国政選挙の予測 その八 投票率

注目

「若者の投票率はなぜ低下したのか」という津田塾大学での研究を引用してみます。若年層と高齢層の投票率の差は、日本では1970年代は10%程度であったものが、1990年代には20~30%程度、2010 年代は30~40%程度に拡大しています。若者が投票に行かなくては、ますます政治に若者の意見が反映されなくなってしまうのは確かです。なぜ若年層の投票意欲が低いかです。それには「政治的有効性感覚(Political Efficacy)」の観点が欠かせないといわれます。政治的有効性感覚とは、若者は「自分の一票に影響力がない」と感じることです。ここが高齢の有権者の意見と異なるところです。

 有権者は、自分の地域の政治的・経済的状況が変化しつつある時は、政治的有効性感覚の有無にかかわらず、投票という行動に移ると考えられています。このことは特に高齢者にいえることのようです。帰属意識の高い若者が多い地域では、若者の政治的有効性感覚が高く、多くの若者が投票に行くともいわれています。

 公益財団法人「明るい選挙推進協会」の調査によれば、「自分には政府のすることに対して、それを左右する力はないか」という質問に、「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と答えたZ世代の割合は約7割に上っているとあります。これは一種の「政治的無力感」といえます。Z世代とは、1990年代半ばから2000年代に生まれた世代」を指します。同じ調査では、国会議員・地方議員・首長について、Z世代は「全く信頼できない」と「あまり信頼できない」と回答した割合は7割近くに達しています。

投票意欲

 アメリカの著名な政治学者であるリップハルト(Arend Lijphart)は、選挙における低投票率は問題視しなければならないと主張しています。その理由の第一は低投票率を「不均衡な投票率の結果だ」と指摘するのです。不均衡な投票率によって政治的影響力の差異を生み出していると主張します。金持ちや高学歴層などの「恵まれた人たち」はさまざまな形で政治に関与し、政治的な影響力を行使しがちです。それに対して、「恵まれない人々」は政治的な影響力をそれほど行使しない傾向があり、その結果として投票という政治参加には「階級バイアス」がかかっているというのです。

 Z世代も高齢者も含め、すべての有権者が政治に対する関心を保ち主権者としての意識を有するためには、政治に対する一定の知識も必要と考えます。こうした必要性は、若者に対する学校教育にとどまらなく、有権者となった人々に対しても、継続的な主権者教育への機会を提供し、政治に対する知見をさらに深めることを目指すべきでしょう。
(投稿日時 2024年10月26日)