アメリカ合衆国の州を愛称から巡る その32 『Show Me State』とミズーリ州

ミシシッピ川の西、アメリカ中西部にある内陸の州がミズーリ州(Missouri)です。州名の由来は、ミズーリ州はミズーリ川(Missouri River)にちなんで名付けられました。”Missouri” を「ミズラ」と発音することもあります。「ミズーリ」はスー族(Sioux)インディアンの部族名。かつてこの地は、フランス領ルイジアナとして統治されていました。ちなみにこのフランス領ルイジアナは、ミシシッピ川の流域をほとんど含んでおり、北は五大湖、南はメキシコ湾、東はアパラチア山脈から西のロッキー山脈までという広大な領地でした。隣同士、多くの州と接している珍しい州でもあります。

Gateway Arch

ちなみに州の愛称は「ショウミーステート」(Show Me State)で、「証拠をみせよ」といった意味で、簡単には信じないぞ、といった感じです。ミシシッピ川とミーズリ川が合流する地点にあるのがセントルイス(St. Louis)です、毛皮の交易所として発展してきた街。19世紀には西部への開拓者達の出発地点として賑わってきて、ゲートウエイ・アーチ(Gateway Arch)がその面影を残しています。ここは国立公園となっていて高さ192メートルのモニュメントの一番高い所にのぼることができます。ミズーリ州最大の都市はカンザスシティ(Kansas City)です。伝統的に畜産業が盛んな地域のために、名物料理はカンザスシティ・スタイルのバーベキュー(BBQ)で、100軒以上のバーベキューレストランがひしめくといわれます。BBQはウッドスモークの香りが漂い低温でじっくり焼き上げるのです。

Route-66

歴史あるルート66(Route 66)は 、マザーロード(Mother Road)と呼ばれる伝説のハイウエイです。ミズーリ州を 480 キロメートル以上に渡り走っていました。大陸を横断するこの道はアメリカ西部の発展を促進した重要な国道であり、映画や小説、音楽などの中に多く登場しました。中でも代表的なのは1960年から1964年にかけてCBS系列で放送された『ルート66』です。日本では1962年から122回にわたった放映され大人気でした。ドラマ中、シボレー・コベット(Chevrolet Corvette)に乗ったイ2人のエール大学(Yale University)に通う若者が冒険を求めてアメリカ中のハイウェイを走っていくというストーリーでした。しかし、州間高速道路(Interstate)の開線で今は通勤道路となっています。

アメリカ合衆国の州を愛称から巡る その31 『Magnolia State』とミシシッピ州

ミシシッピ州(Mississippi)の成立過程です。16世紀初頭にチカソー族(Chickasaw Tribe)やチョクトー族(Choctaw Tribe)などの先住民が暮らすこの地にヨーロッパ人がやってきました。スペインの探検家でコンキスタドール(Conquistador)、征服者と呼ばれたエルナンデ・ソト(Hernandez Soto)らです。彼らは金を目指しフロリダを出発したのですが、その途中にこの土地を訪れます。ミシシッピの地は、他の州と同様にヌーベルフランス(New France)と呼ばれるフランスの植民地でした。フランスは先住民族たちと友好な関係を築きながら植民地を広げています。

Magnolia

その後1755年に起こるフレンチ・インディアン戦争では、フランスはインディアンと組んで、イギリス相手に戦うことになるのです。結局、1760年にフランスが降伏して戦争は終わり、1763年のパリ条約によってミシシッピ川から東側に位置するこの地はイギリスへと割譲されまます。

現在の州の経済の柱は農業です。主な農産物は綿花や大豆です。綿花栽培は古くから行われていて、綿花で財を成した白人大富豪も多かったようです。この成功の裏には黒人奴隷労働者の存在がありました。今でも、ミシシッピ川の広大なデルタ地帯では綿花の栽培が盛んです。他にもキャットフィッシュ(catfish)の養殖、養鶏なども主要な産業で、ミシシッピ州は養殖や農業州であるといえます。

Map of Mississippi

ミシシッピは歴史的にみても、黒人解放運動の活発な地域でもあります。19世紀後半のジム・クロウ法(Jim Crow laws)および1890年の新憲法の成立によって、ミシシッピ州はディープサウス(Deep South)に典型的な形で、事実上黒人の選挙権を取り上げるのです。ジム・クロウ法とは、「黒人の一般公共施設の利用を禁止、制限した法律」を総称したものです。ジム・クロウは黒人隔離を指す言葉としても使われるようになりました。過剰な投票税を課すなどして、黒人が投票するのを防止しようとしたのもこの法律です。

Elvis Presley’s Birthplace

州都および最大都市はジャクソン市(Jackson)です。州のニックネーム『Magnolia State』(木蓮の州)。木蓮は中国原産の植物ですが、温暖な気候であるアメリカ南部でも親しまれています。日産自動車が2003年、同州のキャントン(Canton) に工場を建設し、トヨタ自動車が2010年にブルー・スプリングス(Blue Springs)で生産を開始したのもミシシッピです。労働力に恵まれていることが建設の条件だったようです。

アメリカ合衆国の州を愛称から巡る その30 『Land of 10,000 Lakes』とミネソタ州

私がミネソタ(Minnesota)という地名を知ったのは「ミネソタの卵売り」という流行歌です。1950年代の頃で歌っていたのは暁テル子という歌手です。この曲名の由来を調べましたがよくわかりません。ミネソタに卵売りという職業があるのかも定かではありません。ミネソタは養鶏で盛んであるというのもきいたことがありません。寒いので養鶏には向かないはずです。

Map of Minnesota

もう一つのミネソタのエピソードです。元札幌ルーテル教会の宣教師とご家族をミネアポリスに訪ねたときです。外に立っているとひどく蚊が多いのです。大小無数の湖が点在するために蚊が発生するのです。人々は蚊のことを「州の鳥」(State Bird)といって笑っていました。州の愛称は「一万の湖がある州」(Land of 10,000 Lakes) と呼ばれています。こうした湖は最終氷河が後退した跡に残したものです。もう一つの愛称は「ジリスの州(Gopher State)」という可愛い野生動物にちなんだ呼び名です。

Downtown Minneapolis

中西部では、イリノイ州シカゴとミシガン州デトロイトに続いて大きい都市が、ミネソタ州のミネアポリス(Minneapolis)になります。ミネアポリスは州都セントポール(Saint Paul)の西に位置する隣りの街です。ミシシッピ河を挟んで発展してきた二つの大都市が隣同士にあり、2つの都市を合わせて双子の街、ツインシティー(Twin Cities)とも呼ばれています。ミネアポリスは次々と再開発が進み、新しい施設などが建ち並ぶ経済の中心です。それに対してセントポールは、ヨーロッパの都市に似て旧市街地区があり、ビクトリア期後期のような数多い建築が保存状態良く、残っています。少し古いですが2015年の調査によると、ミネアポリスとセントポールは最も識字能力が高い人々が暮らす街であるといわれます。

Mall of America

ミネソタ州は古くから農業、鉱業が盛んな州でしたが、近年はハイテク産業の進出などもめざましいようです。ミネアポリス・セントポール国際空港 (MSP) の近くに位置する「モール・オブ・アメリカ」(Mall of America)は、全米最大級のショッピングモールです。4つのデパート、50のレストラン、520の専門店が巨大なモールの中に集合しています。ちょうど中心に、遊園地があるのですから、その大きさが分かります。キッズテーマパーク「レゴランド(Lego Land)も楽しいです。