心に残る名曲 その四十二 「ロザムンデ序曲」

中学や高校の音楽室にはなぜか、年代順に歴代の有名な作曲家の絵がかかっていました。シューベルト(Franz Peter Schubert)もそうです。シューベルトは各分野に名曲を残しますが、とりわけドイツ歌曲(Lied)において功績が大きいので「歌曲の王」と呼ばれています。短命の作曲家たちに比べても最も短命でその一生は31年。その間、シューベルトは600曲以上の歌曲作ったといわれます。「野薔薇」、「冬の旅」、「魔王」はなんども歌い、「鱒」はよく聞かされました。ピアノ五重奏曲にも「鱒」というのがあります。

「キプロスの女王ロザムンデ』(Rosamunde)作品26はシューベルトが同名のロマン劇のために作曲した劇付随音楽とあります。音楽事典によりますと、劇付随音楽とは劇の台本や進行に合わせ作曲された音楽だそうです。劇や芝居を盛り上げ、様々な効果を作り出すために創作され、序曲、間奏曲、挿入曲などから成るとされます。

ロザムンデ序曲は、アンダンテの序奏と「アレグロ・ヴィヴァーチェ(Allegro vivace)」という楽曲のハ長調の主部からなり、序奏の部分は少々劇的に暗いのですが、一変して叙情的でロマン的な旋律の美しさへと移ります。アレグロ・ヴィヴァーチェとは「生き生きと」の意味で,快活で速く明確なアクセントをもつ旋律のことです。主部はソナタ形式による単純な形をとっていますが、親しみやすい楽想を有しています。ロマン的とは「ロマンティックな音楽」とでも云えます。やわらかく夢見がちな雰囲気を連想させるような音楽という意味で使われています。