懐かしのキネマ その66 【ハンナ・アーレント】 

2012年のドイツ(Germany)・ルクセンブルク(Luxemburg)・フランス(France)合作の伝記ドラマ映画【ハンナ・アーレント】 (Hannah Arendt) を紹介します。ドイツ系ユダヤ人の哲学者であり政治理論家であったハンナ・アーレントの思想や伝記を描いた作品です。私はユダヤの歴史に興味がありましたので、この映画を神田の岩波ホールで観ました。以下、映画の要旨です。

ハンナ・アーレントはかつてドイツに生まれ育ちます。ナチスが政権を獲得しユダヤ人迫害が起こる中、フランスに亡命しシオニズム (Zionism)の政治思想家ブルーメンフェルト(Kurt Blumenfeld) に導かれ、反ユダヤ主義の資料収集やドイツから他国へ亡命する人の援助活動に従事します。親独のヴィシー政権(Régime de Vichy)によって抑留されますが、間一髪で脱走し米国に亡命します。その後、ニューヨーク大学(New York University) 教授として、夫ハインリッヒ(Heinrich)や友人で作家のメアリー・マッカーシー(Mary McCathy)らと穏やかな日を送っていました。

Hannah Arendt

1960年5月に、ブエノスアイレス(Buenos Aires)で亡命生活をしていたナチス(Nazis) の元高官アイヒマン(Adolf Eichmann)がイスラエル(Israel) の諜報特務庁、モサド(Mossad)によって誘拐され、エルサレム(Jerusalem)で裁判を受けることとなります、ハンナはニューヨーカー誌(The New Yorker)の特派員として、裁判を傍聴することになります。

ユダヤ人として、ナチスの被害者の1人として傍聴した裁判でしたが、アーレントは被告アイヒマンが大量殺人を指揮したとは思えぬ凡庸さに当惑するのです。他方で裁判での証言から、当時のユダヤ人社会の指導者たちが、消極的にではあったのですが、ナチの政策に協力していたことまで明らかになってゆきます。イスラエルから帰国したアーレントは、『イエルサレムのアイヒマン–悪の陳腐さについての報告』(Eichmann in Jerusalem: A Report on the Banality of Evil)を発表します。膨大な裁判資料と向き合いながら、鬼畜のようなナチ高官と思われていたアイヒマンは、自らの役職を忠実に果たしたに過ぎない小役人であると断定します。同時に、ユダヤ人社会でも抵抗をあきらめたことでホロコースト(Holocaust)の被害を拡大したこと、アイヒマンの行為は非難されるべきだが、そもそもアイヒマンを裁く刑法的な根拠は存在しないこと等をニューヨーカーの記事として掲載するのです。この報告は、大論争を巻き起こしアーレントへの批判が向けられます。

裁判におけるAdolf Eichmann

アーレントの記事はユダヤ人社会の感情的な反発を招き、彼女の著作を知らぬ者も「ナチスを擁護するものだ」と激烈な批判を浴びせます。アーレントは大学から辞職勧告まで受けるのです。誤解を解き、自説を明らかにするため、ハンナは特別講義を行います。「アイヒマンは、ただ命令に従っただけだと弁明した。彼は、考えることをせず、ただ忠実に命令を実行した。そこには動機も善悪もない。思考をやめたとき、人間はいとも簡単に残虐な行為を行う。思考をやめたものは人間であることを拒絶したものだ。私が望むのは考えることで人間が強くなることだ。」講義は学生たちの熱狂的な支持を得るのですが、他方で、古い友人のハンス・ヨナス(Hans Jonas) は彼女に背を向け、教室を後にするのです。

アーレントは記事の中で、イスラエルは裁判権を持っているのか、アルゼンチンの国家主権を無視してアイヒマンを連行したのは正しかったのか、裁判そのものに正当性はあったのかなどの疑問を投げかけます。その上で、アイヒマンを極悪人として描くのではなく、ごく普通の小心者でとるに足らない軍人に過ぎなかったと描きます。

懐かしのキネマ その65 【ホーム・アローン】 

『ホーム・アローン』(Home Alone)は1990年公開で、ひょんなことから家族旅行で置いてきぼりとなった8歳の少年が、2人組の泥棒を撃退するコメディ作品です。

シカゴに住む裕福な家庭で、子沢山の大家族でもあるマカリスター家(McCallister family) は、クリスマス休暇を利用して家族総出のパリ旅行を計画します。旅行出発の朝、停電によってセットしていた目覚まし時計がリセットされてしまい、全員が寝坊してしまいます。家族は慌てて空港へと向かうのですが、屋根裏部屋で寝ていた少年ケビン・マカリスター(Kevin)が1人家に取り残されてしまいます。ケビン頭の回転が早く悪戯好きなので、周りからはトラブルメーカー扱いされています。

Home Alone

ケビンはうるさい家族がいなくなった事を喜び、1人暮らしを満喫します。しかし、段々と寂しくなっていきます。その頃、泥棒コンビ、ハリーとマーヴ(Harry and Marv) はクリスマス休暇で誰もいなくなった家を狙っていました。二人は、事前の情報収集によってマカリスター家にも目をつけていたのです。道中でケビンがいないことに気づいた家族は、家に戻ろうとするも、クリスマス期間中でほとんどの飛行機は満席状態だったので、大人数の移動は困難でした。そこで母ケイト(Kate)は一人別行動を取り、シカゴへ向かう楽団のワゴンに便乗して帰宅を試みます。

泥棒に家が狙われていることを知ったケビンは、家に大人がいるように見せかけ、家を守ろうとします。当初はうまくいき、泥棒コンビに一泡吹かせます。泥棒コンビは騙された報復も兼ねて計画通りマカリスター家に盗みに入ろうとします。また、実はマカリスター家の隣家には怖い雰囲気を漂わせている老人マーリー (Marley)が住んでいたのですが、ケビンは彼に助けを求めようとしません。そして家族がいなくなった原因が自分だと考えケビンは後悔します。

Harry and Marv

クリスマス当日。ケビンは家を泥棒から守るべく、日用品などで家中に様々な仕掛けを作り、泥棒たちを迎え撃つ準備を整える。そして教会へ赴くと自分が悪かったと認め、家族を帰して欲しいと願う。また、そこでマーリーと出くわし、最初は怯えるものの、会話を交わしていくうちに彼への誤解を解く。

その後、ケビンは家に侵入してきた泥棒たちに仕掛けた罠で酷い目に合わせます。子ども相手だと泥棒2人は油断し、狡猾なケビンの罠で泥棒たちを苦しめられます。家を脱出したケビンですが、泥棒たちに捕まってしまいます。その時、隣人のマーリーが現れ、泥棒たちを殴りつけて気絶させケビンを助け出します。翌朝、母親や家族も帰宅しケビンと再会を喜ぶのです。