住んでいる八王子の家の近くに二つの小学校がある。そのうちの一つには、「放課後子ども育成事業」で囲碁クラブがないことを知った。そこで学校へ出掛け校長や教頭と会い、囲碁クラブの開設を申し出た。費用はかからないこと、ボランティアが担当すること、囲碁をするのは子どもの発達によいこと、などを熱い思いで語ってきた。その甲斐もあってか、保護者全員に開設案内のチラシを配布し回収するところこまでこぎつけた。
このチラシは、次のように誠しやかなことをうたっている。
【囲碁とは】
黒石と白石を盤上の交点ならどこに打ってもよい自由なルールで「かたち」を創り上げていくのが囲碁です。
【囲碁の効用】
子どもの人格育成を助けるのが囲碁です。囲碁は集中力が身につき、創造力を育み、発想が豊かになる頭脳ゲームです。囲碁は考える力を向上させることができます。
【囲碁で教えること】
子どもに囲碁の楽しさやスリル、囲碁のルール、囲碁をうつときの礼儀や態度などを教えます。礼に始まり礼に終わるのが囲碁です。対局のマナーが身につきます。
筆者はチラシの内容で悦に入っているが、その通りに子どもが変容するかは保障していない。偏に指導し援助するボランティアの資質や力量にかかっている。小学生には九路盤か十三路盤を使う。普通大人が使う十九路盤では広すぎる。九路盤とは九掛ける九、八十一の交点を使う。でもかなりの広さである。
囲碁には黒石と白石をどこに置いてもよいというルールがある。それによって「かたち」を作り上げていく。囲碁はこちらが打てば、相手も打つという交互のゲームだ。相手が考えているときはじっと待たなければならない。その間自分の打つ手を考える。次に自分はどのような意図や作戦によって石を盤上に置くかを考える。ここが思案のしどころだ。
「かたち」によって陣取りをするのが囲碁である。攻めては守り、陣地を広げようとする。むやみに堅い相手の陣地に入ると召し捕られる。攻めてばかりいると石が孤立し弱くなり、自陣が荒れる。石の強弱によって戦況は変わる。子どもにはこのような変化は少し難しすぎるが、どうすれば陣地を守れるか、あるいは広げられるか、相手の石を取れるかの心得が備わってくる。