懐かしのキネマ その116 【地下室のメロディ】

フランス映画界の二大スター、アラン・ドロン(Alain Delon)とジャン・ギャバン(Jean Gabin)が共演し、カジノ襲撃計画の顛末をスリリングに描いた犯罪サスペンスの名作です。英語の題名は【 Baseball Melody】。フランス映画はこうしたサウスペンスものの名作があります。後に紹介する「太陽がいっぱい」もそうです。

Charles & Francis

5年の刑期を終えて出所した老獪なギャングのシャルル(Charles)は、生涯最後の仕事として、カンヌ(Cannes)のパームビーチ(Palm Beach)にあるカジノの地下金庫から10億フランを強奪する綿密な計画を立てます。かつての仲間マリオ(Mario)や刑務所で知り合った青年フランシス(Francis)と彼の義兄ルイ(Louis)も仲間に引き入れ、周到な準備の末に計画を実行に移します。

金持ちの青年を装い、カンヌのホテルに滞在するのがフランシスです。カジノの踊り子と親しくなることで、フランシスは一般客が立ち入れないカジノの舞台裏に出入りする口実を設けます。カジノのオーナーが売上金を運び出す日を狙って、一行は地下金庫を襲撃します。そして10億フランの札束をバッグに詰め、何食わぬ顔でホテルに戻ります。大金を奪い去り完全犯罪は成功したかにみえますが、予想外の事態からフランシスの正体が露見する危険性が高まります。

計画の急な変更を余儀なくされ、フランシスは仕方なく、隠し場所からバッグを持ち出します。そこへ更なる不運が重なり、盗んだ金が人々の目に触れる事態となります。騒ぎ出す人々の中でフランシスとシャルルは、もはや為す術もなく10億フランの札束が水面に浮かぶのを見つめていきます。

懐かしのキネマ その115 【レミゼラブル】

【レミゼラブル】(Les Misérables) は、ヴィクトル・ユーゴー (Victor Hugo)が1862年に執筆したロマン主義(Romanticism)フランス文学の大河小説です。この小説を長い時間をかけて読んだ記憶が甦ります。Misérablesとは「悲惨な人々」という意味です。は2012年12月に公開され、イギリス・アメリカ合作のミュージカル映画ともなりました。2時間半のそれを紹介することにします。

Les Misérables & Jean Valjean

大勢の囚人たちが力を合わせて巨大な船を曳いています。船を曳き終わると、警部のジャベール(Javert)が1人の囚人の番号を叫びます。その囚人の番号は24601で、彼に仮釈放の紙を渡します。こうして囚人のジャン・バルジャン(Jean Valjean)は釈放されます。あてもなくバルジャンは、ある教会に入ると、ミリエール司教(Bishop Myriel) から暖かい食事と寝る場所を提供されます。彼は感謝もせず、無我夢中で食べたあと、食器を盗んでしまいます。翌朝、教会の人に捕まってしまったバルジャンに、司教は慈悲の心で彼を許します。その司教の態度に感動したバルジャンはその後、猛勉強の末、過去を清算し、多くの人が貧しさでごった返していたモントルイユ(Montfermeil)の市長になります。

その街に、かつてバルジャンが囚人時代に世話になったジャベールが訪れます。そしてバルジャンと面会した彼は、素晴らしい市長であると感じます。しかしある時、通行人の馬車を持ち上げたバルジャンの姿を見たジャベールは、囚人時代に丸太を持ち上げたバルジャンの姿を思い出し少し疑いを持ちます。

工場で働く1人の女性がいました。ファンティーヌは(Fantine)です。皆から隠し子がいることを噂されて、クビになってしまいます。そしてお金がなくなったため、自分の娘のために髪の毛、歯、さらには自分の体まで売って、身も心もずたずたになっていきます。バルジャンは貧民街を歩いていたときに偶然ファンティーヌを見つけ、ジャベールに逮捕されそうになっている彼女を助け、病院に連れていきます。ジャベールは、バルジャンを疑ったことを謝罪します。それを聞いたバルジャンは、良心の呵責にさいなまれ、自分が囚人24601であったとジャベールに告白します。

