ウィスコンシンの歴史−地名の由来

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 ウィスコンシンという語の由来についてです。ヨーロッパ人が入植した当時、この地域に住んでいたアルゴンキン語(lgonquian-speaking)を話すネイティブアメリカン(Native American)のグループの一つが、ウィスコンシン川に付けた名前に由来するといわれています。フランスの探検家ジャック・マーケット(Jacques Marquette)はウィスコンシン川(Wisconsin River)に到達した最初のヨーロッパ人で、1673年に到着し、日誌の中でこの川をメスコウジング(Meskonsing)と呼びました。その後、フランスの著述家がメスコウジングからウイスコンシン(Ouisconsin)に綴りを変え、時が経つにつれてこれがウィスコンシン川と周囲の土地の両方の名前になったといわれます。19世紀初頭に大量に到着し始めた英語を話す者は、綴りをウイスコンシンからウィスコンシンに英語化したようです。ウィスコンシン準州(Wisconsin Territory)の議会は、1845年に現在の綴りを公式に制定します。

Wisconsin in 1718

 ウィスコンシンを表すアルゴンキン語(Algonquian word) とその本来の意味は、どちらも不明瞭なようです。解釈はさまざまですが、ほとんどは川とその岸に並ぶ赤い砂岩に関係しています。有力な説の 1 つは、名前の由来はマイアミ語(Miami word)の「赤い」という意味の(Meskonsing) で、ウィスコンシン川がウィスコンシン デルズ(Wisconsin Dells)の赤みがかった砂岩を流れる様子に由来しているというものです。他の説には、名前の由来は「赤い石の場所」、「水が集まる場所」、「大きな岩」を意味するオジブワ語(Ojibwa)のさまざまな言葉の 1つであるという説もあります。いずれにせよ、どれも定説とはなっていません。

 ウィスコンシンの地を訪れた最初のヨーロッパ人は、フランスの探検家ジャン・ニコレット(Jean Nicolet)です。1634年にヌーベルフランス(New France)のサミュエル・ド・シャンプラン総督(Samuel de Champlain)の使者のニコレが、グリーンベイ(Green Bay)近くのレッド バンクス(Red Banks)に上陸しました。ジョージアン湾(Georgian Bay)から五大湖(Great Lakes)を通って西にカヌーで渡ってきたのです。さらにピエール・ラディソン(Pierre Radisson)とメダル・デ・グロセイリエ(Médard des Groseilliers)は1654年から1666年にグリーンベイを再び訪れ、1659年から1660年にはチェワメゴン湾(Chequamegon Bay)を訪れ、地元のネイティブアメリカンと毛皮の取引を行います。

Seal of Wisconsin

 1673年、ジャック・マーケットとルイ・ジョリエはフォックス・ウィスコンシン水路(Fox-Wisconsin Waterway)を通ってプレーリー・デュ・シン(Prairie du Chien)近くのミシシッピ川(Mississippi River)までの旅を記録した最初の人物となります。毛皮商人のニコラス・ペロー(Nicholas Perrot)などのフランス人は17世紀から18世紀にかけてウィスコンシン州で毛皮貿易を続けますが、フランスは1763年のフレンチ・インディアン戦争後(French and Indian War)でイギリスがこの地域を支配するまでウィスコンシン州に恒久的な入植地を作りませんでした。それでも、フランス人貿易業者は戦争後もこの地域で働き続け、1764年のシャルル・ド・ラングラード(Charles de Langlade)を皮切りに、イギリス統治下のカナダに戻るのではなくウィスコンシン州に永住した者もでてきました。

Cornish house


(投稿日時 2024年8月30日)成田 滋

ウィスコンシン州の大統領選挙戦渦中

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 今回のアメリカ大統領選挙戦では、民主党と共和党の論争が熾烈になってきています。それは、両党が最も重要視する州の選挙結果が大統領選挙戦の鍵となるからです。その州とはペンシルベニア(Pennsylvania)、ミシガン州(Michigan)、ウィスコンシン州(Wisconsin)、ミネソタ州(Minnesota)です。このあたりはアッパー・ミッドウエスト(Upper Midwest)と呼ばれ、農業、酪農、工業、製造業などが盛んで、アメリカの心臓部(America’s Heartland)とも呼ばれる地帯です。住む人々は、いわゆる中間層といわれ結構学歴の高い人々も多いところなので、両党ともこうした有権者に支持を訴えるのに懸命です。

