アメリカの学校は今 その二十一  Assets School

0 img_5680-e1435167747649 paul-and-volunteers再び、ホノルル市内の学校の紹介です。ホノルル国際空港や真珠湾(Pearl Harbor)の近くにあるアセッツ・スクール (Assets School) を紹介します。この学校も「Kamehameha」 と同様に私立学校です。特に書字や読字に困難を抱える生徒が多数学んでいます。興味あることに英才児もいます。こうした生徒が普通の生徒と一緒に学ぶ授業のことを一体化教育ーインクルーシブスクール(Inclusive school)といいますが、この学校は一体化教育を地でいくところに特徴があります。

もともとこの学校は真珠湾にある基地に住む子供たちの学校でした。やがて誰もが入れる学校となりました。この学校には幼児教育から高校までの課程があります。このことを略して「K-12」、つまり幼稚園から高校までということです。生徒全員で350名の小さな学校です。

この学校のマスコットは海亀(honu)です。広い海を悠々と優雅に泳ぎ、あくせくしないで、いつも冷静に行動しようとする亀に学ぼうとする姿勢を意味しています。

小さい学校であるが故に、学校経営には企業や団体、同窓生、保護者などからの寄付が大事です。寄付の呼びかけには、「車を提供してください」、「コンピュータを寄付してください」というのもあります。学校を支えるのは地域であることは、校庭に現れています。「この木なんの木、気になる木、、、」というコマーシャルソングにあるガジュマルのような大木の下にすばらしい木製の遊具施設が並んでいます。校庭はもちろん全面芝生です。

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アメリカの学校は今  その二十   Elizabeth Hall International School

franken2 reading_circle img_1146_2Elizabeth Hall International Schoolは、ミネアポリス(Minneapolis)のダウンタウンの近くにある典型的な小学校です。典型的という意味は、多様な人種の子供が学ぶこと、その多くは経済的に恵まれない子供が多いということです。全児童の7〜8割をアフリカンアメリカン(African Americans)で占めています。

学校のスタッフは、子供の家庭状況などを反映して教師の他に言語治療士、(Occupational therapist: OT)、Physical therapist: PT)、音楽、学校心理士、矯正体育教師、メディアスペッシャリスト (Media specialist)がそれぞれ1名、ソーシャルワーカー(Social worker)が2名常駐しています。

不適切な行動や言語の問題を引き起こす児童もいます。私どもがこの学校を訪問したとき、事務室の前で2名の男児が立たされていました。後で理由を尋ねると女性教師に対する侮蔑的な発言をしたとのことでした。

そうした児童を一時待避させるタイムアウト室 (Timeout)もあります。タイムアウト室とは珍しいです。この教室の大きさは、幅と奥行きが3m*10m位です。窓が1箇所あり室内の中央に児童用の椅子が1脚置いてありました。ここで「しばし心を静め反省、、」させられるというわけです。

教師の不足が続き、介助教師 (Teacher aids)を雇っています。その数は11名でこれは全教職員の1/3にあたるそうです。3-4年生の混合クラスの授業では4人の教師(主1、サブ3)で7人の児童を指導しています。特別支援教育用の教室には教師の他に介助教師が1人、言語療法士も1人常駐しています。

時間割の中に「Rules」という科目もあります。日本でいう「基本的生活習慣」に相当するようです。社会的スキルの指導が目的のように感じられます。日本の道徳教育とは、質的に異なるようでした。ソーシャルワーカーは、子どもの不適切な行動に対する停学通知書の作成なども行うというのですから、随分と我が国とは事情が異なるものです。

児童の指導で苦心している学校のようですが、最近、国際理解教育の活動が活発となり、国際バカロレアプログラムを実施するという教師の努力が伝わる話題で注目されています (International Baccalaureate Primary Years Programme: IB-PYP) 。学校の新しい試みは生徒のダイヴァーシティによってできるのでしょう。

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アメリカの学校は今  その十九 Hiawatha Community School

mrt cargill-1459773566 ty8431926040023ミネアポリス市(Minneapolis) はミネソタ州(Minnesota)一の大都市。隣が州都セントポール市(St. Paul)でこれを併せて双子の町(Twin Cities)と呼ばれています。プロ野球のチーム名がTwinsですね。昔の氷河でできた多くの湖が点在しています。湖が多いので蚊が無数に飛んでいます。そんなわけで、「」ミネソタの州鳥はモスキートだ」という冗句があります。

