心に残る一冊 その9 「賢者の贈り物」 

原題は「The Gift of the Magi」といいます。オー・ヘンリーの短編小説の一つです。若く貧しいジム・ヤング(James Young)と妻デラ(Della)は12月24日を迎えます。その年は特別に景気が悪く、給料も減ってしまいました。二人はいつもより厳しいクリスマスを迎えなければなりませんでした。

デラはこのクリスマス・イヴの日に愛する夫のために何かすばらしいプレゼントを買いたいと考えます。手許には、1ドル87セントしかありません。たったの1ドル87セントです。デラの目から涙がこぼれます。

しかし、デラが姿見の前に立ちお化粧を直していたとき、膝の下までとどく美しい髪の毛をみてすばらしいことを思いつきます。そして髪の毛を売る商人の元でバッサリと切ってもらいます。大事な髪の毛で20ドルを得ます。それをもってジムが祖父と父から受け継いでいた金の懐中時計に付ける「プラチナの鎖」を購入するのです。他方、ジムも愛する妻、デラのために何かすばらしいプレゼントをしようと考えていました。でもお金がありません。ジムは大切な懐中時計を質に入れ、デラが欲しがっていた「亀甲の櫛」を求めるのです。

ジムはいつもどおりにアパートに帰って来ました。扉を開いたジムは、デラの顔を見て棒立ちになります。デラのあの美しい髪の毛が無くなっていたからです。でもそれだけではありません。デラはジムの懐中時計もなくなっているのを知ります。二人はそれぞれが計画したことを話すのです。そして「私の髪はすぐ伸びるのよ!」 デラはいいます。

ジムが金時計を売って、デラの髪に飾ろうとした「亀甲の櫛」。デラが自分の髪を売って買った「プラチナの鎖」。どちらも贈りものを与え、贈りものを受けとるのです。