ルイジアナ州(Louisiana)のナンバープレートには「The Pelican State」とも呼ばれ、ペリカンを背景にしています。「Sportsman’s Paradise」というのもあります。アウトドアの活動にふさわしい風土を表現しています。少々可笑し味があります。どの様な州も地方でも、その風景や人々の居住形態に多様性を示すものです。ルイジアナ州も例外ではなく、他の州よりももっとその特徴を華やかに展開しています。この特徴を探るのが本稿の主たる目的となります。
州都はベイトンルージュ市(Baton Rouge)、最大の都市はニューオーリンズ市(New Orleans)です。メキシコ湾に通じる重要な港湾都市で、工業都市・観光都市としても発展しています。ニューオーリンズのフレンチ・クオーター(French Quarter)と呼ばれる地区には、今なおフランス植民地帝国時代の雰囲気を残していて、大勢の観光客を招いています。通常は、気候も温暖、メキシコ湾でとれる牡蠣や魚が魅力的で、アメリカでも最も人気のある観光地の一つとなっています。
2005年8月にハリーケーン・カトリーナ(Hurricane Katrina)がフロリダ州の南部先端に上陸、ニューオーリンズ市は、フレンチ・クオーターなど陸上面積の8割が水没しました。今はすっかり復旧し賑わいを取り戻しています。
「Sportsman’s Paradise」の名にふさわしく、狩猟、釣り、キャンプ、キノコ狩り、BBQも素晴らしいといわれています。私はまだこの州を訪ねたことがありません。ルイジアナ州南部の海岸は、早い速度で消失を続けている地帯です。その原因として、石油・ガス産業のために掘られた運河によって海水が内陸に入り込み、沼地や湿地に被害を与えているようです。
最初のヨーロッパ人入植者はフランス人(French)かスペイン人(Spanish)でした。「ラテン・アメリカ人」(les Americains)が州北部とフロリダの郡部(Florida Parishes)に定住するようになったのはその後になってからです。居住地の各地域には、ローマ・カトリックまたはプロテスタントの信仰の堅持を特徴づける文化遺産が保存されていました。ルイジアナ系フランス人、特に1700年代にイギリス人によってカナダ南東部から追放されたフランス人入植者であるアカディア人(Acadians)の子孫は、ケイジャン(Cajun)と呼ばれます。やがてケイジャンは、ルイジアナ州南部の大部分を支配するようになります。
ケイジャンフランス語(Cajun French)の方言は、多くの地域(parishes)で話されています。ルイジアナ州南部ではフランス語なまりの英語に聞こえることがあります。さらに、州の北部と南部の両方に文化的な違いが数多くあります。これらは、イタリア語、スペイン語 (Isleños)、ハンガリー語(Hungarian)、ドイツ語(German)、ダルマチアとスラヴォニア語(Dalmatian-Slavonian)のコミュニティで構成されています。ダルマチアとスラヴォニアとは、クロアチア(Croatia)西部、アドリア海(Adriatic)沿岸の一帯を指します。このような背景でルイジアナ州南部には民族が混在する集落があるのです。
ルイジアナ州は、その初頭からアフリカ系アメリカ人が重要な役割を果たしてきました。20世紀半ばまでは、アフリカ系アメリカ人の人口は、彼らの労働によって維持されていたプランテーション周辺の地域に集中していました。現代のルイジアナ州では、アフリカ系アメリカ人コミュニティの大部分が都市部や郊外で非農業の仕事に就くことを選択しています。ルイジアナ州のアフリカ系アメリカ人は社会的、経済的権力につながる伝統的な職業の機会を拒否されてきました。それでも彼らの文化は、州とニューオーリンズの生活と性格に多大な貢献をしてきました。
ルイジアナ州の歴史的集落のパタンについてです。独特のケイジャン文化だけでなく、フランス人、アフリカ系アメリカ人、アメリカ先住民の伝統が混ざり合った、民族的および言語的に異なるクレオール文化(Creole culture)も生み出しました。ルイジアナ・クレオール語(Louisiana Creole)は、フランス語に基づいていますが、フランス語とは異なり、それ自体人々の多様な伝統を反映しています。その後、ヨーロッパ、ラテンアメリカ(Latin America)、キューバ(Cuba)からニューオーリンズへ、またはニューオーリンズを経由する移住により、この州の民族的多様性はさらに豊かになります。その多様性は常に深南部(Deep South)の他の州よりも大きくなったといわれます。
ケイジャン文化の一つの特徴は料理にあります。シンプルな庶民の料理で、三位一体(Trinity)の野菜と呼ばれる玉ねぎ、パセリ、ピーマンを炒めたものがベースとなっています。フランス料理のミルボワ(mirebois)と関係があり、主食として米を多用します。肉や魚介類にチリパウダーの香辛料で味付けするといわれます。その代表が「チキンガンボ」(chicken gumbo)です。ガンボとはオクラのことです。ソーセージやカニを使うそうです。その他に「ジャンバラヤ」(jambalaya)もあります。スペイン発祥のパエリアがルーツで、肉や野菜などを米と炊きます。にんにく、チリバウダー、オレガノ(oregano)をブレンドしこちらもピリ辛の味付けの料理です。
クレオールのことです。クレオールとは人と物の両方に用いられます。人に用いる場合は、人種を問わず植民地で生まれた者はクレオールと呼ばれます。ルイジアナ州においてフランス人・スペイン人とアフリカ人・先住民を先祖に持ち、ルイジアナ買収以前にルイジアナで生まれた人々や子孫、また彼らと関わりのある事物のことを指します。クレオールは、ヨーロッパ系とアフリカ系の混血を指す場合も使われます。クレオールの料理は、イタリアの影響を受けています。トマトを使った赤いジャンバラヤはクレオール独特の料理といわれます。
ケイジャン文化とクレオール文化は、次の稿で詳しく紹介することにします。
(投稿日時 2024年5月14日)