懐かしのキネマ その112 【デルス・ウザーラ】

1975年に公開されたソ連の映画です。監督は黒澤明がつとめた作品です。原題は【Dersu Uzala】といいます。年老いた猟師が酷寒のシベリア(Siberia)のなかで生きる姿を描く名作です。見逃したくない映画です。

1902年、ロシア人探検家で作家のアルセーニエフ(Arsenyev)は、コサック兵(Cossack)6名を率いて当時ロシアにとって空白地帯だったウスリー地方 (Ussuri)の地図製作の命を政府から受け、探検隊を率いることとなります。調査の途中で、森林の中で自然と共に暮らしている天涯孤独のゴリド人(Goldi) 猟師、デルス・ウザーラ(Dersu Uzala)と出会います。翌日から、デルスは調査隊のガイドとして先頭に立ちます。

Dersu Uzala

探検の中、デルスの自然に対する驚くべき体験と知識と六感、独特の哲学に触れたアレクセーエフや隊員達は、次第に彼に心が惹かれ、深い信頼を寄せていきます。デルスは、捨てられた帽子を修理し旅人のために白樺で作った容器に生き延び方のメモを入れておいたりするのです。ある時、二人の隊員が凍った湖で迷い、そこに雪嵐がやってきたとき、彼は二人の命を救います。迅速に藁をくんでシェルターの作り方を教え避難させるのです。疲れ切ったアルセーニエフはシェルターに運び込まれ隊員とともに凍死を免れます。

調査隊はツンドラ(Tundra)の大地で苦しい旅を続けます。そこで出会ったナニ(Nani)という家族の家に招かれ食事や暖を与えられます。次ぎにどこへ行きくのかをデルスはアルセーニエフに尋ねます。「街へ戻るが、一緒に行かないか」とデルスに問いかけます。彼は自分の住み家は森であるとして断ります。翌日、隊員達を鉄道まで送るとデルスは森に消えて行きます。

5年後、新たな調査で再びウスリー地方訪れたアルセーニエフは、地図を作成しながら昔の友に出逢いたいと考えています。ある夜、隊員が老猟師に出逢ったことを伝えます。猟師は調査隊のことを訊いたというのです。アルセーニエフが森の中を探していると、森に入ろうとする猟師を見つけます。喜び勇んで叫ぶと、デルスも応えます。二人は駆け寄りひしと抱き合うのです。二人はキャンプ地で焚き火を囲みながら、別れて以来のことを語り合います。

再びデルスはガイドとして調査隊に加わります。大きな川を筏で横切ろうとしたとき、一行は離ればなれとなります。馬を引き連れた隊員も川を渡ろうとします。アルセーニエフとデルスは筏に捉まりますが、他の隊員は急流に流されていきます。 デルスはアルセーニエフを押して、岸へ向かって泳げと叫びます。川はいっそう急流となります。デルスと筏が急流に呑み込まれそうになったとき、彼は木の枝に飛び移ります。そして一行に木を切り倒し、アルセーニエフを救えと指示するのです。暫くして一行はようやく全員が助かり一息つきます。デルスの写真を撮り、皆が安堵するのです。アルセーニエフは、秋が近づく頃、日記の中でこうした出来事を書き留めデルスとの記憶を残すのです。

一行がさらに森を調査しているとき、デルスは一頭のシベリア虎(Siberian tiger)が忍び寄ってくるのを察知します。隊員は銃で撃とうとするのでデルスは虎を威嚇しようとしますが、さらに近寄ってきます。仕方なく、デルスは虎を撃ち殺すのです。しかし、彼は自分が射殺したことで心を取り乱します。それは、カンガ(Kanga)と呼ばれ人々が敬う森の中の霊が悲しみ、さらに別の虎を差し向けるだろうというのです。デルスは苛立ち、アルセーニエフや隊員たちに、自分に近寄るな、と叫ぶのです。彼は歳とともに視力や感覚が衰え、もはや狩は無理になり森で一人暮らしは出来なくなります。

アルセーニエフはハバロフスク(Khabarovsk)という街にデルスを同行させようと決心します。しかし、街では規則によって木を倒したり、公園で焚き火をしたりすることができません。街の境界付近でも狩はできないのです。アルセーニエフとその家族から慕われるデルスですが、もはやハバロフスクは自分の住む所ではないとアルセーニエフに告げ、森へ戻る決心をします。アルセーニエフは真新しいライフル銃を彼に持たせます。

その後、アルセーニエフは警察から電報を受け取り、一人のゴリド人の死体が見つかったことを知らされます。身分証明になるものはなく、ただアルセーニエフからの手紙だけが見つかったという知らせです。急いでその場にアルセーニエフが着くとデルスが横たわっています。警官がいうのには、誰かが銃の欲しさにデルスを殺したに違いないといいます。墓堀人がデルスを埋葬したとき、彼が使っていた杖を見つけます。そしてアルセーニエフは墓の脇に杖を立てるのです。