ジョアキノ・ロッシーニ(Gioachino Rossini)はイタリアの作曲家。多数の歌劇(オペラ)を作曲しています。父はトランペット奏者、母は舞台での袖役の歌手でした。そのようなわけで、劇場で少年時代を過ごしたようなものです。同時に怠け癖の多い少年だったといわれます。14歳のときにボローニアの音楽学校(Bologna’s Philharmonic School)に入学します。ヴァイオリン、ホルン、ハープシコード(harpsichord)を習います。やがて指揮者の見習いとなり、ハイドンやモーツアルトに感化されていきます。それから20年の間、40余りの歌劇を作曲するのです。
多くの歌劇のなかで「セビリアの理髪師」(The Barber of Seville)、「セミラーミデ」(Semiramide)、「アルジェの女」(The Italian Woman in Algiers)、「シンデレラ」(Cinderella)、「泥棒かささぎ」(La gazza ladra) などが有名です。なかでも「ウイリアム・テル」(William Tell)は劇的な歌劇として、序曲が広く演奏されています。
「ウイリアム・テル」はロッシーニの最後の歌劇となります。この歌劇は、スイス人の民族主義と自由、そして独立ということをテーマにしています。弓矢の名手、ウィリアム・テルはハプスブルク家の支配に立ち向かい、やがて彼は英雄として迎えられます。これをきっかけに反乱の口火を切り、スイスの独立に結びつくという伝承を元にしています。
しかし、歌劇「ウイリアム・テル」は、権力に抵抗する革命的な人物を賞賛しているという理由でイタリア人検閲官と摩擦を起こし、イタリアでの上演が制限されたといわれます。それだけ「ウイリアム・テル」という人物もこの曲もイタリアの庶民の間で好感を呼んでいたということでしょう。