アメリカ合衆国とニックネームの由来 その28  The Cornhusker State

ネブラスカ州(The State of Nebraska)は広大な農牧地を抱え、牛肉・豚肉・トウモロコシ・大豆の生産で国内最大の州といわれます。ネブラスカ州は2つの主要な地域から成っています。「大平原」(Great Plains)、もう一つは氷河によって削り取られた平原地形です。後者の地形はウィスコンシン州やミネソタ州、アイオワ州にもあり、農業や酪農を支えています。

ネブラスカ州のニックネームは「The Cornhusker State」。「Cornhusker」とは「とうもろこしの皮をはぎとる人」とか「皮はぎ機械」を意味します。文字通りとうもろこしの一大生産地となっています。

初代の植民は主にドイツ系とか東ヨーロッパの人々だったといわれます。砂漠に囲まれた平原にやってじゅて木や林の乏しい草原に家を建てます。やがて、植林に着手し、暴風林、そして果樹などを栽培するようになります。そのような歴史から、1860年代の州のニックネームに「Tree Planter’s State」という名がつけられるようになります。

私の親しかったネブラスカ大学リンカーン校(University of Nebraska-Lincoln)で教授をしていたDelwyn Harnisch氏はドイツ系の方で、小さい頃はネブラスカの大平原にあった小さな学校の複式学級で学んだといっていました。州内には今も人口が数百人の町や村が多数点在しています。Harnisch氏は2016年5月に昇天しました。

 

 

 

 

Dr. Delwyn Harnisch in memory

アメリカ合衆国とニックネームの由来 その27 The Treasure State

モンタナ州(The State of Montana)は、私のウィスコンシン大学時代の指導教授 Dr. LeRoy Aserlindが眠るところです。6年余りにわたってお世話になりました。引退後はモンタナ州のリビングストン(Livingstone)という小さな町で夏はハイキング、冬はスキーを堪能されたようでした。州都はヘレナ (Helena)です。

「Montana」はスペイン語で山とか山の国を意味する 「Montana」に由来します。モンタナ州のニックネームは「Treasure State」といわれます。豊かな鉱物資源に恵まれています。入植したスペイン人はこの州を「Oro y Plata」ー金と銀と呼んでいたそうです。 アメリカ西部の多くの都市がそうであるようにヘレナも19世紀後半のゴールドラッシュ(Gold Rush)によって人が集まって発展してきた町です。多くの鉱物資源に恵まれて、このニックネームがついたのだろうと察します。モンタナ州は別称として「Big Sky Country」ともいわれます。こちらのほうがモンタナ州を形容するのに相応しいと思われます。

モンタナ選出の上院議員マイケル・マンスフィールド (Michael “Mike” Mansfield)氏のことです。愛称はマイク。1977年に引退するまでの24年間にわたって上院議員を務めます。その間1961年から1977年までの16年間、多数党である民主党上院院内総務(Senate Majority Leader)を務めます。この任期はアメリカ史上最長という記録です。1977年には、当時の大統領ジミー・カータ(Jame Carter)により駐日大使に任命されます。共和党のロナルド・レーガン(Ronald Reagan)が大統領に就任しても大使を続けます。1989年までの12年間という大使在任記録も珍しいです。大統領からの信頼が厚かったことを示しています。

アメリカ合衆国とニックネームの由来 その26  The Show-Me State

ミズリー州(State of Missouri)といえば、1945年9月、東京湾での日本の降伏調印式場となったの戦艦ミズリー号を思い出す州です。今も、真珠湾で現役(commisoned)として観光客を迎えています。州のニックネームは少々変わっています。「Show-Me State」というのです。ライセンスプレートにもこのフレーズが印字されています。

このニックネームにはいくつかの説がありますが、最もらしいのは、ミズリー州選出の上院議員だったヴァンディーア(Willard Duncan Vandiver)がフィラデルフィアで演説したときに使ったフレーズからきているという説です。
“I come from a state that raises corn and cotton and cockleburs and Democrats, and frothy eloquence neither convinces nor satisfies me. I am from Missouri. You have got to show me.”

