アメリカの文化 その3 多宗教の国

アメリカのキリスト教徒の半数弱がプロテスタント系(protestant)の宗派に属しており、ほかのキリスト教の宗派も合わせると、アメリカ人の約50%がキリスト教徒です。断っておきますが、こうした人々の大半は定期的に礼拝に出席しているとは限りません。プロテスタント系に属する人が多い理由は、ノルウェー人(Norwegian)やアイリッシュ(Irish)、オランダ人(Netherlander)などのように、宗教的な弾圧を避けてアメリカに渡ってきた人々にプロテスタント系の清教徒(Puritan) が多かったためです。

アメリカには約600万のユダヤ系の人々が住んでいます。世界中には約1,400万人のユダヤ人がいるといわれます。ユダヤ教徒は神による天地創造から始まる旧約聖書のみを聖典としています。トーラー(Torah)と呼ばれるモーセ五書がそうです。ユダヤ教は3大宗教の一つとして数えられていますが、キリスト教やイスラム教のように民族や時代を超えて信仰されているいわゆる「世界宗教」とはいわれていません。ユダヤ民族のための「民族宗教」であると考えられています。そのため、信徒が少ないとも言われています。

安息日(シャバット-Sabbath)はユダヤ人の生活の中心です。土曜日は休息の日として「何も行ってはならないと定められた日」とされています。家事を含め日中は一切の労働を行わないという習慣です。キリスト教徒は、土曜日ではなく日曜日を安息日として教会の礼拝にでかけます。

ユダヤ人の他に中東アジア、東南アジアからのイスラム教徒が多いのもアメリカです。全米における人口でいえば、アラブ系は400万人、イスラム教徒は700万人といわれています。こうした人々はモスクを造り礼拝しています。9.11同時多発テロ事件の直後、不幸にしてアラブ系やイスラム教徒への強い反発(バックラッシュ)が高まりました。憎悪犯罪(ヘイトクライム)の対象ともなったのがこうした人々です。

イスラム教の特徴は、他の宗教と以下の点で大きく異なります。イスラム教徒の行為とは、単に宗教上の信仰生活のみを要求するだけでなく、イスラム国家の政治のあり方、教徒間や異教徒の間の社会関係にわたるすべてを定めていることです。このことからイスラム教は、教徒の信仰と社会生活のすべての側面を規定するともいえる宗教といわれます。

ユダヤ人と私 その3 唯一の神、ヤハウェと十戒

Jacobs氏一家は敬虔なユダヤ教徒です。ユダヤ教(Judaism)がキリスト教と一線を画する点は、新約聖書(New Testament)イエス・キリスト(Jesus Christ)の誕生には言及しないことです。ユダヤ教は旧約聖書(Old Testament)における唯一の神、ヤハウェ(Yahwe)を拠りところとします。ヤハウェは全世界の創造神とされています。

新約聖書では、ヤハウェはジェホバ(Jehovah)というように使われています。「Jehovah」の語源は、ヘブル語の「havah」(to be, being )、つまり、存在するという意味です。出エジプト記の3章14節には、「神はモーセに仰せられた。「わたしは、『わたしはある。』という者である。」God said to Moses, “I am who I am.”  アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神がジェホバということです。

モーゼ(Moses)が記したといわれる旧約聖書の最初の5つの書のことをトーラ(Tolah)と呼びます。トーラは教えとか律法という意味です。ユダヤ人は、モーゼがエジプトでの奴隷状態から脱出して、シナイ山(Mt. Sinai)にて50日間修行しているとき与えられた教えと信じています。その教えの中心が十戒(Ten Commandments)です。

さて、礼拝所シナゴーグには十字架ではなくユダヤ教あるいはユダヤ民族を象徴するダビデの星(Star of David)が飾られています。二つの正三角形を逆に重ねた六角星、ヘキサグラム(hexagram)といわれる形をしています。イスラエルの国旗にも描かれているエンブレムです。ダビデの星がシンボルとして使われたのは比較的歴史が浅く17世紀のヨーロッパで広がっていきます。礼拝所で目だつものに七本のロウソク立てー燭台(candelabrum)があります。これはメノーラ(Menorah)と呼ばれて西暦70年頃から使われていたという記録があります。メノーラもまたユダヤ教の象徴的存在です。