合衆国における「メディケア」という名称は、もともと1956年に制定された扶養家族医療法(Dependents’ Medical Care Act)に基づき、軍務に就く人々の家族に医療を提供するプログラムを指していました。ドワイト・アイゼンハワー大統領(Dwight D. Eisenhower ) は1961年1月、ホワイトハウスで第1回高齢者問題会議を開催し、社会保障受給者のための医療プログラムの創設を提案しました。
しかし、1964年の選挙後、メディケア推進派は下院で44票、上院で4票を獲得します。1965年7月、リンドン・ジョンソン大統領(Lyndon B. Johnson) のリーダーシップの下、議会は、社会保障法の第18条に基づき、収入や病歴にかかわらず65歳以上の人々に医療保険を提供するメディケアを制定します。元大統領ハリー・トルーマン(Harry S. Truman)とその妻で元ファーストレディのベス・トルーマン(Bess Truman) がこのプログラムの最初の受給者となりました。
筋萎縮性側索硬化症がルー・ゲーリック病と呼ばれるようになった経緯です。1920年代から1930年代にかけてニューヨーク・ヤンキース(New York Yankees)で活躍したのが(Lou Gehrig)です。三冠王をはじめ、打撃タイトルを多数獲得し、史上最高の一塁手と称されていました。1939年、体調異変により欠場し、輝かしい記録は途切れます。その後筋萎縮性側索硬化症と診断され、ゲーリッグは引退を決意します。このような経緯でアメリカでは、この病気は「ルー・ゲーリッグ病」と呼ばれるようになりました。発症率は10万人に一人くらいという神経性疾患です。根治的な治療法は確立されていないのですが、複数の薬剤により病状の進行を遅らせることが可能となっています。
リンダ・マクマホン(Linda McMahon) 連邦教育省長官は、2025年3月20日にトランプ大統領による法律が定める極限まで連邦教育省(U.S. Department of Education)を閉鎖し廃止することを命令する大統領令(executive order)を受け、i以下のような声明を発表しました。教育省を廃止とは、我が国でいえば、文部科学省の廃止ということです。このような大統領令は一体どのような背景があり、どのような影響をアメリカの教育に与えるかを考えることにします。
連日のようにアメリカのケーブル・ニュースチャンネルでは、トランプの相互関税政策が報じられています。目立つのはその批判です。その中で私が注目する二人の人物を紹介します。一人は政治アナリスト・ジャーナリストであるローレンス・オドネル(Lawrence O’Donnell)、もう一人はコロンビア大学教授のジェフリー・サックス(Jeffrey D. Sachs)です。何故彼らが注目されているのは、トランプの相互関税政策への痛烈な批判が極めて論理的であることです。
NBCとマイクロソフトが共同で設立したMSNBCは、平日夜にオピニオン・ニュース番組を放送しています。「The Last Word with Lawrence O’Donnell」というものです。その名のとおり、アンカーを務めるのがローレンス・オドネルです。彼は1989年、ダニエル・モイニハン(Daniel P. Moynihan)上院議員の補佐官として政界入りし、上院財政委員会 (United States Senate Committee on Finance) における民主党側の長を務めます。彼は自らを「実践的なヨーロッパ社会主義者」と称しています。物腰の柔らかい言葉遣いをするテレビ・ジャーナリストとして知られています。
オドネルは、チャールズ・ディケンズ(Charles J. Dickens)の小説「クリスマスキャロル」(A Christmas Carol)を引用します。ケチで冷酷なスクルージ(Scrooge)が、クリスマスの夜に3人の幽霊に導かれ、過去・現在・未来のクリスマスを見せられることで改心する物語です。オドネルは、トランプを称して「関税のスクルージ」(Tariff scrooge) と名指して次のように言います。 ‘Tariff scrooge’ Trump is already killing U.S. jobs and has the worst 100-day polling ever. 関税のスクルージであるトランプはアメリカ人の雇用を奪い、就任100日で過去の大統領に比べて最も支持率が低い。
トランプの相互関税政策を鋭く批判するのが、ジェフリ・サックス(Jeffrey D. Sachs)という国際経済学者です。彼は、コロンビア大学地球研究所長(Earth Institute at Columbia University)として、気候変動や貧困問題といった地球規模の問題に積極的に発信し、29歳でハーヴァード大学の教授となり経済学の領域を超えてその知見は世界的に知られています。国際貿易論の分野で業績を上げ、ラテンアメリカ(Latin America)、東欧、ユーゴスラビア(Yugoslavia)、ロシア政府の経済顧問を歴任しています。特にボリビア(Bolivia)、ポーランド(Poland)、ロシアの経済危機への解決策のアドバイスや国際通貨基金(IMF)、世界銀行(World Bank)、経済協力開発機構(OECD)、世界保健機関(WHO)、国連開発計画等の国際機関を通じた貧困対策、債務削減、エイズ対策等への積極的な活動を行っています。
