これまで歴代の政府は、憲法第九条の下において許容されている自衛権の行使は、わが国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであること、そして集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであって、憲法上許されないとしてきた。
ここでのキーワードは「わが国を防衛する」と「必要最小限度」というフレーズだと思われる。集団的自衛権とは、政府の解釈によれば「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利」となっている。
現行憲法には自衛隊という言葉はない。だが、「独立国である以上は当然に自衛権を持っていて、それを行使するために必要最小限度の実力は憲法で否定されていない」という論拠が自衛隊の存在となっていて、自衛隊の合憲性を支える「つっかえ棒」となってきた。さらに自衛権を発動する要件の一つに、「わが国に対する急迫不正な侵害があること」が挙げられてきた。個別の自衛権で対処できるのではないか、という議論が交わされている。集団的自衛権を持ち出す必要はあるのか、ということである。
もし集団的自衛権を行使できるとなれば、それは実は自衛隊の合憲性を支える「つっかえ棒」を外そうとすることなのだ。「わが国を防衛する」と「必要最小限度」を再解釈して集団的自衛権の行使を容認しようとするのが現政府の方針のようだが、どうも納得するのが困難である。
集団的自衛権の行使と称して大国はどのように振る舞ったのかを考える。いずれも1950年代から1970年代の冷戦時代に起こった内戦に端を発するという特徴がある。この事実は看過できないと考えられる。