二文字熟語と取り組む その21 「矜持」

f0200795_15475284 kyouzi-yoko f0186852_834242「矜恃」とも書きます。読み方は「キンジ」か「キョウジ」。「字源」にある「矜恃」の由来の説明はなかなか手強いです。声符は「今」で、意府は「矛」とする漢字です。「矛」は「おおう」という意味から、矛を覆う柄という意味だそうです。侍や兵士を連想させます。

「矜」の訓はあわれむ、つつしむ、ほこるという意味です。「哀矜」といったように人の性情や態度をいう語として使われます。「矜持」はその代表格といえましょう。自分の能力を優れたものとして誇る気持ち、自負、プライドといった意味です。自分に固く自信をも持つさまです。「政治家としての矜持」、「矜持を傷つける」、「矜持を捨てる」といった按配で使われます。

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二文字熟語と取り組む その20 「沽券」

315e8c56f5c2354eb35480f579849507 fig-kajimaya0201-KajimayaHonten o0500033913424925571時代小説を読みますと、商いに関するいろいろな場面が登場します。江戸時代は士農工商の世相とはいえ、大火や災害、飢饉などによって材木や米を扱う新興の大商人が現れます。彼らはやがて豪商といわれるほど大きくなります。呉服と両替商を営んだ三井家や「現金掛け値なし」の店先売りで知られた越後屋、銅の製錬と鉱山開発にたずさわった住友家、酒造、廻船、両替などで繁栄した大坂の鴻池家などです。

徳川綱吉の元禄年間、幕府も諸藩の財政難を示しています。こうした財政難を支えたのが豪商による御用金というか貸し付けでした。これは別名「大名貸し」といわれます。諸藩だけでなく御家人の大半も借金があって、両替屋などに首根っこを押さえられていました。そして吉宗の「享保の改革」が始まります。

鎌倉時代に徳政令が始まったといわれます。債務の免除を命じた法令です。借金とか売掛金を「踏み倒し」することです。返済不能になると100年債にして払うというような取り決めも強制的に決められたようです。利息の支払いは打ち止めにされ、元本の支払いだけとなります。これはまさに「デフォルト」。幕府の苦し紛れの「財政の建て直し策」は緊縮財政を機軸としています。奢侈を戒め服装等に制限を設けたり、金や銀の含有率や形を変える改鋳もします。

土地や家屋などの売り渡しの証文のことを「沽却状」とか「沽券状」といいました。こうした諸権利を売却するとき,売主の発行する証文です。質屋の質札と同じ性質のものです。「沽」の語は、訓読みで売るとか買うという意味です。

「沽券」のもう一つの意味は、人の値うちを表す体面、品位、人品というものです。男らしくあることを前提とした男性の誇りを表現にしたもので、「沽券に関わる」とか「沽券が下がる」という言い回しです。現代は、この使い方が一般的です。「沽券」はなぜか女性には使われません。どなたかその訳を知っている人はおりませんか。

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二文字熟語と取り組む その19 「遁辞」

s821 忍者 t02200293_0240032010725127102新語の粗製濫造が激しい世の中でも、古語や新語、稚語や漢語、慣用語や新造語、新聞語や流行語が目立つ昨今です。特に外来語やその略語が多いようです。

今回の二文字熟語は「遁辞」です。手元の広辞苑によると「責任などを逃れるためにいう言葉、逃げ口上」とあります。その使い方のフレーズに「遁辞を弄する」があります。下々の私たちも、「忙しい」という遁辞をよく使います。時間の使い方が不十分であったり、優先順位などをつけないで過ごすことが「忙しい状態」です。

遁辞の他の例です。「責任を全うしたい」、「全身全霊で励む」などの空虚なフレーズが新聞記事に目立ちます。忍術の一つである「遁術」を使って「遁走」するかのごときです。

これ以上の恥の上塗りをしないで、隠退して「隠遁」生活をする、あるいは、「遁俗」という世俗を逃れて仏門に入る生活のほうがええのではないかと思うのですが、、、

ここまでが昨日まで認めた本日分の駄文です。ようやく首長からの辞職願いが受理されました。

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二文字熟語と取り組む その18 「揶揄」

gatag-00013609 hqdefault 3412最近の東京都政に関する会話では、冗談を言って相手を笑わせ、場を盛り上げることが多いようです。都議会での質疑や記者会見をみていると「お笑い」劇場のようです。つっこみを入れてもボケッとした対応が面白いです。「揶揄」される本人は、怒ったり抵抗することができないのが苦しいところです。「揶」は「邪」から分化した語です。