科学者が流出しやすい国のことです。彼らが流出先として選ばれやすい国には以下のような特徴があります。十分な研究資金と制度的支援がある国のドイツ、例えばマックス・プランク研究所(Max-Planck-Institute: MPI) )、カナダ国立衛生研究所(Canadian Institutes of Health Research : CIHR)、カナダ自然科学・工学研究会議(Natural Sciences and Engineering Research Council of Canada: NSERC) などは充実した研究助成を行っています。しかも、ビザ制度が比較的柔軟で移民も認める国々です。カナダ、オーストラリア、EU諸国は研究者向けビザ制度が整っています。流出先として選ばれやすい国として英語が通用しやすいことです。英語圏であれば、アメリカからの移動も心理的ハードルが低いのです。
日本は科学者の受け皿となりうるか?という問いですが、受け入れ先の例として、理化学研究所(RIKEN)や国立研究開発法人科学技術振興機構 (JST) などの公的機関が上げられるでしょう。理化学研究所の研究組織所属職員は2,820人で、そのうち外国人研究員は474人となっています。こうした研究機関は、世界レベルの研究支援を行っていることや外国人特任研究員などの制度で研究者も受け入れています。また沖縄科学技術大学院大学(Okinawa Institute of Science and Technology Graduate University: OIST)は,教職員1101名中、72ケ国からの外国人が517名を占めています。大半の研究員は任期制です。ノーベル賞受賞者も輩出している研究力も有しています。ですが期限付きの特任研究員が多いのも気になります。
ハーヴァード大学(Harvard University) は4月21日、トランプ政権を相手取りボストンの連邦地方裁判所(U.S. District Court in Boston)に訴訟を起こしました。研究資金の凍結は違憲かつ「完全に違法」であると主張し、裁判所に対し22億ドル(約3150億円) 以上の研究資金の返還を求めるのです。この訴訟は、裁判所に対し、資金凍結を取り消し、既に承認された資金の流れを再開し、連邦法に定められた手続きに従わずに現在の資金を凍結したり、将来の資金提供を拒否したりする政権の試みを阻止するよう求めています。
ハーヴァード大学はすでにその方向でいくつかの措置を講じていますが、ガーバー学長によると、反ユダヤ主義および反イスラエル偏見対策タスクフォース(Task Force on Combating Antisemitism and Anti-Israeli Bias)と、反イスラム教、反アラブ、反パレスチナ偏見対策タスクフォース(Task Force on Combating Anti-Muslim, Anti-Arab, and Anti-Palestinian Bias)がまもなく完全な報告書を発表する予定としています。ガーバー学はこれらの報告書を「強烈で痛みを伴うもの」(hard-hitting and painful)と評し、具体的な実施計画を伴う提言が含まれているとも述べています。
フランス語なのですが、何故か英語化しています。「ご返答をお願いします」という意味です。結婚式やお祝いの招待状の最後に「お返事をお待ちしています」、RSVPという略語を付けます。主催者が参加者数を確定するものですから、こうした案内状を貰ったときは返事をだします。ちなみに、「ASAP」という略語もメールや会話で使われます。「as soon as possible」の略語で、出来るだけ早く(至急)返事をください、という意味です。
初めてサマータイムを提唱したのは、ジョージ・ハドソン(George V. Hudson)というイギリス生まれのニュージーランドの昆虫学者です。全国規模で実施したのはドイツ帝国とオーストリア=ハンガリー帝国(Austria-Hungary)で、第一次世界大戦時に石炭の消費量を減らすため、1916年4月30日に開始します。それ以来、多くの国でサマータイムが幾度も実施され、イギリスとその同盟国のほとんど、およびヨーロッパの多くの中立国もすぐさまこれに追随したようです。ロシアと他の数か国は翌年まで待機し、アメリカは1918年にサマータイムを採用します。特に1970年代の石油危機以後に普及したのがサマータイムです。2007年以降、アメリカとカナダの大部分では、3月の第2日曜日から11月の第1日曜日まで、一年のほぼ3分の2の期間、サマータイムを実施しています。
MMTは現代貨幣理論と呼ばれています。通貨発行権を持つ国家は債務返済に充てる通貨を自在に創出できることから、「財源確保のための徴税は必要ではない」、「財政赤字で国は破綻しない」、「インフレにならない限り国債はいくら発行しても問題はない」と主張するのです。MMTはケインズ(John M. Keynes) 経済学の流れを汲むマクロ経済学理論のひとつで、「政府の財源は税と債券発行によって調達すべき」、「赤字拡大が続けば国は破綻する」という主流派経済学の見方に対抗しています。
