ウィスコンシンで会った人々 その111 Intermission ラグビーとスコットランド

「ラグビー・ワールドカップ2015」で日本代表の初戦の活躍が光った。強豪南アフリカ(South Africa)を破ったことにある。だが、第二戦はインターセプトなどの判断ミスから失トライ重ね、後半失速しスコットランド(Scotland)に敗退した。

スコットランドといえば、ゴルフ発祥の地としても知られ、セント・アンドルーズ(St. Andrews)は聖地と呼ばれる。またカーリング(Curling)もスコットランドが発祥とされるため、国際大会の前にはスコットランドの歌「Flower of Scotland」が演奏される。国民的にはサッカーが最も人気のあるスポーツであるが、ラグビーも非常に強いことが先日の対戦で知らされたところである。
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復習のようであるが、スコットランドは独立国家ではなく、グレートブリテン及び北アイルランド連合王国(United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland: UK)を構成する4つの国の一つである。2014年9月、スコットランドの独立を問う住民投票が実施されたが否決されたのは目新しい。そのような訳で、スポーツなどの国際大会で演奏される「Flower of Scotland」は国歌ではない。

筆者も、誠に細いつながりがスコットランドやイングランド(England)とにある。数少ない友や知人を通して学校を視察したこと、障がい児教育の現場を見せてもらったことも忘れられない。ヨーロッパの歴史を表層的に学んだこと、特に幕末から明治にかけてのスコットランド人(Scots)の日本での活躍、日露戦争前後の日本とイギリスの関わりは記憶に残る知識だ。それとルター(Martin Luther)と宗教改革がスコットランドに与えた影響、改革の意義を説教や勉強会で教えられたことも心の糧となっている。こうしたスコットランドと日本の関係にはついては、このブログ上で24回にわたり綴ってきた。

全世界の産業革命の先駆的な出来事は、蒸気機関の発明である。蒸気機関は工場や機関車に応用された。その発明家ジェームズ・ワット(James Watt)は、グラスゴー大学(University of Glasgow)で機械工学を学び、その後技術者として知られ、産業革命の発展に多大な貢献をした。オックスフォード大学(University of Oxford)やケンブリッジ大学(University of Cambridge)が、主に官僚を養成することを重視したが、グラスゴー大学や実学を強調した。その違いはきわめて鮮明である。

スコットランド人は理論を実践に移し、ものづくりに傾注することの重要性を深く認識していたようだ。多くの技術が実用化され、スコットランドはやがて産業革命の中心地としての地位を確立し、「大英帝国の工場」と呼ばれた時期もあったようである。今も鉄道、鉄鋼、機械、石炭、畜産、綿織、海運、造船などが盛んである。

スコットランド人の気質としては、独創性、独自性が豊かだといわれる。それを起業精神につながると指摘する識者もいる。スコットランドの自然と経済環境の厳しさにも由来するとされる。1701年にイングランド王国に併合されると、スコットランド人の就労の機会は先進地域のイングラントや海外への植民地へと向かっていく。
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多くのスコットランド人が1800年代に北アメリカ大陸に渡っていった。アメリカの鉄鋼王と呼ばれたアンドリュ・カーネギー(Andrew Carnegie)もスコットランド人である。1848年にアメリカに移住した。カーネギーはU.S. スティール会社(U.S. Steel Corporation)などを創設し莫大な資産を残す。それを基金としてカーネギーメロン大学(Carnegie Mellon University)、世界の音楽の殿堂といわれるニューヨークのカーネギーホール(Carnegie Hall)などの建設に使った。偉大な篤志家ともいわれる。道産子の小生には、開拓時代にスコットランド人の実業家や研究者が北海道の農業や酪農、畜産業などの分野で大きな貢献をしたことも忘れられない。エドウィン・ダン(Edwin Dun)はその代表である。

スコッチ・ウイスキーは定義上スコットランド産である。スコットランドには、100以上もの蒸留所があり、世界に愛好家が多い。ニッカウヰスキーの創業者竹鶴政孝もグラスゴー大学で応用化学を学びやがて、北海道の余市においてウイスキー蒸留所を建てる。

1960年代に北海油田が開発されると、漁港アバディーン(Aberdeen)は石油基地として大きな発展をとげた。石油資源の存在はスコットランド独立派の強みとなっている。UK唯一の原子力潜水艦の基地がスコットランドのクライド(Clyde)にある。

スコットランドの公用語は英語とゲール語(Gaelic)である。消滅危険度評価で「危険」水準にあることから、スコットランドでは、2005年からゲール語を公文書で使うことが決められた。なおゲール語ではスコットランドをAlbaと表記する。
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さてラグビーに戻り第三戦だが、一勝一敗の日本はサモアと、二勝のスコットランドは南アフリカとの対戦である。期待しよう。