ウィスコンシンで会った人々 その66 死人噺

猛暑の時候。少しは涼しくなる話題といきたい。以前「片棒」という演目を紹介した。赤にし屋ケチ兵衛はある時三人の息子のうち一人に店の身代を譲ろうと考え、三人の金銭感覚を試すために自分が死んだらどんな葬式をだしてくれるかを話させる、という演目であった。自分が死んで入れられている棺桶の片棒を自分が担ごう、と申し出るケチの噺である。

長屋に住むのが卯之助。あだ名を「らくだ」という男。そのらくだの長屋に、ある日兄貴分の熊五郎がやってくる。返事がないので入ってみると、何とらくだが死んでいる。フグにあたったらしい。兄弟分の葬儀を出してやりたいが、熊五郎だが金がない。考え込んでいると、上手い具合に屑屋の久六がやってきた。早速、久六を呼んで室内の物を引き取ってもらおうとするが、それまで久六はらくだの家財道具はガラクタばかりを引き取らされたらしく断られる。ますます困る熊五郎。

「月番を呼んでこい」と久六を月番の所に行かせ、長屋から香典を集めてくるよう言いつけさせるの。久六は断るが、仕事道具を取られ、しぶしぶ月番の所へ。「らくだが死んだって? フグもうまくあてやがったか!」と喜ぶ月番。香典の申し出には「一度も祝儀を出してもらったことはない」と断るが、結局「赤飯を炊く代わりに香典を出すよう言って集めてくる」と了承した。

安心した久六だが、らくだ宅に戻ると今度は大家の所に通夜に出す酒と料理を届けさせるよう命令される。ところが、大家は有名なドケチ。そのことを話すと、熊五郎は「断ったらこう言えばいい」と秘策を授ける。死骸を文楽人形のように動かし、久六に歌わせて「かんかんのう」と踊らせる。本当にやると思っていなかった大家、縮み上がってしまい、酒と料理を出すと約束する。

可哀想に、またもや久六は八百屋の所へ「棺桶代わりに使うから、漬物樽を借りてこい」と言い渡される。しぶしぶ行くとやはり八百屋はらくだの死を喜び、申し入れは断わる。久六が「かんかんのう」の話をすると「やってみろ」と言われる。「つい今しがた大家の所で実演してきたばかりだ」と言うと「何個でもいいから持っていけー!」。

これで葬式の準備が整った。久六がらくだ宅に戻ると、大家の所から酒と料理が届いている。熊五郎に勧められ、しぶしぶ酒を飲んだ久六。ところが、久六という男、普段は大人しいが実はものすごい酒乱。呑んでいるうちに久六の性格が豹変する。もう仕事に行ったらと言う熊五郎に暴言を吐き始める。これで立場は逆転、酒が無くなったと半次が言うと、「酒屋へ行ってもらってこい! 断ったらかんかんのうを踊らせてやると言え!!」

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