IEPはどうなっているか その6 e-iepの機能

子どもの障がいの状態や程度は一人ひとり異なる。そのため特別支援教育の現場では複数の人によって観察されたり検査されたりして、子どもの発達課題を探ることになる。そのためにe-iepにはいろいろな機能を実装して子どものIEP作りを支援している。その特徴的な機能を以下に紹介する。

■チェックリスト
子どもの発達の実態を把握するための検査項目である。本チームが開発したチェックリストは小学生から中高校生の二種類がある。加えて文部科学省が作成した発達支援のチェック項目を標準装備している。項目別にグラフィカルに表示されるので観察結果は解りやすい。校内委員会や保護者への説明にも効果的である。

チェックリスト項目をカスタマイズすることができるので、学校毎のニーズに細かく対応することができるようになっている。設問に答えるだけで点数化されガイドラインと照らし合わせることで、支援の必要性をかなりの程度で客観的に確認することができる。

■願い〜目標
支援には一貫性が必要なことはもちろんである。そのためe-iepでは願い→長期目標→短期目標→手だてが連携する様に入力を促す機能がある。時に、この連携がブレる事がある。そのために、e-iepは願いから目標、そして手だてを連動させるようにしている。

■コミニュケーション
e-iepは複数の教師や専門家、そして保護者とで子どもを支援することを基本としている。そのために豊富な情報の共有機能やコミニュケーション支援機能で支援者と保護者をつなぐことができるように設計されている。

○連絡帳
保護者と支援者の会話がとても重要なことはいうまでもない。学校や家庭訪問で直接対話することはもちろんでだが、時や場所の制約を受けにくいメールによるコミュニケーションも活用できる。e-iepの連絡帳機能は保護者の携帯電話からe-iepに登録している担任や特別支援コーディネーターにメッセージを送る事ができる。担任が不在の時でも連絡が停滞しないようになっている。

連絡帳機能による通信は全てe-iepサーバー上に記録される。保護者の携帯電話に情報が残らない。携帯を万一の紛失時にも情報の漏洩はない。またe-iepサーバーは保護者の携帯電話の製造番号を自動的に記録、「ID」+「パスワード」+「製造番号」の三つで認証する。従って、他の携帯電話からアクセスをすることはできない。

○メモ
普段の子どものエピソードから打ち合わせの記録といった文字情報はもちろん、画像や動画も保存が可能である。一つひとつのメモにコメントを残せるので、教員同士の連絡や伝達にも活用が可能となっている。過去にあった事柄を記録することで、担任交代時の引き継ぎが容易になる。

○ケースカンファレンス(校内会議支援)
校内委員会、ケース会議といった特別支援に関する打ち合わせを支援する機能を有する。
・会議招集:メンバーに会議日時を伝え参加の可否を確認する。
・書類共有:会議資料の事前配布を行う事ができる。参加者が各自で用意することで無駄な印刷コストを削減できる。
・議事録:会議の結果を登録する。当日参加できなかったメンバーも情報を共有できる。

○合意
e-iepでは完成したIEPを「担任」、「支援に関わる教員」、「特別支援コーディネーター」、「管理職」の間で電子決済を行う。この行為により、「個別の指導計画」は学校として正式に承認されたものになる。e-iepではこれを「合意」と呼んでいる。一度承認されたIEPは支援者が勝手に変更することはできない。

■分析ツール
合意された計画は指導に移される。さらに指導されることによってどのような効果があったかを測る必要がある。e-iepは「応用行動分析」の手法を取り入れた分析ツールを標準で装備している。生徒の様子や設定した手だてを自動的に転記し、指導前と指導後の問題行動の回数を比較、効果の検証をすることができる。検証が終わった「手だて」は達成、未達成が判定されe-iepの情報が更新される。

このような指導計画を検証し分析する機能は、恐らくIEP作成ツールとしては世界最初の機能である。これまで調査したツールにはこのような分析機能は装備されていない。

■通知表機能
通知表機能では従来の学校毎の定型的な通知表フォームに加えて、指導計画、指導と分析結果などを総合して附表として自動的に転記さる。それを編集して出力され保護者に伝えることができるインターフェイス機能を有している。指導の成果を保護者に伝えることは支援者の責任であるので、この通知表機能はなくてはならないものである。

■引き継ぎ
子どもの学年進行によって、新しい計画を作る必要があるときは、前学期作成した個別の指導計画をひな形にして最小限の労力で計画を作ることができるようになっている。

「保護者参加の個別の指導計画づくり」というコンセプトはe-eipの随所にみられる。支援者の知恵を集め、それを蓄積することでより質の高い教育の実現することがe-eipの狙いである。

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