心に残る名曲 その百九十九 日本の名曲 大中寅二 「椰子の実」

大中寅二は1896年生まれの作曲家です。同志社大学経済学科を卒業し、やがて山田耕筰に学びます。1920年からは東京の霊南坂教会のオルガニストを務めます。1925年にドイツに留学し、そこでヴォルフ(Leopold Wolff)に師事して作曲法を習得します。

帰国後は東洋英和女学院短大などで教え、やがて有名となる歌曲「椰子の実」を差曲します。1932年の第一回音楽コンクールの作品部門で入賞します。宗教音楽の分野での作品が多く、「主よ憐れみ給え」、「ヨブ」、「四季の頌」など、20曲あまりのカンタータ(Cantata)を発表しています。カンタータを作曲するというのは、日本の音楽史上、初めてではなかったでしょうか。

大中寅二の息子が大中恩です。作曲家や指揮者として知られています。彼は信時潔に師事します。今も日本の合唱団のレパートリーで重要な位置を占める作曲家です。もっぱら子どもの歌と合唱作品を残します。阪田寛二とのコンビで「サッちゃん」などで知られています。

島崎藤村

椰子の実
 名も知らぬ 遠き島より
  流れ寄る 椰子の実一つ
   故郷の岸を 離れて
    汝はそも 波に幾月 (島崎藤村作)