国政選挙の予測 その二 最新の世論調査結果

注目

 2024年10月に発足した石破新内閣について時事通信社が実施した調査の結果を引用します。それによると、「末期、石破政権の船出」という見出しで、「支持するは28.0%、支持しないは30.1%」とあります。調査は10月11日から14日に、全国の18歳以上の男女2,000人を対象に個別面接方式で実施し、有効回答率は58.6%で1,172人からの回答とあります。こうした結果は、衆議院の解散時期をはぐらかしたり、総裁選時の発言を翻したり、裏金議員の公認問題の対応が批判されたりしたことが有権者の回答に反映したようです。ただし、「全国の18歳以上の男女2,000人」をどのようにして抽出したかが分かりません。ここが調査結果が正確か否かの分岐点となります。

内閣支持率の推移

 次に、NHKは10月12日から3日間で行った石破新内閣についての世論調査を引用します。それによりますと、「10月発足した石破内閣を「支持するは44%、支持しないは32%」とあります。NHKの調査方法ですが、全国の18歳以上を対象にコンピュータで無作為に発生させた固定電話と携帯電話の番号に電話をかける「RDD」という方法で世論調査を行っています。そして調査の対象となったのは、5,489人で、46%にあたる2,515人からの有効回答です。

 この二つの調査結果には大きな違いがあります。支持するは28.0%と44%、支持しないは30.1%と32%という按配です。支持しないはほぼ同じ率ですが、支持するが大きく分かれていることが気になります。この違いは、一つは、1,172人と2,515人という標本数の違いと、標本の選び方にあります。時事通信社がどのようにして回答者を選んだのかが不明なことです。それに対してNHKはコンピュータで無作為に抽出したとあります。ただ時事通信社は個別面接方式で回答を得たのに対して、NHKは固定電話と携帯電話によって回答を得たことにも注目すべきと思われます。

 調査方法に関する考察です。NHKと同様に朝日新聞でもRDD方式を採用しています。RDD調査の先進国はアメリカです。ABC、 CBS、ピュー・リサーチセンター(Pew Research Center)などもRDDを使っています。電話による調査は、対面にくらべて安価で便利ではあります。ですが、携帯電話しか持たない人が増え、固定電話調査だと有権者全体をカバーできないという問題があります。これをカバレッジ誤差(coverage error)といいます。

スマートフォン保有率

 選挙調査は選挙区単位の調査となります。そのため電話番号には地域情報が必要となります。電話番号に地域の情報を持たない携帯電話に対しては調査が行えないので、地域情報を持つ固定電話に対してのRDD調査となります。少々不便で集計に際しては誤差が生じるる可能性があります。対面と電話では、どちらか正確な情報を得られるかです。私の考えでは、対面での回答のほうが電話よりも正確ではないかと思われます。

 最後に、選挙調査では、選挙の序盤より終盤の方が、回答率が高く正確な情報が得られます。これは二つの要因が考えられます。一つは、序盤調査という経験を通して、電話オペレータの電話調査でのトークのスキルが上がること、二つ目は、選挙投票日に近づくにつれ有権者の選挙に対する意識が高くなり、投票行動がほぼ確定するからです。
(投稿日時 2024年10月20日)