「私はコーンや綿花、籾、そして民主党を育てるミズリーからやってきた。詭弁によって確信することも満足することもない。正真正銘、ミズリーからきたのだ。」

”ミズリーの人々はだまされることもなく保守的でもない。確かな理由がなければ信じない人々なのだ”と宣言しています。

アメリカ合衆国とニックネームの由来 その25 The Magnolia State

ミシシッピ州(Mississippi)はメキシコ湾に臨む温暖湿潤気候が特徴で、州都で最大都市はジャクソン(Jackson)です。「The Magnolia State」とあるように、木蓮(Magnolia)で有名でコブシの香りが芳醇なことで知られる花です。17世紀から18世紀のフランスの植物学者、ピエール・マニョル (Pierre Magnol)から名付けられたといわれます。木蓮の木は恐竜が生きていた頃にも存在していたとされ、以来変わらずに美しい花を咲かせていることから「持続性」という花言葉が付けられました。「崇高」とか「気品」といった形容詞もつけられている花です。

旧石器時代の北米大陸に定住していた原始的な古代インディアンのパレオ・インディアン(Paleo-Indians)が住んで農耕を営んでいたのがミシシッピといわれます。現インディアンのチカソー族(Chickkasaw)やチョクトー族(Choctaw)、オジブワ族(Ojibwa)の祖先というわけです。「Mississippi」とはオジブワ部族語で「大きな川」という意味だそうです

この地域に入った最初のヨーロッパ人探検家はスペイン人のヘルナンド・デ・ソト(Hernando de Soto)です。彼はインカ帝国を滅ぼした探検家としても知られています。1504年には、ミシシッピはスペイン、フランス、イギリスの各植民地政府が支配します。さらに労働力としてアフリカ人奴隷を輸入していきます。フランスとスペインの統治下では、自由有色人階級が発展し、その大半はヨーロッパ人と奴隷化された女性とその子供達の多人種の子孫といわれます。

ミシシッピ川は12月から6月にかけて北部州の雪解け水が増加し洪水を起こしてきました。こうしてミシシッピ川の支流流域を含めたデルタ地帯に肥沃な洪積平野を作り上げ、綿花の栽培が盛んになりました。しかし、洪水やハリケーン、綿花の価格低下、労働力の流失などにより税収が減り、今は連邦政府補助金に頼る状況が続いています。

ミシシッピ州はブラックベルト(Black Belt)に属し、黒人多数派の時代が南北戦争前から1930年代まで続きます。今でもアフリカ系アメリカ人は人口の約37%を構成しています。南北戦争後は、40万人近いアフリカ系アメリカ人が北部や中西部および西部へ新たな機会を求めて移住したとあります。

アメリカ合衆国とニックネームの由来 その24 The North Star State

ミネソタ州(State of Minnesota)の名前の由来ですが、先住民族であったダコタ族(Dakota)語で「Mní sota」と呼ばれ、澄んだ青い水(clear blue water)」といわれてきました。ニックネームは「North Star State」。その他にも「Land of 10,000 Lakes」とか「Gopher State」、「Bread and Butter State」とあります。

州都はセントポール市(St. Paul)で隣あわせのミネアポリス市(Minneapolis)が最大の都市です。「双子の都市ーTwin-Cities」と呼ばれています。住民の大半はドイツやスカンジナビア半島(Scandinavia)から移民してきた人々の子孫といわれます。前者は37.9%、後者は32.1%に及びます。アイルランド系は11.7%となっています。その理由はミネソタ州は大陸性気候で、寒冷な冬と暑い夏といったように北ヨーロッパと似ていることがあります。

ミネソタ州は1976年以来一貫して大統領選挙では民主党候補を選んでいます。この事実はどの州の実績よりも長いことで知られています。第38代合衆国副大統領ヒュバート・ハンフリ(Hubert Humphrey)や第42代合衆国副大統領で駐日合衆国大使を歴任したウォルタ・モンデール(Walter Mondale)はミネソタの出身です。

ミネソタ州に基盤を置く企業として穀物会社カーギル(Cargill)があります。穀物メジャーで、現在は精肉、製塩など食品全般及び金融商品や工業品にビジネスを広げています。世界の穀物取引を事実上支配しているともいわれています。穀物を支配するのは、国防と同じように世界を支配するのです。カーギルは独自の衛星を有し、世界中の農産物の生育状況のデータを収集しています。そのため、穀物の先物取引などで優位に立つことができるのです。

