文化を考える その28 街角の風景 その8 「聴衆に視線を向ける」

なくて七癖とはよくいったものである。人それぞれに癖があるが、人前では、あまりよろしくない行為はなんとかしたいものだ。先日、図書館で調べものをしているとき、前に座った外国人から「足を振るわせないように」との注意を受けた。振動が伝わって不快な思いをさせたようだ。私は足をブラブラしたり貧乏揺すりをする癖がある。

人前で話をするとき、自分は「あー」、「えー」、「えーと」、「うーんと」などというつなぎがでてくるのを自覚している。文章の末尾に「、、、、と思います」というフレーズも多い。録音を聴きながら「、、、です」と直さなければとなんども言いかせた。だがなかなか改善しない。

以前、トーストマスター(Toastmaster)という団体に属したことがある。トーストマスターとは非営利教育団体で、座を和やかにする話し方、聴衆をひきつける話し方のスキルを高めることを目的とする。世界中にトーストマスターズ・インターナショナルの支部やクラブがある。月刊雑誌を出しているほど活動が活発で、日本にも支部がある。多くは英語圏の人で構成されている。

横須賀にいたとき基地内にある学校で、トーストマスターの例会に出席していた。この例会は英語で進められた。会員は、月に数回定期的に開かれる勉強会に出席することが求められる。会合の進め方だが、司会者からスピーカーや評価者などの役割を与えられる。会員は毎回持ち回りで司会を務める。

例会は時間厳守が求められる。参加者はマニュアルに基づいて準備されたテーマについてのスピーチ、即興スピーチをしなければならない。論評はスピーチの良かったことに対する「褒め」と、建設的な「改善点」の両方を述べることが要求される。私がしばしばこの例会で指摘された改善点である。それは、原稿に視線が向きすぎる、即興で与えられるテーマでしゃべる内容に精通していないこと、流れるようなスピーチの構成となっていないこと、言葉遣いで「ああ、、えーと、」が多いこと、ジェスチャーが不十分で訴える印象が薄い、声の抑揚が平坦であること、などが指摘された。

例会の終わりには、参加者全員による投票で最優秀スピーカー、優秀即興スピーカー、評価者などの賞が与えられる。講師は存在せず、会員同士による話し方のフィードバックによって、話し方を向上するために教育しあうことを活動の柱としている。

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