ウィスコンシンで会った人々 その18 TEDと教育の改革

毎日のようにTED(Technology, Entertainment and Design)というサイトで教育講演を聞いている。「Ideas worth spreading」(拡がって欲しいアイディア)というキャッチコピーで視聴者を惹きつけている。 講演者はノーベル賞受賞者のような人ではない。だが専門性の豊かな若者、クリティカルシンキングに長けた女性、脱北してきた女性、鯨の資源保護活動にあたる人、数学はいかに面白いかを説く教師、など講師陣は幅広い分野にわたっている。筆者もこの講演に共鳴する一人。なにせ飽きさせない内容でしかも味わいがある。

TEDが組織されたのは1996年。Sapling Foundationという非営利団体が運営している。この団体を創設したのは、Chris Andersonという出版社の起業家である。1,658以上の講演がネット上で無料で視聴することができる。TEDでは教育問題に関する講演が多い。それだけに世界的に教育への関心、教育の問題が深刻であることを物語る。特に教育問題ではケン・ロビンソン(Sir Ken Robinson)という教育評論家の講演が目立つ。子どもは創造性(human creativity)や知的好奇心(curiosity for learning)が旺盛であり、それを引き出すのが学校や教師の仕事だ。だが今の学校制度は子どもの創造性を殺してしまっていると主張する。

ロビンソンの講演だが、学校という土壌には子どもが学べる適切な条件が必要であること、特に教師に裁量を与え子ども可能性や創造性をひきのばす土壌を学校に育てることを強調する。そのためには教育委員会が管理統制をしてはいけない。教育は人間的な仕組みであり、機械的な組織(mechanical system)であってはならないという。

ロビンソンはさらに云う。科学や数学の重要性はいうまでもないが、人文(humanities)、芸術(arts)、体育(physical education)の教育も欠かせない分野である。演劇などを取り入れた斬新な教育方法を実施し、子どもにはできるだけ多様なカリキュラムを用意し個別的な対応をすることだという。

是が非でも次の講演を聴いて欲しい。
●「学校教育は創造性を殺している」

●「教育の死の谷を脱するには」
http://digitalcast.jp/v/17388/

●「学習することに革新を」

ユーモアに溢れ、エスプリがきいて深い洞察に富む。講演でロビンソンが語るのは、我々が直面している教育の危機をいかに脱することができるかということだ。

molyneux-ted-conf-071310  TED TalkKen-Robinson Sir Ken Robinson