アメリカ合衆国とニックネームの由来 その23 The Wolverine State

ミシガン州(Michigan)のニックネームは「The Wolverine State」。「Wolverine」とは 北米やユーラシアの寒いところに住むイタチ科の「クズリ」という動物です。どう猛で破壊的な性格があるといわれます。「Wolverine」はミシガン大学(University of Michigan)のマスコットにもなっています。なぜか各州は動物の名前をニックネームにするところが多いようです。ライセンスプレートには「Great Lake State」と印字されています。

ミシガンは北はカナダと国境を接しミシガン湖(Lake Michigan)、スペリア湖(Lake Superior)、ヒューロン湖(Lake Huron)、エリー湖(Lake Erie)を抱え、西はウィスコンシン州、南はインディアナ州とオハイオ州に接しています。四つの湖に囲まれるという地の利が自動車産業を支えてきたのがミシガン州です。ゼネラルモーターズ(GM)、フォード(Ford)、クライスラー(Chrysler)のビッグスリーの本社がデトロイト(Detroit)とその近郊にあります。州都はランシング(Lansing)。デトロイト国際空港は6本の滑走路を有し、デルタ(Delta)航空のハブ空港となっています。

ミシガンは四つの湖に囲まれた湖岸線に囲まれ「Water Wonderland」とも呼ばれています。約11,000の湖沼や多くの河川を抱えるのは、かつての氷河が退行した後にできた地形だからです。北部は広大な森林地帯となり林業が盛んです。加えて農業もミシガンの産業です。主要な農産物ですが、とうもろこし、大豆、温室栽培、牛肉、じゃがいも、チェリー、ブルーベリー、リンゴ、いちご、梨などの果物の産地として知られています。

経済の中心はなっといってもデトロイトです。自動車産業の他にも多くの企業があります。例えば穀物のケロッグ(Kellogg)、ダウ・ケミカル(Dow Chemical )、ワールプール(Whirlpool)、アムウェイ(Amway)などの本社もここにあります。

アメリカ合衆国とニックネームの由来 その22 The Bay State

マサチューセッツ州は、「Commonwealth of Massachusetts」と呼ばれます。この州には、長男夫婦と2人の孫が住んでいます。毎年必ず訪れるのが楽しみなところです。州都ボストン(Boston)から車で1時間のところにコロニアルスタイル(colonial style)の築後70年という家で暮らしています。

ボストンの東南1時間のところにプリマス(Plymoth)という港町があります。ここにMayflowerII号のレプリカが停泊しています。Mayflowerは1620年頃にヨーロッパからこのあたりに着いたことが記されています。そこから続く岬はケープコッド(Cape Cod)でボストンの避暑地となっています。「Cod」とはスケソウ鱈のことです。

最初の移民の多くは聖教徒(Pilgrims)といわれています。MayflowerII号から下りた聖教徒が開拓したところが今も大切に保存されています。この居留地は「Plimoth Plantation(プリマス開拓地)」と呼ばれて州の歴史的な公園となっています。Plantationに入りますと、そこは1600年代という設定です。そこで働く人は百姓、鍛冶屋、パン屋さんなどいろいろ。当時の服装、言葉、仕草で観光客に対応します。働く人々の演技が秀逸で、観光客はこうした人々とのちんぷんかんぷんの対話から「ここは1620年頃なのだな、、、」とようやく合点がいきます。

マサチューセッツ州のニックネームは「The Bay State」。その他にも「The Codfish State」、「The Pilgrim State」というのもあります。ライセンスプレートには「Spirit of America」というフレーズが印字されています。これは、建国の精神を意味します。1680年ころから、マサチューセッツはイギリスの植民地となります。1760年代になると、マサチューセッツ憲法として権利の宣言と政府の樹立を訴え、イギリスの支配に反旗を翻します。やがて独立戦争が始まるのです。この自治と独立の精神が「Spirit of America」というフレーズです。

アメリカ合衆国とニックネームの由来 その21 The Old Line State

18世紀初頭、スコットランドやアイルランド(Scotland and Ireland)から大挙して移民がメリーランド州(The State of Maryland)にやってきます。その理由は宗教上の迫害を逃れ、自由を求めてきたといわれます。メリーランドの州都はアナポリス(Annapolis) で海軍大学校(Naval Academy)があります。最大の都市はバルチモア(Baltimore)となっています。ワシントンD.C.の隣です。