Swing State

 アメリカ合衆国は50の州からなります。こうした50州は、歴史的に民主党や共和党の棲み分けがはっきりしている地盤となっているので、カマラ・ハリス(Kamara Harris)とドナルド・トランプ(Donal Trump)はこうした州ではほとんど選挙運動を行いません。例えばカリフォルニア州は民主党の地盤であり、テキサス州は共和党の地盤なのです。こうした岩盤となっている状態は、歴代の大統領選挙戦や連邦議会選挙ではっきりしています。

 合衆国には「選挙人団制度」があります。ちなみにカリフォルニア州(California)の選挙人は55名、ヴァモント州(Vermont)は3名という具合に、人口比によって選挙人数が決められています。州で最も多くの票を獲得した候補者が、その州の全ての選挙人票を獲得する方式で、これを「勝者総取り」と呼ばれています。全米の選挙人の総数は538人であり、大統領に選ばれるためには270の選挙人票を得る必要があります。つまり、一般投票で最も多い票を集めた正副大統領候補のコンビが、その州の選挙人票をすべて獲得します。

 最近の選挙戦報道で盛んに名前が出てくるウィスコンシン州を取り上げることにします。ウィスコンシン州は私が留学し学位を貰った思い入れの強い地でもあります。この州は、大統領や議員を選ぶ連邦選挙で民主党候補か共和党候補のどちらかが勝利するスイング州(swing state)とみなされています。どちらかに転ぶ(swing)かが分からない激戦区なのです。例えば、2020年の大統領選挙ではジョー・バイデン(Joe Biden)はわずか0.63%の差でウィスコンシン州を制します。その前の2016年の選挙ではトランプは0.77%というわずかな差でウィスコンシン州を制します。この選挙では、ウィスコンシン州民が1984年以来初めて共和党大統領候補に投票した時だったのです。元々ウィスコンシン州は、1992年から2012年までの各大統領選挙で民主党が勝利した州なのです。

 民主党の党カラーはブルーです。民主党群の州は、ブルーウォール(blue wall)と呼ばれ、ウィスコンシンもその一部でした。2012年、共和党大統領候補のミット・ロムニー(Mitt Romney)は、現職大統領バラク・オバマ(Barack Obama)に対抗する副大統領候補として、ウィスコンシン州の南部にあるジェーンズビル(Janesville)出身のポール・ライアン(Paul Ryan)下院議員を選びます。ロムニーはマサチューセッツ州知事などを歴任しますが、全国的には穏健派と見なされ、モルモン教会員であることや全国的な知名度の低さもあって、党内外で影響力の強い保守派の支持獲得が課題となっていました。そこで中西部の票を集めるために、ロムニーはライアンを副大統領候補として指名したのです。

 州全体では、ウィスコンシン州は二大政党の間で定期的に主導権が交代する競争が激しいところです。 2014年の総選挙後、州知事、副知事、州司法長官、州財務長官はすべて共和党員で、国務長官は民主党員でした。しかし、2018年には民主党が州憲法上の全役職を選挙で制します。現在の知事は、民主党員トニー・エヴァース(Tony Evers)ですが、この結果は、ウィスコンシン州では1982年以来初めてのことでした。

 ウィスコンシン州の住民はウィスコンシン人(Wisconsinites)と呼ばれています。ウィスコンシン州の農村経済では酪農とチーズ製造が伝統的な産業です。州のライセンスプレートには1940年以来「アメリカの酪農地帯(America’s Dairyland)」と記されています。「チーズヘッド(cheeseheads)」というあだ名が付けられています。非居住者の間では軽蔑的に使われることもあるようです。チーズのくさび形をした黄色いフォームで作られた「チーズヘッドハット」が作られるようになり、全米で知られるようになりました。フットボールや野球の試合、選挙集会などで人々はこれをよくかぶるのが見られます。

Cheese Head

 ウィスコンシン州では、州民の伝統を祝うため、数多くの民族フェスティバルが開催されています。サマーフェスト(Summerfest)、オクトーバーフェスト(Oktoberfest)、ポーランドフェスト(Polish Fest)、イタリア祭り(Festa Italiana)、アイルランド祭り(Irish Fest)、シッテンデ・マイ(Syttende Mai)というノルウェー憲法記念日を祝う祭りです。シェボイガン(Sheboygan)のブラット(ソーセージ)祭(Brat Days)、モンロー(Monroe)とメクオン(Mequon)のチーズ祭 (Cheese Days)、アフリカン・ワールド・フェスティバル(African World Festival)、インディアン・サマー(Indian Summer)、ウィスコンシン・ハイランド・ゲームズ(Wisconsin Highland Games),など、数多くのフェスティバルが開催されています。この州は、多民族から構成されていることの表れでもあります。