ミネアポリスはミシシッピー川(Mississippi River)とミネソタ川(Minnesota River) が合流し、昔から穀物の交易で栄えてきました。この町はかってのノースウエスト航空 (Northwest Airline)や精密機械のハネウエル(Honeywell)等の本社がありました。ノースウエスト航空はデルタ航空(Delta Airline)となりアトランタ市(Atlanta) に本社があります。ミネアポリスはデルタ航空のハブ空港となっています。ハネウエル本社はニュージャージー州(New Jersey)に移りました。今は、穀物市場で有名やカーギル (Cargill)の本社がミネアポリスの郊外にあります。

町の中には大きな製粉工場などが目立ちます。1860年頃から主に北欧からの移民がやってきます。気候が似ていたからです。そのほか、オランダやドイツ、イタリアなどからも多くの移民が定住して発展してきました。その後アフリカ系やアジアの人々も職を求めて定住しました。

Hiawatha Community Schoolの話題です。「Hiawatha」は先住民族の一つであるモホーク族(Mohawk)の言葉で「戦士」という意味です。モホーク族は農耕民族ともいわれ、モホーク刈りと呼ばれる独特の髪型をしていたようです。さて、学校には幼稚部から5年生約300名が学んでいます。学校のあたりは、いろいろな民族の人々が住んでいます。貧しい家庭の子どもたちは、朝食と昼食の無料給食サービスを受けています。私たち見学者も朝食をいただく機会に恵まれました。大きなハンバーグ、フレンチフライ、牛乳です。ケチャップの袋が山盛りになっています。子供たちには、まずは腹を満たしてから学習させようとするのです。子供の中には白人もいます。服装も貧しく髪をとかしていないためか、すさんだ印象を受けました。
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アメリカの学校は今 その十八 サクラメントの学校(2) A. Warren McClaskey Adult Center

mcclaskey_0 delta-king-old-sacramento static1-squarespaceカリフォルニアの州都サクラメント (Sacramento) の人口は47万くらい。中都市といった規模です。ここの学校区教育委員会はUnified School Districtと呼ばれています。周辺の小さな町を統合して教職員、施設設備、予算を管轄しています。今回紹介するサクラメント市内の学校は発達障害者の成人教育機関、「A. Warren McClaskey Adult Center」です。恐らく、Warren McClaskeyという市民が教育委員会に多額の寄付をして造られたものと思われます。

このセンターは教育委員会が運営する発達障害者の職業訓練教育機関です。高校教育の延長となっていて、生涯教育施設ともいわれています。アメリカでは幼児教育から職業訓練にいたる教育は全て教育委員会の管轄です。ほとんど無料で職業訓練のサービスを受けることができます。

障害のある生徒も通常の高校で学習するのですが、それだけでは職業上の自立に至らない場合が多いのです。そのためにこうした訓練機関が存在します。一市民として地域社会で生活するためのスキルを身につけ、仕事について自立的な生活ができるように支援されるのです。

センターではいろいろな訓練プログラムを観察できます。例えばレストランのウエイターやウエイトレスになるための訓練です。清潔な服装、テーブルの用意、あいさつの仕方、座席への案内、注文の取り方、サービスの声かけ、チップの受け取り方、レジの扱い方などなど興味ある訓練を受けています。私たち教員一行もテーブルに座らされて訓練に参加し、おかげで無料の昼食をいただきました。訓練の成果でしょうか、生徒の対応も堂に入っておりました。チップも渡しました。

訓練の合間に余暇時間を過ごす空間があります。センターの側にある住宅を借りています。生徒は三々五々集まっては、珈琲を飲んだり、本を読んだり、ゲームをして余暇を楽しみます。そこの事務室には、訓練生一人一人の訓練プログラムのファイルがあります。個別の就労計画といった内容です。複数の教職員が訓練生の能力やスキルに合ったプログラムを作りそれに基づいて指導しています。ジョブコーチ (Job coach) はこうしたセンターでは欠かせない存在です。
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アメリカの学校は今  その十七 サクラメントの学校(1)

b95ac3fa61460082b560e1ba0bb8cf3cbcf487ba_600 maxresdefault sacramentoサンフランシスコ (San Francisco)から車で金門橋 (Golden Gate Bridge)を渡り北上するとブドウ畑が広がるナパ・バレー(Napa Valley)があります。景色は素晴らしくワインも美味しいです。そこから東へ向かうと州都のサクラメント(Sacramento)に着きます。サクラメントは元々ゴールドラッシュで人々が集まって発展したといわれます。穀物の集散地としても栄え、今も教育、文化、商業の中心となっています。西部開拓時代の街角は保存されていて、そこの店に入ると映画の世界のような気分を味わえます。