2015年9月25日に国連総会で採択されたのが、持続可能な開発のための17の国際目標です。向こう15年間の新たな行動計画『我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ』(Transforming our world: the 2030 Agenda for Sustainable Development)が採択されたのです。国連はさらに2030年までに貧困や飢餓をなくすほか、ジェンダーの平等や気候変動対策を進めることなどを目標として掲げています。
第二次世界大戦後、国際連合を中心に多くの国際機関が設立されました。日本人に最も馴染みのあるユネスコ(United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization: UNESCO)もそうです。教育や科学、文化の分野で国際協力を推進し、世界平和と人類福祉の促進を目的として設立されています。他にも次のような国際機関や政府機関もあります。
この機関は世界保健機関 (World Health Organization)と呼ばれています。1948年4月7日に、すべての人々の健康を増進し保護するため互いに他の国々と協力する目的で設立されました。グローバルな保健問題を解決するために、様々な活動を行っています。具体的には、感染症対策、健康に関する研究、国際的なガイドライン策定、加盟国への技術支援、健康志向の監視・評価などがあります。
世界貿易機関(World Trade Organization)は、このところメディアで注目されています。1995年1月に関税及び貿易に関する一般協定であるガット((General Agreement on Tariffs and Trade:GATT)を発展解消させて成立したのがWTOです。WTOは自由貿易の促進を目的とする国際機関です。1995年に設立され、各国が貿易に関するルールを定めて相互の貿易を円滑に進めるための枠組みを提供しています。その役割は、自由(関税の低減、数量制限の原則禁止)、無差別(最恵国待遇、内国民待遇)、多角的通商体制の3つを基本原則としています。また、物品貿易だけでなく金融、情報通信、知的財産権やサービス貿易も含めた包括的な国際通商ルールを協議する場でもあります。
MAGAについては、茶化すフレーズもあります。「Make America Great Britain again(アメリカを再びイギリスにしよう)」というフレーズです。イギリスの女優エリザベス・ハーレイ(Elizabeth Hurley)は、アメリカ合衆国がイギリス帝国の植民地だった歴史を踏まえて、トランプを揶揄したことです。こうした笑いや皮肉も広まり、トランプの評判は、良きにしろ悪しきにせよ一層高まるのです。
最高経営責任者には、有名な人物がいます。電気自動車(EV)大手テスラ(TESLA)の最高経営責任者がイーロン・マスク(Elon Reeve Musk)です。昨年11月の大統領選挙キャンペーンにおいて個人寄付者として2番目に多くの資金を提供するなど、熱烈にトランプを応援し、今は政府効率化省(Department of Government Efficiency: DOGE)の事実上のトップとして活動しています。電子決済の先駆的企業PayPalの創業者の一人として成功を収め、その後電気自動車(テスラ)、宇宙開発(スペースX)、太陽光発電などのビジネスでも成功しています。2022年にはTwitter(現在のX)を買収します。
祝日が多い日本では、金曜日の捉え方が、欧米と較べて大きな意味があるとはいえません。ユダヤ教では土曜日が安息日なので、金曜日はその準備で忙しくなります。キリスト教では、東方と西方教会(eastern and western church)は断食の習慣があります。我が国では金曜日は週刊誌などの発行日となり、交通機関も週休二日に備え金曜日ダイヤを設定したりしています。若い人々にとって、金曜日がくると俄然張り切るものです。特にアメリカの学生はそうです。
韓国側には臨津閣(イムジンカク)という公園があり、ここに都羅(トラ)という展望台があります。そこから北朝鮮側の景色をみることができます。臨津江という河には橋が架かり、その名は「Bridge of No Return」(帰らざる河)とよばれています。臨津閣には毎年約650万人の観光客が訪れています。地下トンネルも観光の目玉となっています。私はこれまで韓国には5度訪ねています。2回臨津閣に行き、のどかな臨津江を眺めながら朝鮮の歴史を思い起こしました。
1957年に制作された「戦場に架ける橋」(The Bridge on The River Kwai)では、捕虜となったイギリス人兵士がクワイ川の橋造りにかり出されていました。この映画は、1943年の夏頃ビルマとタイの国境付近にある捕虜収容所が舞台で捕虜のイギリス兵士と日本軍人たちの対立や交流を描いた名画です。収容所長である斉藤大佐は、収容所付近にある泰緬鉄道をバンコクとラングーン間を結ぶために、クワイ川に架かる橋を建設しようとしてイギリス軍捕虜を召集します。第二次世界大戦以前の日本では、「捕虜」を「俘虜」という用語としていました。
