認知心理学の面白さ その三十一 「結晶的知能」とレイモンド・キャッテル

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人の知能や技能についての実験や調査を綿密に行ったキャッテル (Raymond Cattell)は、得られたデータを多変量解析(multivariate analysis)など複雑な推測統計の手法を使い結論づける優れた心理学者といわれました。非常に緻密な分析をする秀でた素養の学者です。他方、確かに知能や人格の類型化に貢献はしたのですが、遺伝や優生学の知見を人間の知能に持ち込むといういわばタブーに踏み込んでいきます。その動機はなんだったのかをもっと知りたくなります。

「流動的知能」とともに、過去の経験と学習された事実からなり年齢とともに蓄積されていく判断能力があるとして、キャッテルはこれを「結晶的知能」(crystallized intelligence)と呼びます。問題解決に「流動的知能」が活用されるにつれて、私たちは知識を蓄積し、自分たちを取り巻く世界についてのさまざまな作業仮説を展開してききます。この知識の貯蔵が「結晶的知能」であるとします。

「結晶的知能」は過去の経験と学習された事実からなり年齢とともに蓄積されていく判断能力のことです。問題解決に「流動的知能」が活用されるにつれて、私たちは知識を蓄積し、自分たちを取り巻く世界についてのさまざまな作業仮説を展開してききます。この知識の貯蔵が「結晶的知能」であるとします。キャッテルは文化的活動に「流動的知能」を投入することで得られる一連の判断技能と特徴づけます。学習経験における莫大な差が生じるのは、社会的階層、年齢、国籍、歴史的時代といった要因によるところが大きいとされます。この形式は知能は65歳くらいまで比較的一定しているとされます。

さらに、より高次の「流動的知能」を有しているかどうかが、人格と興味に関わる因子に左右される「結晶的知能」のいっそう迅速で広範な発達を促すことがあると推測します。それが知能や人格の類型化に貢献したのですが、優生学を知能にからめて持ち込むということまでやります。

キャッテルは文化的活動に「流動的知能」を投入することで得られる一連の判断技能と特徴づけます。学習経験における莫大な差が生じるのは、社会的階層、年齢、国籍、歴史的時代といった要因によるところが大きく、この形式は知能は65歳くらいまで比較的一定しているといいます。より高次の「流動的知能」を有しているかどうかが、人格と興味に関わる因子に左右される「結晶的知能」のいっそう迅速で広範な発達を促すことがあるとも推測します。

認知心理学の面白さ その二十二 人格理論とミッシェル

ウォルター・ミッシェル(Walter Mischel)はオーストリア(Austria) のウイーン(Vienna) 生まれ。8歳のときユダヤ人の両親とともにアメリカに移住します。丁度ナチスドイツが政権の座についた1938年のことです。ニューヨークのブルックリン(Brooklin, NewYork)で育ちます。

ミッシェルの人格理論(personality theory) に入る前に、1960年代の人格理論を振り返ります。それまでの人格論では大抵の場合、人格とは遺伝的に伝えられる一連の個人的行動の特性であると考えられてきました。心理学者はこうした特性の定義を測定に努めてきたといえます。特性こそが個人の行動を理解し、然るべく予測する上で欠くことのできない要であると理解されていたのです。たとえば、キャッテル(Raymond Cattell)は、学習の基礎として機能する一般的知能にあたる要因があるとします。彼は因子分析の結果から人格構造は16のモデルからなるという説を唱えます。

キャッテルは、一連の思考ないし推論能力でどんな論的ないし内容にも適用可能な状態があるとしてこれを「流動的知能」 (fluid intelligence and crystallized intelligence)と呼びました。これは遺伝的に受け継がれるとします。もう一つとして、過去の経験と学習された事実からなり年齢とともに蓄積されていく判断能力があるとして、これを「結晶的知能」(crystallized intelligence)と呼びます。

ミッシェルの関心は、行動決定に際して、状況のような外的な要因が果たす役割でした。それは、人々が身を置いている状況に目を向けることが不可欠であるとするのです。時間を超えて、状況が異なっても一貫して変わらない思考の習慣の分析にとりかかります。そして意志の力をテストするために「マシュマロ実験」(Marshmallow experiment)を行います。

4歳の子供達の前にマシュマロが一つ出され、「今すぐそれを食べることができるが、15分待てば2個食べられる、どちらを選ぶか」と言われます。15分待つことのできる子供いればすぐ食べてしまう子もいます。ミッシェルは実験に加わった子供を思春期になるまで追跡調査し、誘惑に耐えられた子供のほうが、学校での行いもよく、社会的にも能力を発揮し自己評価もできたと報告しています。心理的により順応を示し信頼のおける人間になったとも結論づけます。