Last Updated on 2025年7月1日 by 成田滋
ニュージャージー州(New Jersey)にあるプリンストン大学(Princeton University)世論調査研究所での調査を引用します。黒人に対して偏見を抱いているかどうかが調査されました。そこで明らかになったことは、黒人を非常に毛嫌いしている白人ほど、黒人の就職の機会は白人と同じようにあると答える傾向があったというのです。同時に黒人に同情的な人たちのほぼ三分の二は、黒人には白人と同じような就職の機会はないと考えていると答えました。他方、偏見を示した人たちはのほぼ三分の二は、白人と同じくらいの就職のチャンスがあると答えたというのです。
もし、この調査期間中に黒人に対する偏見が高まってくるようなことがあれば、黒人には白人と同じだけの就職のチャンスがあるという答えが増えてくることがわかります。すなわち、黒人はいつの場合でも、かなり公平な取り扱いを受けていることが調査からわかるのです。そして事態が悪くなればなるほど、同情的な世論となるように思われます。
自分のことを人種差別主義者だと大っぴらに認める人間はごくわずかのようです。しかし多くの心理学者は、ほとんどの人間が意図せず人種差別主義的だと指摘します。「潜在的な偏見」(implicit bias)と呼ばれるものを持っているというのです。1960年代に、「奴隷制などの過去の人種差別に対する補償」や「多様性の確保」を目的として、アジア系を除いた人種的マイノリティである黒人やヒスパニックを、企業や官公庁の雇用や大学入学などで優遇する「アファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置:affirmative action」が導入されました。
積極的差別是正措置に関してですが、大学への入学において、被差別人種とされる黒人やヒスパニック系の人種、あるいは被差別の階層のために採用基準を下げたり、全採用人員のなかで最低の人数枠を制度上固定するなどの措置がとられています。同じマイノリティの中でもアジア人に対する扱いは例外で、学業成績が優秀であったとしても評価基準の曖昧な人物評価において低い点数をつけられ、結果的に不合格になるケースが多く、優遇処置が取られているどころか、実際は事実上の人種差別を受けているのではないかという疑念が呈されているのが現状です。
「Natureasia」の2019年12月号、「米国における「逆人種差別」(reverse discrimination) の認識」によりますと、白人および共和党支持者は、差別の程度の差は、黒人および民主党支持者より小さいと考えているとあります。さらに、アメリカやヨーロッパなどに広がる政治的分極化と極右的な運動の高まりの一因は、非白人を優遇しているとされる社会にて、白人が差別に直面しているという考えにあるとしています。最近のある研究では、一部の白人アメリカ人は、黒人に対する差別の減少が白人に対する差別の高まりを伴っていると考えていることが示唆されています。
このように「逆人種差別」という認識が、徐々に広がっていますが、我が国では、人種ではありませんが、女子学生を大学入試において差別する傾向が依然として残っており、例えば2018年には医学部入試での差別が発覚したり、都立高校における男女別定員制を設けるなどの実態があります。そうした背景を踏まえ、男女共同参画社会基本法の規定による男女共同参画基本計画により、「社会のあらゆる分野において,2020年までに,指導的地位に女性が占める割合が少なくとも30%程度になるよう期待する」といった目標を定めました。しかし、2020年7月には、30%目標を断念し、「2020年代のできるだけ早期」という曖昧な表現に変更しました。
2020年の世界経済フォーラムにおけるジェンダー・ギャップ指数では、日本は153か国中121位。 OECD加盟国と比較しても、日本の女性取締役比率は15.5%と、米国(31.3%)、英国(37.2%)、フランス(45.2%)に大きく遅れています。
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