旅のエピソード その23 「ミニットマンとチップ」

ボストン(Boston) の西20kmにレキシントンとコンコード(Lexington-Concord)という街があります。周りは静かな農村地帯です。この小さな街で1775年の4月に独立戦争(Independence War)における最初の大規模な戦いが植民地軍とイギリス軍とで繰り広げられます。植民地軍は正規の兵士と民兵によって組織されていました。民兵の多くは農民です。農作業や狩猟をしながら、召集されると数分(minute)で駆けつけるというので、ミニットマン(minute man)と呼ばれていました。民兵には狩猟をしていた者が多数いたので、狙撃手としても活躍したようです。

毎年7月4日の独立記念日や夏の週末になると、レキシントンとコンコードのあちこちで観光客を相手にしたツアーがあります。地元の高校生がミニットマンに扮して、観光客をガイドします。こうした高校生は、歴史を学びスピーチの仕方を覚え、やってくる人々をもてなす術を学び観光客に披露します。観光客をいかに話に乗せるか、これが勝負所です。まさにエンターテイナー(entertainer)です。その演技の出来ばえはすぐに表れます。

ミニットマンのスピーチや演技に皆引き込まれていきます。ツアーの最後には、「我々に自由と独立を、そして勝利を!」と皆で絶叫し、かぶっていた帽子をとって観光客の中に回すのです。人々は皆ニコニコして1ドルから10ドル札のチップ(tip)を入れて帰ります。チップを渋る観光客はいません。実に秀逸で飽きを感じさせない、なんとも気持ちの良いツアーです。