「揶」も「揄」ももともとは「からかう」という意味の漢字です。このように二重にからかわれるわけですから、「ちとがんばれ!」ともいいたい気分です。このような同じ意味の漢字を並べる熟語は多くあります。「愚弄」とか「静寂」、「喜寿」というように発音の流れや意味を強調するのが目的となります。

「揶揄する」という熟語に似た動詞に「なぶる」があります。おもしろがって人をからかったり苦しめたりすることです。また、もてあそぶように品物を触るという状態を指します。名古屋や京都では「なぶる」をよく使うときいています。「なぶり殺し」といった凄惨な響きの熟語もあります。

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二文字熟語と取り組む その17 「虚仮」

tokyo_map slide_485228_6662636_free 76893083「漢字は国語表記の上からは、国字である。音訓を通じて自在に表現するという方法は、わが国独自のものであり、文化的な成就といってもよい」。これは白川静氏の「字通」の序にある言葉です。「字通」と並んで白川氏が著した「字訓」という辞書は漢字の日本語としての読みをまとめたものです。漢字の意味を調べるとその由来や背景が解って、使うと使うほどのめり込む思いです。

今回は「虚仮」です。うそ、いつわりを指します。仏教からうまれた言葉で、「心の中は正しくないのに外見のみをとりつくろうこと」、内心と外相とが違うことを指します。1) 真実でない、2) 思慮の浅薄なこと、愚かなこと、またはそういう人、とあります。以上は名詞としての使い方です。

次に接頭語のような使い方です。名詞などに付き、見せかけだけで中身のない意を表します。むやみやたらに、あることやそのような状態であることをけなしていうの用いられます。例えば、「虚仮にする」はそうです。「虚仮の行」とは偽りの修業を指し、「虚仮の後思案」は、愚者は必要なときに知恵が出ず、事が過ぎてから考えがでるという按配です。なにか、昨日の都議会の総務委員会の雰囲気です。

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二文字熟語と取り組む その16 「莞爾」

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「字通」は甲骨文から今日の常用漢字まで、漢字を体系化した漢和辞典です。読み物としても時間を忘れるほどのめり込みます。毎回、この辞書を利用してブログを綴っています。

「莞」は、「まるみをおびる」とか「にっこりと」という意味です。「莞」は「いぐさ」とか「むしろ」という意味もあると「字通」にあります。「爾」は、「しかり」「なんじ」などの意味もあります。もともと人の正面形の上半身と胸部に文様をいれた字で、あざやか、華やか、美しいという意味です。

さて、「莞爾」の意味は「にこりとした様子」のこと、悠然とほほえむこととあります。「莞爾たる面もち」「莞爾として死地に赴く」といった使い方です。従って「莞爾として笑う」という表現は、「馬から落ちて落馬した」と同じで、使い方として適当ではありません。
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二文字熟語と取り組む その15 「俯瞰」

a0197899_11175355 tategukou2-01 map1-2何度も自分言い聞かせていることは、「自分で手書きできない漢字は使わない」ということです。難しい熟語や漢字はワープロではすぐに変換してくれるので、あたかも自分は手書きできるかのような気分になるのがいやなのです。意固地な態度です。

時の総理大臣が時々使うのが「俯瞰」という熟語です。「総合的に判断して」 とか「 全体的に見渡して」という代わりにこの熟語を使うと実にかっこええ、と言いたくなります。当人はこの熟語を手書きはできないだろう、とほくそ笑むのです。読者には「鳥瞰図」という熟語はどこかで出会ったことがあるはずです。図を上から見下ろすとか、高い山の頂立って下界を見るようなイメージが浮かびます。

「鳥瞰図」を立体化して横から見ると別な姿もあることを知るはずです。「俯瞰」の「俯」は伏すとか、うつむくという意味の語です。腹ばいになると庶民の姿も違って見えるはずです。「瞰」は、見下ろすという意味の語です。上からと腹ばいになって世相を眺めて判断するさま、それが真の「俯瞰」ということです。

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二文字熟語と取り組む その14 「出自」

src_28292541 images 09d2b29f077251d8eea47d45544cfbde数日前に掲載されたN経紙の熟語作成パズルの問題です。各、独、出、刀の下に付く漢字を入れる問題です。この漢字の下には、伝、首、然、決という自で熟語が作られます。答えは、「自」でした。易しい問題ですが、今回は熟語の「出自」を取り上げます。