多くの川がポトマック川(Potmac River)に合流し、チェサピーク湾(Chesapeake)に注いで肥沃な大地を形成しています。そのお陰で農業は州経済の重要部分となっています。キュウリ、スイカ、スイートコーン、トマト、マスクメロン、カボチャ、豆類など生鮮野菜を栽培しています。チェサピーク湾西岸の南部郡は温暖な気候でタバコの栽培地帯でもあります。

州のニックネームの由来です。独立戦争(Revolutionary War)の最中、大陸軍のメリーランド第一連隊(First Regiment)400名がニューヨーク州のロングアイランド戦(Battle of Long Island)で勇敢な戦いをし、イギリス軍の侵攻を食い止めたといわれます。この連隊はその後の戦いでも戦果ををあげ、後に総司令官であったワシントン(George Washington)が「Maryland Line(メリーランド軍)」に「Old Line」という名を与えたとあります。「The Old Line State」とは少々地味なニックネームです。

アメリカ合衆国とニックネームの由来 その20 The Pine Tree State

メイン州(The State of Maine) は合衆国の最東端に位置し、東と北がそれぞれカナダのケベック州(Quebec)、ニューブランズウイック州(New Brunswick)に接し、西はニューハンプシャー州(New Hampshire)に隣接しています。州都はオーガスタ(Augusta)。州の公式ニックネームは「The Pine Tree State」となっています。

「Maine」という州名は、フランスの「province in France」から由来したといわれます。1604年頃最初にヨーロッパからやってきたのはフランスの探検家、ピエール・デュガ(Pierre Dugua)、シーウ・ド・モンス (Sieur de Mons)といわれ、セント・クロー島(Saint Croix Island)に上陸します。
1665年にイギリスからの移民が到着し、イギリス総督の名で「Province of Maine」とつけられます。この地帯に住んでいた先住民族はアルゴンキン語(Algonquian)を話すワバナキ族(Wabanaki)です。

海岸線は岩で複雑に入り組み、山稜は低くうねり、森と美しい水流などが内陸に続いています。その景観は多くの避暑客をよんでいます。ロブスター(lobster)やハマグリ(cram)など海産物料理も観光客が押し寄せる理由です。その他、主要な産物は鶏肉、卵、酪農製品、牧畜、りんご、ブルーベリー、メイプルシロップ(maple syrup)などです。ニックネームのThe Pine Tree Stateですが、メイン州の旗に掲げられています。とくに白い松の森林で覆われる州です。

アメリカ合衆国とニックネームの由来 その19(2) The Cajun

ルイジアナ州(Louisiana)の話題の二回目です。「クレオール」と並んでルイジアナの顕著な文化や料理が「ケージャン」(Cajun)です。少し時間を戻してみます。

ミシシッピ川以東の大陸では、イギリスとフランスの間で激しでい所有権争いが起こります。フレンチ・インディアン戦争(French and Indian War) です。この戦いは「七年戦争」(Seven Years’ War)ともいわれます。1713年にカナダのノバ・スコシア(Nova Scotia)地方をイギリスが植民地化すると、ノバ・スコシアのアカーディア(Arcardia)地方に住んでいた「Cajuns」と呼ばれていた約4,000名のフランス系住民は追われて南部のルイジアナへ移動します。そしてこの地で綿花、コーン、サトウキビなどを栽培します。使っていた言語はフランス語が母体ですが、それに英語、ドイツ語、黒人の使っていた言葉の訛りが交じり、独特な響きを持つようになります。それがケージャン語(Cajun Language)と呼ばれるようになります。

ケージャン語とともにケージャン料理も知られています。ケージャン移民が持ち込んだアカーディアのフランス料理を基礎としインディアンの料理、西アフリカからの黒人奴隷の料理さらに、クレオール料理の流れをくむのがケージャン料理といわれています。代表的なものに肉または甲殻類、とろみ成分、および「聖なる三位一体」と呼ばれるセロリ、ピーマン、タマネギで構成されるガンボ(Gumbo)、溶かしバターを塗ったレッドフィッシュの切り身にたっぷりのスパイスをまぶしつけ、煙が出るほど熱したブラッケンド・フィッシュ(Blackened Fish)が知られています。