心に残る名曲 その二百五 日本の名曲 大中 恩 「サッちゃん」

父親は『椰子の実』の作曲者である大中寅二です。父が教会のオルガニスト兼合唱指揮者であったことが、大中の音楽への関心を向けます。ただ、教会の聖歌隊にいた女性に憧れたというエピソードも残しています。1942年に東京音楽学校の作曲科入学します。しかし、1943年10月の学徒出陣で海軍に召集されますが、その直前に作った北原白秋作詞の混声合唱曲「わたりどり」は戦場に向かう備えで書いたといわれます。

復員後、1945年に音楽学校卒業し歌曲集、佐藤春夫作詞「五つの抒情歌」、「しぐれに寄する抒情」、三木露風作詞の「ふるみち」を作ります。その後は子どものための音楽作りをライフワークとします。時代を超えて歌い継がれている曲に佐藤義美作詞の「犬のおまわりさん」、阪田寛夫の作詞の「サッちゃん 」、「おなかのへるうた」があります。阪田と大中は従兄弟でした。大中の作風は、歌詩に基づく優しいメロディとリズム、美しい語感をたたえた和声が特徴といわれます。

わたりどり」 北原白秋 作詞
  あの影は渡り鳥、
   あの耀きは雪、
    遠ければ遠いほど空は青うて、
   高ければ高いほど脈立つ山よ、
    ああ、乗鞍嶽、
     あの影は渡り鳥。

うたのおばさん 松田トシ