木枯らしの季節 その四 情報収集の貧困さ

大統領選挙後の話題は尽きません。テレビや新聞に登場する「評論家」、「有識者」はこぞって「こんなはずではなかった、、」と歯切れが悪いコメントです。「トランプさん、どうして勝ったんですか?」と困惑しているかのようです。

20141208201915 18005378_bg2 26b78ca89dbcfeb091c506fb416b3a1eこうした予想はずれは、外国の報道ソースに頼る現地の日本人特派員や日本大使館などから伝わる情報を鵜呑みにしていた結果です。特に責任を問われるのが日本大使館の情報収集の貧困さ。駐米大使は更迭されても仕方ありません。

オハイオ州やミシガン州は工業の盛んなところ、ウィスコンシン州やペンシルバニア州は農業が主要な産業です。いずれも労働者が多いのです。特派員や記者は自分の足で周りの人々の意見を集めなければならなかったのです。

ハイテクが盛んなカリフォルニアは単純労働者の雇用を奪っているといわれます。農業には多数の人出が必要なのです。フロリダも農業が中心の州です。多くの高所得者が退職して暖かい土地で余生を送る州でもあります。65歳以上の人々はトランプに投票しています。南部諸州はカトリック教会やプロテスタント教会の信者が多く、聖書地帯 (Bible Belt)と呼ばれています。伝統的保守主義(Traditional conservatism)が強いのです。

現在のアメリカの経済状況のことを多くの経済学者が「ああだ、こうだ」と指摘しています。日本車の優秀さは30年以上前から認められています。韓国の高い技術や中国の低賃金による生産性はアメリカの脅威となり、多くの雇用を国内で失ってきました。アメリカの劣等産業に従事する労働者は自由貿易に耐えられなくなっているのです。

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木枯らしの季節 その三 ”Stunning Upset”

大統領選挙後の話題を有力紙や放送局のヘッドライン (Headline)から考えてみました。私の大分錆び付いた英語の勉強にもなります。

Republican vice-presidential nominee Gov. Mike Pence, right, and Democratic vice-presidential nominee Sen. Tim Kaine speak during the vice-presidential debate at Longwood University in Farmville, Va., Tuesday, Oct. 4, 2016. (Andrew Gombert/Pool via AP)

Republican vice-presidential nominee Gov. Mike Pence, right, and Democratic vice-presidential nominee Sen. Tim Kaine speak during the vice-presidential debate at Longwood University in Farmville, Va., Tuesday, Oct. 4, 2016. (Andrew Gombert/Pool via AP)

249902cd-s img_0f23d60eaed166b1481db8676a1dd87139624最初はNew York Times紙です。開票結果の終盤では次のような見出しとなっています。
Trump is closing in on a stunning upset.

“Stunning” とは、「気絶させる」とか「ぼうっとさせる」、「唖然とさせる」という強い調子の単語です。続いて“Upset”が続きますが、「予想を覆す」とか「転覆する」、「気が動転する」という意味です。“Upset”は怒る、という意味で使われることが多いですが、この場合はその意味ではありません。とまれTimes紙の編集等らも開票結果に相当驚いたことが伺えるような表記です。

次にWashington Post紙です。
Clinton, Obama urge backers to accept Trump’s victory.

トランプ(Trump) の勝利を潔く受けとめよう、というニュアンスです。結果が出た以上それに従うのが民主主義というわけです。

ニュース専門放送局であるCNN (Cable News Network)は次のように報じています。
Hillary Clinton lost the election but is winning the popular vote.

クリントン(Clinton) は獲得選挙人数では破れたが一般投票の総得票数では勝ったという意味です。勝者総取り方式(Winner-take-all)という選挙方法では、こうした逆転現象が起こります。2000年の選挙でも民主党候補のゴア(Al Gore)が総得票数で共和党のブッシュ(George Bush)に勝ったのですが、獲得した選挙人数では足りませんでした。

今日のTimes紙の見出しは次のようです。
Clinton and Obama Plead for Unity as Trump Gets to Work.

クリントンとオバマは、新しい大統領の始動のために協力しようと呼びかけています。”Plead”とは擁護するとか弁護するという意味です。

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木枯らしの季節 その二 大統領選挙の主人公

ウィスコンシン大学時代、奨学金も底をつき、蓄えが少なくなってきたのでいろいろなアルバイトをして糊口を凌ぐことになりました。

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会話といっても実に他愛のない内容です。卑猥な言葉、汚いスラング、人種差別語が混ざる全く歯牙にかけない話題ばかりです。海外から来る院生に対しての羨望や引け目などもあるようでした。

さる10月26日に「常民」という話題を掲載しました。知識人とか文化人とは対極的な生活様式をもつのが「常民」。一般に庶民、民衆という意味です。文化の基底を担う人々の意を込めて柳田国男は「常民」を用いたといわれます。「常民」とは普通の人、エリートでない人という意味です。

今や大卒といっても安泰な地位を維持できるわけではありません。レイオフが待っています。今度の大統領選挙の主人公はこうした「労働者」とか大卒の経歴がありながら仕事を失い木枯らしにさらされるアメリカの多くの「常民」です。「常民」が大富豪を大統領に選ぶところにアメリカという国の不可思議な一面があります。

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木枯らしの季節 その一 山口誓子

300px-battle_of_sakhalin tomariorutantetu 一段と寒くなってきました。

海に出て木枯らし帰るところなし

この句は詩集「遠星」に所収されている山口誓子の作品です。昭和19年11月に作られたとあります。太平洋戦争は敗戦が濃厚になり、日本軍は特攻とか回天といった命を犠牲にする無残な攻撃を始めます。今のIS (Islamic State)と同じ戦法です。二度と帰ることのない若者の命を歌ったのがこの句といわれます。誓子のぎりぎりの反戦的な態度だったのでしょう。

誓子の作品に「凍港」という樺太の情景を叙情的に詠んだ詩集もあります。
   探梅や遠き昔の汽車にのり
   氷海や月のあかりの荷役そり

200px-yamaguchi_seishi私は樺太の真岡生まれですが、樺太生活や風景になんの記憶もありません。誓子の句から成田家が過ごした樺太という風土の想像を巡らすだけです。

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