「出自」とは、広辞苑によれば、「人の生まれ、出どころ」とあります。少々説明が簡明すぎるので、もっと調べてみました。文化人類学でこの「出自」が使われるとあります。「個人が出生と同時に組み込まれる特定の祖先を共通にする集団を決定する原理」というのです。この説明から、昔の身分社会や封建社会では「生まれ」が重視されることに納得がいきます。今も、貴族とか王族、公爵とか伯爵という世襲制度(Hereditary Peer)が存在するのは、この「出自」によります。

「自」は、いわずもがなですが、「みずから」という意味です。この由来は「人間の鼻」を表すといわれます。鼻と「出自」は無関係のようですが、事物の出どころ、人間でいえば「鼻」がそれにあたるという少々無理くさい解釈はどうでしょうか。人間としての、あるいは人生のある段階での出発点となっている元の所、それが「出自」であり「歴史」です。

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二文字熟語と取り組む その13 説明責任と「公序良俗」

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1981年に最高裁判例がでました。それは、N自動車における女子若年定年制事件に対してです。これは、「男女別定年制を定めた就業規則は、専ら女子であることのみを理由として差別したことに帰着するものであり、性別のみによる不合理な差別を定めたものとして民法90条の規定により無効である」というものです。男女差別は「公序良俗」に反するというものです。

「公序良俗」とは、公の秩序,善良の風俗の略語です。公の秩序とは国家社会の秩序を主眼とし,善良の風俗とは社会の一般的道徳観念を主眼としていわれることといわれます。両者をあえて区別するまでもなく、要はある行為の社会的妥当性のことを「公序良俗」と呼ぶのです。

男女別定年制という法律行為は、公の秩序又は善良の風俗に反するので無効だと最高裁は判断したのです。今ならとっくに違法とされる内容ですが、35年以上も前は男女の差別は酷かったということです。時代と共に公序良俗の観念と実態は変化します。

公の秩序は社会の一般的秩序であり、善良な風俗とは社会の一般的道徳観念を指すと解釈されています。法律や政治的行為というのは社会の一般的な秩序、または社会の一般的な道徳観念に適合していなければなりません。「公序良俗」の原則、特に公序は今回の都知事の公金流用にも照らすべきことです。

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二文字熟語と取り組む その11 説明責任と「粉骨砕身」

image1 28 t02200391_0480085413650440840このところ二文字や四文字熟語が爛漫と花咲くようにニュースに登場しています。その代表は、「説明責任」(accountability)でしょう。Accountabilityという語が英語になったのは13世紀といわれます。大雑把にいって、「行動や結果、製品、決定、政策などの責任について承認をうける必要のこと」とされます。利害関係者に自分の活動や権限行使、内容、結果等を報告することです。しかし、Accountabilityの考えは、政治や交易においてエジプト(Egypt)、ギリシャ(Greece)やローマ(Rome)、バビロン(Babylon)の時代に存在したことがわかっています。

東京都知事というのは、政策の立案から予算の執行まで相当な権限を有する首長のようです。このような立場の人間が、「政治資金」で「クレヨンしんちゃん」の漫画を買ったとか、「回転寿司」で食べたとか、別荘や美術館に公用車ででかけていたなどが報道されています。何度も高額な海外出張をしていることも庶民の感覚からかけ離れているといわれます

「まだまだあるのでは、、」と多くの人々が思っています。こうした都民の「疑心暗鬼」とは、疑いの深さからあらぬ妄想にとらわれることです。まさに、「いもしない暗闇くらやみの亡霊が目に浮かんで、次々と疑わしく恐ろしくなる様」です。

さてこうした疑心暗鬼にとらわれている民に対して、知事の態度はどうかです。「粉骨砕身、都政の運営に努める」というのですから、これはもう「厚顔無恥」、「鉄面皮」といわれても仕方ないでしょう。言葉や態度などが丁寧すぎて、かえって不遜である「慇懃無礼」という熟語もぴたりとあてはまります。語れば語るほど嫌味でがつきまとい、誠意が感じられなくなります。

「骨を粉にし、身を砕くほど努力する」という言葉はきわめて礼儀正しく丁寧ですが実は尊大で、追求をかわして逃げ延びようとする姿勢が見え見えです。別荘を売る、給料を減額する、美術品や流用金を慈善団体に寄付するなどという言葉は、空疎な響きがあります。
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