バルジャンは病院へ走り、ファンティーヌの最期を看取りながら、彼女の娘を保護することを約束します。その場に現れたジャベールは、市長がバルジャンだったことに驚きながらも彼を逮捕しようとします。そしてバルジャンは川に身を投げて逃亡します。安い酒屋で働かされているファンティーヌの娘コゼット(Cosette)は、養父母からの過度の虐待に耐えながらも必死に毎日を生きていました。水汲みへ行ったとき、偶然バルジャンがコゼットを見つけます。彼は酒屋の主人にお金を払うと、コゼットを連れていきます。そして夜、ジャベールに見つかったバルジャンは、すぐさま修道院へと逃げ込み、ジャベールをまきます。バルジャンを捕まえることができなかったジャベールは、必ず捕まえると決意を固めます。

時が経ち1832年、学生たちは自由を求めてフランス第一帝制打倒の組織を作ります。そんな学生の一人、マリウス(Marius)は、街で美しい女性を目にします。その女性は、ある男の人と一緒にいました。そこにジャベールが現れ、バルジャンはすぐさま姿を消します。マリウスはコゼットを探し当て、夜な夜な会いにいきます。その姿を悲しく見ていたのが、密かにマリウスに恋をしていた酒屋の娘、エポニーヌ(Eponine)でした。彼女はマリウスを愛することはできないと悟ります。革命の足音が近づくなか、弁護士となったマリウスは帝政との戦いに身を投じていきます。

そのマリウスのグループに、一人身分を隠して入る人がいました。その人はジャベールでした。侵入したジャベールは、逆に内部の子どもに正体を見破られ、拘束されてしまいます。マリウスはコゼットへの手紙を書いて送ります。その手紙を読んだバルジャンは、二人の真実の愛を知り、マリウスに会いにいきます。そしてジャベールと会い彼を許します。

帝政側の総攻撃が始まり、多くの若き革命戦士が死亡していきます。マリウスも銃弾に倒れ、バルジャンは下水道を伝いながら彼を担ぎ、逃亡します。ジャベールはバルジャンの崇高な精神に負けて、自らダムに身を投げます。バルジャンはマリウスを匿い、彼が回復するとコゼットに会わせます。バルジャンは二人の幸せを願うとともに、マリウスに、自分の過去を伝えます。コゼットに伝えることができない彼はその場を去ります。

そしてマリウスとコゼットは結婚式を挙げ、その場にいた酒屋の主人がバルジャンの居場所を知っているというので、すぐさまバルジャンのところへコゼットとともに行きます。そしてバルジャンは修道院で彼らと再会を果たします。再びコゼットと会えたバルジャンは涙し、コゼットに自分の過去を書いた手紙を渡します。そして彼は2人の結婚を見届けて静かに息を引き取り、コゼットとマリウスはバルジャンの言葉を固く守る誓いを立てます。

懐かしのキネマ その114 【真夜中のカーボーイ】

1969年公開のアメリカ映画「Midnight Cowboy」を紹介します。大都会の孤独に流される2人の男性の生き様を描いています。

男性的魅力で富と名声を手に入れようと、テキサス(Texas)からニューヨーク(New York)に出てきた皿洗いだった青年・ジョー・バック」(Joe Buck)。カウボーイスタイルに身を固めた彼は、女を引っ掛けて金を要求します。逆に金をふんだくられます。女こそ名うての娼婦です。

Joe & Enrico

ジョーはスラム街に住むエンリコ・ラッツォ(Enrico Rizzo)という片足をひきずる小男に出会い、売春の斡旋人を世話してくれるという約束で10ドルを手渡しますが、斡旋人は男色を専門としていました。騙されたと知ったジョーは、エンリコを捕まえて問い詰めるのですが、既にエンリコの手には金がありません。その代わり、罪滅ぼしにエンリコは、カモ探しに協力する羽目になります。

