼らと別れて日本で長く生活している。子どもたちは教育を受け、仕事に就き、結婚し子育てに忙しい。「学歴社会を背景とする過度な教育熱」に毒されたのではなく、子どもが自分の進路を選んだのである。
米国というところは、長く住めば住むほど永住したくなるような不思議な魅力を持っている。それを海外からやってくる者は一種の幻覚のように感じるのだ。幸せを実現してくれるといった目眩のようなものである。そういう感覚を筆者も体験したことがある。