サクラメントの学校を兵庫教育大学の教師である大学院生10名とで訪問したことがあります。お世話になったのはカリフォルニア州最高裁の判事をしていたチャールズ・コバヤシ(Charles Kobayashi)という方と奥様です。お二人とも日系2世です。

西海岸に移民した日本人は皆懸命に働き、子どもたちに教育を授けて今の地位を獲得したことが伺えます。コバヤシ氏はその見本のような方です。今も多くの日系アメリカ人が活躍しています。コバヤシ氏はサクラメントの日系メソジスト教会 (Sacramento Japanese United Methodist Church) の長老をされたり、日系人のためのグループホームの建設で尽力されていました。奥様の兄弟は、かつてヨーロッパ戦線でハワイの日系アメリカ人で構成された第442連隊戦闘団(442nd Regimental Combat Team)にて活躍したそうです。

コバヤシご夫妻の娘であるLaura Ashizawaさんは、かって私が勤めていた国立特殊教育総合研究所を訪ねてこられたことがあります。それから今までご両親とも交際が続いています。彼女は隣の郡の特別支援教育の教師をしていました。お二人の息子さんが発達障害の診断を受けています。

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アメリカの学校は今  その十六  フェアファックス学校区

special-needs the-long-history-of-fairfax-county-public-schools-bojbakg still0706_00017_1467848904722_1518378_ver1-0首都ワシントンDC(Washington D.C.)の西南を流れるポトマック川 (Potomac River) を渡るとヴァジニア州(Virginia)に入ります。ポトマック川はチェサピーク湾 (Chesapeake Bay) に流れます。ヴァジニアの州都はリッチモンド(Richmond)といいます。もともとアメリカ南部連合 (Confederate States of America), 南軍の首都です。ヴァジニア州最大の学校区フェアファックス郡(Fairfax County Public School: FCPS)の学校が今回の話題です。

フェアファックス学校区の生徒数は186,000人。全米の学校区で12番目に大きな規模です。生徒の人種背景ですが、白人とそれ以外の民族は約半々となっています。28%の生徒が無料か割引の給食を、17%の生徒が英語補助授業を、13%が特別支援教育を受けています。矯正教育を含むオータネティブ・スクール(Alternative schools)が3カ所、そして特別支援教育センターが8カ所あります。

首都の隣だけにフェアファックスには、日本企業も沢山進出しています。そのせいか日本語教育も盛んに学校で行われています。時には、企業からの寄付がこうしたプログラムを支えています。企業や地元の団体などから金品の寄付を受けて、学校のプログラムを展開するのはアメリカの学校の特徴の一つです。校長の役割も大です。校長というのは、校務の統括の他に地域にある企業、ライオンズ(Lion’s Club)やロータリークラブ(Rotary Club)などをまわって学校の活動を紹介し寄付を集めるのも大事な仕事です。

どの学校にもコンピュータは整備されて、授業や個々の生徒の学習に使われています。しかもあらゆるコンピュータも無線ランでつながっています。電子黒板やプロジェクタを使うのも日常的な姿です。どのクラスにも電子黒板が設置されているのは、この機器の効用を教育委員会は知っているからです。黒板がコンピューターのタッチパネルとなるのですから便利です。

校長などからの連絡は、メールや電子掲示板でやってきます。いつもネット上での記事を確認するのがフェアファックスの教師です。職員室というのはありません。

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アメリカの学校は今  その十五 ニューヨーク市立第165小学校

report-complaints-about-violence-in-new-york-schools-are-at-an-all-time-high larger 1280px-friends_meeting_house_-_new_york_city兵庫教育大学にいたとき、教員の大学院生を連れて北米のいろいろな学校を視察してきました。ニューヨーク市にも行きました。ニューヨーク市立大学 (Queens College of The City University of New York: CUNY) の近くにある市立第165小学校が今回の話題です。

