好みはもっぱらそれに接触してきた時間経過に基づいており、当人の個人的な信念や態度からの影響とは無縁であるとも結論づけたのがザイアンス(Robert Zajonc)です。「好みに優劣などない」というのです。こうした情動的な反応は理性的な判断に基づくものでもないと彼は言い切ります。
繰り返し刺激に晒されると、それへの親近感が増すようです。親近感はその刺激に対する態度の変容を招き、それに対するひいきや愛着というパタンが認められるのです。こうした好みは情動的であり、自覚するようになる前に意識化のレベルで形成されます。
「見れば見るほど好きになる」というのは、長い年月を共にする夫婦の表情にも表れるようです。夫婦は似てくるという現象です。夫婦の情動は顔を通して伝達し、相互の表出を模倣し合うと考えられます。こうして互いの「共感」のような情が夫婦の顔を似たものにするのでしょう。