心理学のややこしさ その二十七 「メラビアンの法則」

心理学における研究には、まじめなものや少々胡散臭いものまでいろいろあります。UCLAの心理学者アルバート・メラビアン(Albert Mehrabian) が1971年に提唱した「法則」は法則といえるのかどうかを読者に判断してもらいましょう。

 

 

 

 

メラビアンの研究は、好意や反感などの態度や感情のコミュニケーションについてを扱う実験です。人の行動が他人にどのように影響を及ぼすかというものです。メラビアンによりますと人物の第一印象は初めて会った時の3〜5秒で決まり、またその情報のほとんどを視覚情報から得ているというのです。初対面の人物を認識する割合は、「見た目・表情・しぐさ・視線等」の視覚情報が55% 、「声の質・話す速さ・声の大きさ・口調等」の聴覚情報が38%、「言葉そのものの意味・話の内容等」の言語情報が7%であるというのです。緻密な分析結果であるかのような印象も受けます。

この情報の割合は、 1967年の論文「一貫性のないコミュニケーションの解読(Decoding of Inconsistent Communications)」に掲載されています。そこには「7-38-55のルール(7%-38%-55% Rule)」といわれます。「言語情報ーVerbal」、「聴覚情報ーVocal」、「視覚情報ーVisual」の頭文字をとって「3Vの法則」ともいわれています。

しかし、メラビアンの法則には異議が唱えられています。第一に、録音されたテープの内容が人為的につくられたものであること、第二に被験者は女性だけであったというのです。第三はポジティブな感情とネガティブな感情だけを取り上げた実験結果であるというということです。他の研究者もメラビアンの研究は検証する必要があることを指摘しています。