二人はエンリコのねぐらである廃墟のビルで共同生活を始めます。ジョーとエンリコの間に奇妙な友情が芽生えます。しかし、エンリコの身は病魔に冒されていました。冬のニューヨークで暖房もない貧苦の生活。エンリコは温暖なフロリダ移住の夢を語ります。ひょんな切っ掛けからジョーの稼業がうまくいきそうになるも、エンリコの病状は次第に悪化していきます。ジョーはゲイの紳士から強奪した金で、エンリコとマイアミ行きのグレイハウンドバス(Greyhound bus)に乗ります。既に身体の自由の利かなくなっていたエンリコは、車中で小便を漏らしていきます。ジョーはバスの停車中に二人の新しい衣服を購入して、自分のカウボーイ装束とエンリコの汚れた衣服をゴミ箱にぶち込み、フロリダの明るい服装に着替えます。しかしエンリコはバスのマイアミ到着を目前に息絶えるのです。

懐かしのキネマ その113 【ハタリ!】

『ハタリ!』(Hatari)とはスワヒリ語(Swahili)で「危ない!」という意味だそうです。1962年に公開された野生動物生け捕りチームの物語です。アフリカのタンザニア(Tanzania)舞台に、雄大な山々を背景に猛獣を生け捕り、動物園やサーカスに売るプロの狩集団と野生動物たちとの駆け引き描きます。

1950年代にアフリカのタンガニーカ(Tanganyika)地方で、モメラ(Momella Game Company)という芸能会社が、高速のトラックや投げ縄、檻を使って動物を捕獲し動物園や動物蒐集家を相手に供給しています。モメラ会社の社長はジーン・マーサー(Sean Mercer)で、他一行は、闘牛士のメキシコ人、ライフル銃の名手ポケット(Pockets)、引退したドイツ人のカーレースドライバーのクルト(Kurt)、元タクシー運転手そして現地人です。

狩の季節がやってきたので、早速メスのカバを捕獲しようとします。クルトとインド人の二人は、カバを追いかける車に乗り、ジーンとその助手はピックアップトラックで投げ縄を用意します。カバが車に追突しインド人の足に大怪我をさせます。一行は治療のためにアルーシャ(Arusha)という街まで5時間の旅をします。

病院に着くと、そこにいたフランス人のチャールズ(Charles “Chips” Maurey)ともめ事になります。彼は、モメラ会社に雇ってもらいたいと言い張るのです。そして自分がインド人に輸血で救える血液型の持ち主であると主張します。ジーンは結局、チャールズを雇うことにします。

宿営地に戻るとそこにイタリア人女性カメラマンのアンナ(Anna-Maria Dallas)がいます。翌日、アンナはバーゼル動物園(Basel zoo)からの手紙をジーンに渡します。バーゼル動物園(Zoo Basel)は、モメラ会社の大の得意先であると主張します。ジーンは不承不承でアンナの滞在を認めるのです。

アンナは二頭の子象を見付けてきます。一人の少年を雇って子象を飼い慣らしたいといいます。子象が彼女を追いかけるニュースがワアルーシャ(Wa-Arushas)の街に広がり、人々はある儀式を催し、そこでアンナを子象の母という意味の「ママテンポ」(Mama Tembo)という名で呼ぶようになります。ようやくアンナとジーンは和解していきます。

ポケットは、ロケットと網を使って猿の群れを捕らえる機器をつくります。その試みは大成功します。残るはカバを捕らえることです。怒り狂うカバを追跡し、数回の失敗のあと、ようやくカバを捕獲するのに成功します。

