ウィスコンシンで会った人々 その60 ドケチ噺

ドケチとかしみったれ、というのは落語の定番の話題になる。ケチは「吝嗇」ともいう。

吝嗇を笑う「味噌蔵」を取り上げる。
独り身の味噌屋の主人ケチ兵衛。嫁をもらうと子供ができれて経費がかかってしかたがないといまだに独身。心配した親類一同が、どうしても嫁を持たないなら、今後一切付き合いを断る、と脅したので、泣く泣く嫁をもらう。

やがて嫁さんは妊娠。臨月が来たらかみさんを実家に押しつけてしまえばいい。そうすれば費用はみなあちら持ちだ。ケチ兵衛はやっと一安心する。無事男子を安産の知らせが届いたので、ケチ兵衛は小僧の定吉をお供に出かけることにする。旦那が出かけると、奉公人一同、このチャンスにと、のみ放題食い放題、日ごろのうっぷんを晴らそうと番頭に申し出る。

なにしろ、この家では、朝飯の味噌汁が薄くて実なし。番頭が、勘定は帳面をドガチャカごまかすことに決め、寿司に刺身、鯛の塩焼きに酢の物と、ごちそうをあつらえる。相撲甚句に磯節と、陽気などんちゃん騒ぎ。そこにケチ兵衛が帰ってくる。
「片棒」の吝嗇は馬鹿息子の間抜けさを引き合いにした笑いが中心である。赤にし屋の主人ケチ兵衛は、身代を築いたケチな旦那。三人息子の誰かに跡目を継がそうかと考える。そこで息子達の金銭感覚を試すために、「もし私が明日にでも死んだらどんな葬式にするか」と質問した。

長男の金蔵は、立派な葬式を出すべきだ、と言う。通夜は二晩行い、本葬は大寺院を借り、50人の僧侶に読経させ、会葬客の食事は折り詰めでなく豪華な重箱詰めにし、東西の酒を揃え、客の帰りには交通費や豪華な引き出物を渡すべきだと言う。ところがケチ兵衛はカンカン。「そんな葬式なら自分もでたい」と呆れさせる。

次男銀蔵は、葬式はイキに色っぽくやるべきだと主張する。町内中に紅白の幕を張り巡らせて、木遣唄や芸者衆の手古舞ではじめ、ソロバンを持ったケチ兵衛そっくりのからくり人形を載せた山車や主人の遺骨を積んだ神輿を神田囃子に合わせて練り歩かせるというのだ。最後に花火を打ち上げて落下傘をつけた位牌を飛ばすといった葬式。銀蔵は怒った父親に部屋から追い出される。

三男銅蔵は質素で倹約家。「死骸はどこかの高い丘に置いて鳥葬にしよう」と言う。さすがに主人が嫌がると、しぶしぶ通夜を出す案を話す。「出棺は11時と知らせておいて、本当は8時ごろに出してしまえば、客への茶菓子や食事はいらないし、持ってきた香典だけこっちのものにすることができる。早桶は物置にある菜漬けの樽を使う。そうして臭い物には塩をまいて蓋をする。樽には荒縄を掛けて天秤棒で前後ふたりで担げるよう運ぶようにする。人手を雇うとお金がかかるから、片棒は自分が担ぐ。でも、一人では担げないからもう片棒は人を雇る。」ここでケチ兵衛が銅蔵を制し、「心配するな。片棒は俺が担いでやる」

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