【話の泉ー笑い】 その四十六 パントマイム その6 その芸術

笑いの芸術、パントマイムのまとめです。「声を用いず身体の動きや顔の表情のみを表現手段とする芸術」がパントマイムです。黙劇とか無言劇です。古代ギリシャで生まれた「ものまね」を中心とした座興的な雑芸と呼ばれました。パントマイムの起源は古代ローマのパントミムス(pantomimus)に求めるのが定説のようです。ギリシャ時代は雑劇といわれましたが「ものまね,身振り」的な要素が強調され、1つの芸能のジャンルとなりました。

紀元後からおよそ5世紀の初めに至るまで、ものまねが卑俗であるとしてキリスト教会からの「道徳的な非難」や名帝といわれたトラヤヌス皇帝(Emperor Marcus Trajan)による禁止令にもかかわらず、古代ローマ人には大いに愛好されたといわれます。ローマ帝国の解体以降は、いわば1つの芸術ジャンルとしては消滅しますが、実体としては種々の雑芸や笑劇の中にその要素が吸収され、西欧演劇の一底流として中世・ルネッサンス期から近代へと生き続けることになります。

ジェスチャー(NHK)

本稿で既に述べましたが、イタリアのコンメディア・デッラルテという旅芸人一座の中にパントマイムの要素を色濃く見ることができます。17、18世紀にフランス宮廷などで行われた神話を題材とする仮面舞踏劇もパントーム(pantomime)と呼ばれています。

19世紀になるとパントマイムは、演劇史の中で全盛期を迎えます。フランスにおいうてピエロに扮した芸人の芸として発達します。その後、エティーヌ・ドクルー(Etinne Docroux)やバロー、マルソーに受け継がれていきます。パントマイムは、音声言語を排除するので、舞台芸術として実践することは、戯曲上演と比べてかなり少ないのが実際です。それでも演劇表現の中で占める普遍性によって、今日でも俳優訓練や養成の一手段として世界各国で重視され、人々に笑いや感動を与え続けています。