アンナは、ジーンが自分を一人の女だとしか思っていないと気になります。そしてポケットに手紙を託し,自分はアルーシャを去ることを伝えます。しかし、ジーンは彼女を愛していたので、二頭の子象を連れて、ジーンはアンナのいるホテルにやってきます。その昼下がり、二人は結婚を決めます。ジーンは初夜を迎える部屋を用意すると、そこに二頭の子象が飛び込んできて、部屋をメチャメチャにするのです。二人の驚きはいうまでもありません。

懐かしのキネマ その112 【デルス・ウザーラ】

1975年に公開されたソ連の映画です。監督は黒澤明がつとめた作品です。原題は【Dersu Uzala】といいます。年老いた猟師が酷寒のシベリア(Siberia)のなかで生きる姿を描く名作です。見逃したくない映画です。

1902年、ロシア人探検家で作家のアルセーニエフ(Arsenyev)は、コサック兵(Cossack)6名を率いて当時ロシアにとって空白地帯だったウスリー地方 (Ussuri)の地図製作の命を政府から受け、探検隊を率いることとなります。調査の途中で、森林の中で自然と共に暮らしている天涯孤独のゴリド人(Goldi) 猟師、デルス・ウザーラ(Dersu Uzala)と出会います。翌日から、デルスは調査隊のガイドとして先頭に立ちます。

Dersu Uzala

探検の中、デルスの自然に対する驚くべき体験と知識と六感、独特の哲学に触れたアレクセーエフや隊員達は、次第に彼に心が惹かれ、深い信頼を寄せていきます。デルスは、捨てられた帽子を修理し旅人のために白樺で作った容器に生き延び方のメモを入れておいたりするのです。ある時、二人の隊員が凍った湖で迷い、そこに雪嵐がやってきたとき、彼は二人の命を救います。迅速に藁をくんでシェルターの作り方を教え避難させるのです。疲れ切ったアルセーニエフはシェルターに運び込まれ隊員とともに凍死を免れます。

調査隊はツンドラ(Tundra)の大地で苦しい旅を続けます。そこで出会ったナニ(Nani)という家族の家に招かれ食事や暖を与えられます。次ぎにどこへ行きくのかをデルスはアルセーニエフに尋ねます。「街へ戻るが、一緒に行かないか」とデルスに問いかけます。彼は自分の住み家は森であるとして断ります。翌日、隊員達を鉄道まで送るとデルスは森に消えて行きます。

5年後、新たな調査で再びウスリー地方訪れたアルセーニエフは、地図を作成しながら昔の友に出逢いたいと考えています。ある夜、隊員が老猟師に出逢ったことを伝えます。猟師は調査隊のことを訊いたというのです。アルセーニエフが森の中を探していると、森に入ろうとする猟師を見つけます。喜び勇んで叫ぶと、デルスも応えます。二人は駆け寄りひしと抱き合うのです。二人はキャンプ地で焚き火を囲みながら、別れて以来のことを語り合います。

再びデルスはガイドとして調査隊に加わります。大きな川を筏で横切ろうとしたとき、一行は離ればなれとなります。馬を引き連れた隊員も川を渡ろうとします。アルセーニエフとデルスは筏に捉まりますが、他の隊員は急流に流されていきます。 デルスはアルセーニエフを押して、岸へ向かって泳げと叫びます。川はいっそう急流となります。デルスと筏が急流に呑み込まれそうになったとき、彼は木の枝に飛び移ります。そして一行に木を切り倒し、アルセーニエフを救えと指示するのです。暫くして一行はようやく全員が助かり一息つきます。デルスの写真を撮り、皆が安堵するのです。アルセーニエフは、秋が近づく頃、日記の中でこうした出来事を書き留めデルスとの記憶を残すのです。

