心に残る名曲 その百十一 アントニオ・ヴィヴァルディ 「四季」

1723年に作曲されたバロック(Baroque)音楽の傑作と云われます。アントニオ・ヴィヴァルディ(Antonio Vivaldi)のこの「四季」(Four Seasons) は、彼の最も有名な曲です。バロックとは、もともと過剰な装飾を持つ建築を批判する用語だったようですが、やがて彫刻や絵画と同じように速度や強弱、音色などに対比があり、劇的な感情の表出を特徴とする音楽と呼ばれるようになります。

 ヴィヴァルディの生い立ちです。父は水の都、ヴェネツィア(Venezia)において理髪業兼音楽家で、後に聖マルコ大聖堂(St. Mark Cathedral)のヴァイオリン奏者となります。ヴィヴァルディもまたこうした恵まれた環境で育ちます。15歳のとき、聖職の道に入り21歳で副助祭、25歳で司祭に任じられます。1703年、ヴェネツィアの女子慈善院ピエタ(Ospedale della Pieta)に勤め、ヴァイオリン、作曲、合奏を教えます。女子生徒たちで組織する合唱団とオーケストラは日曜・祭日には必ず演奏会を開き、その優れた演奏の評判は外国にも知られるほどだったといわれます。

ヴェネツィアの風景画家マルコ・リッチ(Marco Ricci)に感化されたようです。リッチはヴェネツィア風景画法の創始者とももいわれています。「四季」はその影響を受けています。音で絵画を作るのです。ヴェニス育ちのヴィヴァルディからは、イタリアのさんさんとした光陽を思い浮かべるかもしれません。かならずしもそうではありません。「冬」の場合は銀色のようなピッチカート(pizzicato)がヴァイオリンで凍りそうな雨が奏でられます。「夏」の最終章では嵐と雷鳴が響き渡るという塩梅です。

ヴィヴァルディの曲は音色の美しさ、リズムの躍動性、劇的な要素の巧みな構成で知られます。ヴェネツィア音楽の特徴は、ローマの様式が荘重であったのに対し、旋律的で色彩的であり、ヴェネツィア人の気質とされる陽気さが加わります。ヴィヴァルディの作品にはそれが横溢しています。

ヴィヴァルディの曲のテーマは、主要三和音か主音の連続するものが多いのですが、新鮮なリズムが聴衆に印象づけます。彼の影響を最も受けたのがバッハ(J. S. Bach)といわれます。バッハはヴィヴァルディの作品を手本として10曲ほどを編曲しています。そこから新しい協奏曲の形式を学んだといわれます。

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