ニューヨーク市は、「4人に3人が移民であり2人に1人が英語を母国語としない」といわれています。その大半は移民がです。ニューヨーク市は、アメリカ最大の生徒数を擁する巨大な学校区 (New York City Department of Education: DOE)です。学校は小学校から高校まで1,800校位あります。ニューヨーク市教育委員会のサイトは12か国語で作られています。日本語のはありませんが、、、

第165小学校は塀に囲まれ、警官が常時巡回しています。このような光景は珍しくはありません。大都会のダウンタウンにある学校はたいていの場合、公立学校です。そして多くの子どもは複雑で貧しい家庭環境にあるようです。

ほとんどの小学校で英語の補習授業プログラムが用意されています。第165小学校もそうです。アメリカ社会で最低限必要とされる基礎能力を習得させるためです。そのための予算や教員の確保がいつも話題となります。学校内にはネットワークに接続されたコンピュータが揃っています。ITリテラシーは小学生にも強調されるカリキュラムです。どんなに貧しい子どもが通っている学校でもIT関連の設備はしっかりしています。ITのスタッフも必ず常駐しています。それと図書館の充実も目立つことです。

第165小学校の生徒数は760名。教師と生徒の割合は10対1。アジア系が53%, ヒスパニック系が19%となっています。無料か割引の給食を受ける生徒は69%とあります。教師も様々な民族の背景を有しています。案内してくれた一人の教師は自信に溢れた態度でした。このとき残念ながら生徒の姿は写すことができませんでした。

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アメリカの学校は今  その十四 チャーター・スクール(Charter Schools)

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WASHINGTON, DC - FEBRUARY 20:   (FILE PHOTO)  Shannon Woisnet, 7-years-old, from Cleveland, Ohio, holds up a sign in support of school vouchers in front of the U.S. Supreme Court February 20, 2002 in Washington, DC. The U.S. Supreme Court, in a 5-4 ruling, upheld the Cleveland, Ohio school voucher program June 27, 2002 which allows families to use publicly financed vouchers to send children to religious schools.  (Photo by Mark Wilson/Getty Images)

WASHINGTON, DC – FEBRUARY 20: (FILE PHOTO) Shannon Woisnet, 7-years-old, from Cleveland, Ohio, holds up a sign in support of school vouchers in front of the U.S. Supreme Court February 20, 2002 in Washington, DC. The U.S. Supreme Court, in a 5-4 ruling, upheld the Cleveland, Ohio school voucher program June 27, 2002 which allows families to use publicly financed vouchers to send children to religious schools. (Photo by Mark Wilson/Getty Images)

charter 08charter-600今回は、幼児から15才の児童生徒を対象とした教育をしているチャーター・スクール(Charter Schools)のことです。チャーター・スクールというのは、いわば半官半民のような運営の学校です。民間の人々が学校の設立に関わり、州政府がこれを認可するのが普通です。カリキュラムは独自で特色のあるものとするのが売りです。州政府が決める教育課程や規定に拘束されないという特徴があります。いわば特区の学校といえます。「Charter」とは「契約」といったような意味です。

コロラド州にあるNew Visions Charter Schoolのモットーは「Chance to Grow」。成長への挑戦とでもいいましょうか。現在は州からの援助を受けています。公立学校の場合、生徒一人当たりの州からの補助は9,000ドル、チャーター・スクールの場合は6,000ドルあまりとなっています。従って、多くのチャーター・スクールは地元からの寄付にも頼っています。この学校の授業料は幼稚園を除いて無料となっています。カリキュラムに特色があるために、公立の校区にあってもこの学校を選ぶ市民多く、入学はくじ引きとなっています。

この学校のカリキュラムは、子供に高い学力をつけさせるということに尽きます。そのため、Core Knowledgeというアメリカ史を中心としてアメリカの地理、歴史、文化を系統的かつ総合的に教えることを謳っています。しかも一クラスサイズは20名以下で運営されています。市民の学校に対する期待も高く、ボランティアも多く学級に入っています。自分たちで創った学校という市民の意識の高さが感じられます。

通常、チャーター・スクールは3年毎に教育成果が評価されます。成果の評価は、教職員に対して、教育の質の向上という動機を与えています。評価が低いと州からの補助が減らされたり改善勧告がでたり、廃止に追い込まれたりします。

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