最近、中国でしばしば使われる四文字熟語に「未富先老」とか「失独失能」があります。こうした熟語に接すると高校時代に取り組んだ漢文の学習を思い出します。
新年早々、中国経済の減速と株価の下落が報道されています。「サーキットブレーカー」の発動などが取りざたされています。政府が株価を操作するかのごとき政策は市場経済といえるのか、とさえ思われます。
中国の経済現象とともに懸念されるのが「高齢化社会」の進行です。60歳以上の人口が総人口の13.3%を占め、前回の調査より3ポイント上昇したと報じられています。上海は中国で最も早く高齢化社会に突入したとも報道されています。60歳以上の人口は2012年に25%、2020年には37%に達する見込みだというのです。そして最大の課題は急増する高齢者の介護問題というのです。これには「一人っ子」政策のツケが回ってきているともいわれます。親を介護する者が少なくなったのです。
ブリタニカ国際大百科事典によりますと、世界保健機構(WHO)や国連から出された報告書に高齢化の定義があります。それによりますと65歳以上の老年人口の比率が総人口の 7%をこえた社会を「高齢化社会」(aging society)、14%をこえると「化」が抜けて「高齢社会」(aged society)というのだそうです。日本では 1970年に 7%をこえ,その後 1995年には 14.5%に達しています。
高齢社会は今日、明日の現象ではありません。総務省は2015年12月の推計人口において、65歳以上の総人口に占める割合が27%、75歳以上が13%を超えたと発表しています。日本の総人口は2006年をピークに減少に転じています。団塊の世代が2015年にすべて65歳以上になるので、この間の高齢者人口の急増を「2015年問題」と呼ぶこともあります。「2015年問題」とは、少子化に伴う若年労働者の減少と、それにカバーする定年年齢の65歳以上への引き上げ、部分就労といったことです。
「未富先老」という熟語の意味を考えてみましょう。文字通り「豊かになる前に高齢化する」ことです。この熟語は中国固有の現象を表すとされます。急激な経済成長によって、一部の階層の人々は豊かになったようですが、大多数の人民は豊かさに取り残され、高齢化後の生活に不安を抱えているというのです。老後の生活に必要な蓄えが不十分であるとか、介護施設を問わず介護スタッフなど高齢者の受け皿が足りないといった不安です。
中国人のGDPは一人あたり約4,000ドルで、日本やイギリス、ドイツ、フランス、スウェーデンなどの発展国が高齢化社会となったとき、人口一人あたりのGDPはすでに1万~3万ドルに達していたといわれます。これが「未富先老」という言葉が生まれた理由です。経済規模が世界2位になった今の中国にはこうした側面もあります。
我が国では「未富先老」という現象はあるのかという問いですが、高度経済成長を契機に、三種の神器とか所得倍増、マイホームなどの社会現象が起こりました。1990年代初頭のバブル景気の崩壊以後も経済成長は安定した成長を続けているといわれます。終の棲家を得てささやかながらの年金暮らしや介護医療保険制度などによって、「未富先老」という実態はあまり顕在化しなかったようです。このあたりの事情はより詳しく調べる必要は感じますが。
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