一行がさらに森を調査しているとき、デルスは一頭のシベリア虎(Siberian tiger)が忍び寄ってくるのを察知します。隊員は銃で撃とうとするのでデルスは虎を威嚇しようとしますが、さらに近寄ってきます。仕方なく、デルスは虎を撃ち殺すのです。しかし、彼は自分が射殺したことで心を取り乱します。それは、カンガ(Kanga)と呼ばれ人々が敬う森の中の霊が悲しみ、さらに別の虎を差し向けるだろうというのです。デルスは苛立ち、アルセーニエフや隊員たちに、自分に近寄るな、と叫ぶのです。彼は歳とともに視力や感覚が衰え、もはや狩は無理になり森で一人暮らしは出来なくなります。

アルセーニエフはハバロフスク(Khabarovsk)という街にデルスを同行させようと決心します。しかし、街では規則によって木を倒したり、公園で焚き火をしたりすることができません。街の境界付近でも狩はできないのです。アルセーニエフとその家族から慕われるデルスですが、もはやハバロフスクは自分の住む所ではないとアルセーニエフに告げ、森へ戻る決心をします。アルセーニエフは真新しいライフル銃を彼に持たせます。

その後、アルセーニエフは警察から電報を受け取り、一人のゴリド人の死体が見つかったことを知らされます。身分証明になるものはなく、ただアルセーニエフからの手紙だけが見つかったという知らせです。急いでその場にアルセーニエフが着くとデルスが横たわっています。警官がいうのには、誰かが銃の欲しさにデルスを殺したに違いないといいます。墓堀人がデルスを埋葬したとき、彼が使っていた杖を見つけます。そしてアルセーニエフは墓の脇に杖を立てるのです。

懐かしのキネマ その111 【灰とダイヤモンド】

原題は【Ashes and Diamonds】といいます。ポーランドの名匠、アンジェ・ワイダ(Andrzej Wajda)がメガホンをとっています。ドイツ軍が降伏し、ロンドン亡命政府系のゲリラとソ連の後押しを受けるポーランド労働者党との内戦が始まろうとしていた1945年5月の4日間、とある地方都市に集った人々を描写することによって、第2次世界大戦末期のポーランドの姿を映し出す作品です。

時代は第二次世界大戦の最中です。1945年5月7日、ドイツ軍が遂に降伏。物語の始まりは、5月8日のポーランドでのことでした。国内軍系列のテロリストとして活動しているマチェク(Maciek)、アンジェイ(Andrzej)、ドレノウスキ(Drewnowski)は、ソビエトから帰国した共産党地区委員長シュツーカ(Konrad Szczuka)の暗殺を計画していました。

Ashes & Diamonds

マチェクとアンジェイは、街はずれの礼拝堂で車が通るのを待ち伏せします。そこに少女が現れて礼拝堂の扉を開けてくれと頼まれます。しかし、どうしたことか扉は開きません。そこに車がやってきます。二人は車の前に飛び出し、銃撃します。逃げた男を礼拝堂の前まで追い詰め一気に射殺します。

開かなかった礼拝堂の扉がゆっくりと開いていきます。闇に浮かび上がるマリア像が青年たちを見つめています。その後、ホテルでの戦勝祝賀会を訪れた二人は、なんと殺したはずのシュツーカを目撃するのです。銃撃は人違いだったことをマチェクとアンジェイは知ります。

マチェクは、自分には待っている者もこの世に未練もないと思い込みます。そしてマチェクは再び暗殺へと乗り出します。暗殺の機会を待つマチェクは、ホテルのバーで給仕として働くクリスティーナ(Kristina)と恋に落ちます。戦争で家族を失い、刹那的な生活を送っている彼女です。クリスティーナとしばしの逢瀬を楽しんだマチェクは、暗殺業から足を洗い、彼女と新しい人生を歩んでいくことを決意します。この女性との出会いがマチェクの人生を揺さぶり、一時の幸せを味わわせます。

Maciek

新年度迎え、ホテルではショパン(Frederic Chopin)の大ポロネーズ(grande polonaise) が演奏され人々は踊ります。シュツーカには長年会っていない17歳になる一人息子マレクがいます。彼はマチェクによく似た国内軍系列のゲリラ兵グループの一員となっていますが、保安隊に捕まります。その息子マレクに会いに行くのをマチェクが後をつけ射殺するのです。マチェクは逃げようとしますが、労働者党のポーランド兵に撃たれます。そしてゴミ捨て場で倒れるのです。

