どうも気になる その13 発達障害と診断と治療 その1 DSMー5とは

今、「Saving Normal: An Insider’s Revolt against Out-of-Control Psychiatric Diagnosis, DSM-5, Big Pharma, and the Medicalization of Ordinary Life」という本を読んでいる。要約すれば、健常な人に対しても精神疾患の診断がなされ、その歯止めが効かなくなり、薬の服用が増大していることに警鐘を鳴らす内容となっている。内容の正確さを期するために、英語の表記が多くなるのをお許し願いたい。

著者はアレン・フランセス(Dr. Allen Frances)という精神医学者である。アメリカ精神医学会(American Psychiatric Association:APA)が定めた「精神疾患の分類と診断の手引」である「Diagnostic Statistical Manual: DSM」というのがある。心理学や特別支援教育に馴染みのある者は知っている。すでに一版から五版まで発行されている。この手引きの第四版の編集委員長をしたのがアレン・フランセスである。そして2013年5月に第五版「DSMー5」が同学会から刊行された。

1992年に世界保健機関(World Health Organization: WHO)から「疾病及び関連保健問題の国際統計分類」に診断基準が初めて掲載される。これは「International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems: ICD-10」と呼ばれる。この分類のなかに広汎性発達障害(Pervasive Developmental Disorder)という単語が登場する。DSMー4によれば、広汎性発達障害は自閉症(Autism)、アスペルガー症候群(Asperger Syndrome)、レット症候群(Rett Syndrome)、小児期崩壊性障害(Childhood Disintegrative Disorder)、特定不能の広汎性発達障害などに分類されている。

専門家によっては、高機能広汎性発達障害(High Functioning Pervasive Developmental Disorder)と知的障害を伴う自閉症を包括し、自閉症スペクトラム(Autistic Spectrum Disorder)と呼ぶ者もいる。DSMー4の診断カテゴリーから大幅な変更が加えられたDSMー5では、自閉スペクトラム症の新設や気分や感情の高ぶりの波が大きい状態の双極性障害(Bipolar Disorder)が独立したカテゴリーとなった。

DSMー5の問題はなにかである。診断基準が変わったが子どもや保護者の困り感は全く変わらなく、特に診断数が増え薬の処方が拡がったことである。

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