GDPデフレーターという指標

注目

前稿では物価上昇が名目GDPの伸びが大きい要因であることを述べました。その現象を具体的な数字で説明します。例えば、 昨年100個の商品を1個100円で生産 → 1万円、今年は生産量は100個のまま、価格だけ110円に上昇 → 1万1,000円なら、名目GDPは10%増えます。しかし、生産した商品の数量は100個→100個なので、実質的な経済活動は増えていません。現在の日本でもこれに近い現象があり、名目GDPの伸び率だけを見ると、日本経済の実態以上に「成長している」ように見える可能性があります。

 ただし、実質GDPも「ゼロ成長」ではありません。ここも重要です。2026年4~6月期は、実質GDPが前期比+0.4%で、プラス成長でした。さらに2025年度全体でも+0.9%です。したがって、現在の日本を非常に単純化すると、「物価が上昇している。その中で実際の生産・需要も少しずつ増えている。そのため名目GDPの伸びが実質GDPの伸びを大きく上回っている」と捉えると分かりやすいでしょう。

 もう一つ重要なのが「GDPデフレーター」という指標です。国内で生産されたすべての財やサービスの価格水準を示す、経済全体の包括的な物価指数です。名目GDPと実質GDPの差を見るうえで、GDPデフレーターが非常に役立ちます。GDP全体について「価格がどれくらい変化したか」を見る指標です。式としては〔名目GDP ÷ 実質GDP = GDPデフレーター〕となります。目安は100基準として、100より上の場合は 基準年と比べて物価が上昇(インフレーション)している状態となります。したがって現在の日本経済を見るときは、名目GDP → 経済を金額で見た規模、実質GDP → 物価を除いた経済活動の変化、GDPデフレーター → GDPに含まれる価格変化という3つをセットで見ると、かなり理解しやすくなります。

(読売新聞より引用)

 特に現在の日本では、「名目GDPが伸びている=国民の生活がそれだけ豊かになっている」とは限らない、という点が重要です。物価も上がっているため、家計の実感を見るには、実質賃金や実質所得、1人当たりGDPなども併せて見る必要があります。次に、「では、なぜ日本では名目GDPが大きく伸びているのに、生活が豊かになった感じがしないのか?」です。それは、現在の日本では、企業や経済全体が生み出す「円ベースの金額」は増えているが、家計が使えるお金の実質的な購買力が、それに追いついていないからです。

 4.3%という名目GDPの伸びのかなりの部分は、物価上昇による金額の膨張です。これは、「日本で作られるモノやサービスの量が4.3%増えた」という意味ではありません。実際の生産活動の増加を物価変動から切り離して見ると、+0.9%程度です。

 一方、家計は「GDP」ではなく「購買力」で生活するのです。例えば給料が、30万円 → 31万円になれば、名目では3.3%増えています。ところが物価が5%上がっていたら、給料は増えたのに、買えるものはむしろ減っているということが起こります。これが「給料は上がったのに生活が楽になった感じがしない」という現象です。そして日本では「実質賃金」が鍵になるということです。生活水準を考えるなら、GDPよりもむしろ、〔実質賃金 ≒ 名目賃金 ÷ 物価〕という式を見ることが重要です。厚生労働省の分析でも、物価上昇の影響を受け、2024年の実質賃金は前年比0.3%減で、3年連続の減少でした。

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