懐かしのキネマ その110 【地下水道】

原題は【Kanal】といいます。地下の下水道のことです。ポーランド(Poland)の名匠、アンジェ・ワイダ(Andrzej Wajda)監督の作品です。次回紹介する【灰とダイヤモンド】とともに、レジスタンス運動を描いで世界に紹介され、名声を博した作品です。ワイダは、16歳のころから反ナチズム抵抗運動に参加し、父親は「カチンの森虐殺」(Katyn Forest Massacre)に巻き込まれ亡くなります。

Kanal-地下水道

第二次世界大戦末期、1944年のワルシャワ(Warsaw)が舞台です。ポーランド国民軍とワルシャワ市民の抵抗運動=ワルシャワ蜂起(Warsaw Uprising)は、ドイツ軍による容赦ない攻撃で追い詰められ、悲惨な最終段階に追い詰められています。その中の一つ、ザドラ中尉(Lieutenant Zadra)の率いる43名の中隊は事態打開のため、地下水道を通り、市の中心部に出て活動を続けることにします。

夜になって隊員は地下水道に隠れようとしますが、やがて離ればなれになり、ある者は発狂し、自殺したり、またある者は暗闇と悪臭と恐怖心に耐え切れず、マンホールから外に出てドイツ軍に発見され射殺されていきます。

負傷した将校のコラブ(Officer Cadet Korab)と、彼を助けて道案内してきたデイジー(Daisy)の2人も、やっと出口を見つけたと思ったのもつかの間、そこは河へ注ぐ水路でした。一方、先を行くザドラと二人の隊員は遂に目的の出口を見つけますが、出口には頑丈な鉄柵が張られ、爆薬が仕掛けられています。

コラブは、一緒の仲間であるクラ(Kula)は破壊された街外れの下水道から抜け出します。他の隊員達がどうなったのか、とコラブはクラに問いただすと、ずっと前に隊員達を置き去りにした、と答えます。怒り狂ったコラブはクラを撃ち殺し、隊員達を探すために下水道に戻っていきます。

懐かしのキネマ その109 【ホロコーストの罪人】

原題は『Betrayed』です。珍しいノルウェー(Norway)で製作された作品です。ノルウェー秘密国家警察がホロコースト(Holocaust)に加担した実話を題材にしたドラマです。ナチス・ドイツ(Nazis)に協力するノルウェー秘密国家警察によって運命を狂わされていくユダヤ人一家の姿を描いた作品です。ホロコーストはナチス・ドイツで引き起こされただけではないことが分かっています。

第2次世界大戦下のノルウェー。ユダヤ人のブラウデ家(Braude)は、ボクサー(boxer)で息子のチャールズ(Charles)が結婚し幸せをかみしめていました。しかし、大戦が勃発しナチス・ドイツが中立を宣言していたノルウェーに侵攻してきます。

チャールズを始めユダヤ人男性はベルグ(Berg)強制収容所へ連行され過酷な労働を強いられます。残された母とチャールズの妻は、チャールズの帰りを待ちながらも、身の危険を感じてスウェーデンへ逃亡しよう動き出します。1942年11月、ノルウェー秘密国家警察はアーリア系(Aryan)ノルウェー人やドイツ人などと結婚している人を除くすべてのユダヤ人をオスロ(Oslo)の埠頭へと移送します。全部で776名です。停泊していたのは、アウシュヴィッツ(Auschwitz)強制収容所のあるポーランド行きの「ドナウ号」(Donau)という秘密警察の貨物船です。

一行はアウシュビッツの強制収容所へ連行されます。到着したその日にガス室送りになった人たちも少なくなく、この時送られた776名中、生存できたのはわずか38名といわれます。