1918年にホイジンガはアメリカ紀行を綴った「America: A Dutch Historian’s Vision from Far and Near」という本を書いています。ホイジンガはこの旅行体験をふまえて、アメリカにはピュエリリズムの特徴に関する「文明、哲学、人間関係、公の言論、社会的価値など、ありとあらゆる種類の検討材料」が揃っていると観察します。「ヨーロッパでは子どもっぽいといわれることが、アメリカではナイーヴ〔素朴〕なことである場合がたくさんあると観察し、真のナイーヴさはピュエリリズムの非難を免れるというのです。まだまだ、アメリカには「遊び」の真面目さ、厳粛さ、神聖さを伴ったフェアなものが見られると主張します。遊びには秩序(ルール)を守る心の余裕が必要であるが、アメリカにその余裕が見られるというのです。この見方には異論もあろうかと思われます。
トランプ政権は、これまでガザ(Gaza Strip)紛争に関連する学生抗議活動へのハーヴァード大学の対応を批判してきました。トランプ大統領は、 ハーヴァード大学がキャンパス内のユダヤ人学生を反ユダヤ主義的な差別や嫌がらせから適切に保護していなかったとして、1964年公民権法第6条(Title VI of the Civil Rights Act) に違反していると非難しています。
これに対してハーヴァード大学第31代学長のアラン・ガーバー(Alan M. Garber) は2025年4月14日、トランプ政権との補助金を巡る交渉で、学生や教員の「反ユダヤ主義的な活動」(antisemitism movement) の取り締まり強化などを求めた政権側の要求を拒否すると明らかにしました。ガーバーはユダヤ系アメリカ人であることも注目されます。トランプ大統領は、政権が推進する方針に従わない教育機関への補助金を打ち切る姿勢を示しています。 ハーヴァード大学は政権と真正面からぶつかる初めてのケースとなっています。
政府が審査している90億ドル(1兆2,888億円) には、 ハーヴァード大学への研究支援2億5,600万ドル (371億4,552円)に加え、大学およびマサチューセッツ総合病院(Mass General Hospital)、ダナ・ファーバーがん研究所(Dana-Farber Cancer Institute)、ボストン小児病院(Boston Children’s. Late Monday)など、複数の著名な病院への将来の拠出金87億ドル (1兆2,428億円)が含まれています。トランプ政権は月曜日遅く、 ハーヴァード大学への22億ドル(3,142億円)の助成金と6,000万ドル (85億7,780万円)の契約を凍結すると発表しました。
ハーヴァード大学は、ここ数週間でトランプ政権が標的とした数10校の一つに過ぎません。先月、教育省はコロンビア大学、ノースウェスタン大学(Northwestern University)、ミシガン大学(University of Michigan)、タフツ大学(Tufts University)を含む60の大学に対し、1964年公民権法の差別禁止条項に違反したとして強制措置を取ると警告する書簡を送付しました。さらに、政権は複数の機関の研究資金を凍結するという措置も講じました。
20253月に医学研究機関(United for Medical Research)が発表した報告書によると、生物医学研究へのアメリカ最大の資金提供機関である国立衛生研究所(National Institutes of Health: NIH)が資金提供する研究費1ドルごとに、2.56ドルの経済活動が創出されていると発表しています。報告書によると、NIHは2024年だけで369億ドル (5兆2,695億円)の研究助成金を交付し、945億ドル (13兆4,898億円)の経済活動を生み出し、40万8,000人の雇用を支えているとも伝えています。
2025年4月7日のインタビューで、デューク大学(Duke University) 経営学准教授で、アメリカ政府と高等教育機関の数十年にわたるパートナーシップに関するワーキングペーパーの共著者でもあるダニエル・グロス(Daniel P. Gross)准教授は、大学からの研究資金の撤退はアメリカのイノベーションにとって「壊滅的打撃」だと述べています。デューク大学に移る前は ハーヴァード・ビジネス・スクールで教鞭をとっていたグロス氏は、「大学は現代のアメリカのイノベーションシステムに不可欠な要素であり、大学なしでアメリカは成り立たない」と述べています。
ハーヴァード大学医学部( Harvard Medical School)のジョージ・デイリー(George Q. Daley)学部長は、バイオ医学は長きにわたり連邦政府との強力なパートナーシップに依存しており、そのパートナーシップはアメリカ国民の命を救う進歩という形で実を結んできたと述べました。デイリー学部長は今月、同医学部のジョエル・ハベナー(Joel Habener)教授が、糖尿病治療薬や抗肥満薬の開発につながったGLP-1に関する研究でブレイクスルー賞(Breakthrough Prize)を受賞したことを指摘しました。デイリー学部長はまた、心血管疾患、がん免疫療法、その他多くの疾患における革新的な研究にも言及し、連邦政府の補助金の重要性を指摘しています。