慰安婦問題 その3 エイズの蔓延

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アジアや中東の多くの国では、売春は違法とされていますが、実際には広く容認されています。イスラム教徒(muslim)が多数を占める国々の中で、トルコ(Turkey)は売春を合法化し、従事者に対する健康診断制度を設けています。他方、バングラデシュ(Bangladesh)では売春自体は建前上合法ですが、客引きなどの関連行為は禁止されています。

公益法人エイズ予防財団より引用

 アジアの一部の国では、子どもが売春に関与している現状が、そうした行為が違法とされる国々の男性による「セックス・ツーリズム」を助長する要因となっています。中南米の多くの国でも売春は容認されていますが、関連する活動には制限が設けられています。例えばブラジルでは、売春宿の経営、ポン引き行為、および子どもの搾取は違法とされています。

 1980年代、売春に対する認識は、二つの大きな出来事を経て劇的に変化しました。一つは世界的なエイズ(AIDS)の蔓延であり、これにより、売春に起因する公衆衛生上の問題への懸念が高まりました。特にアフリカでは、出稼ぎ労働者を対象とした売春産業が、エイズの急速な拡大の一因となりました。もう一つの重要な動きは、フェミニズム(feminism) の関心が再び高まり、売春をジェンダーに基づく搾取の結果であり、かつその徴候でもあると捉える視点が生まれたことです。こうした認識の変化を反映し、1980年代以降、営利目的の性的活動に従事する人々を指す言葉として、より中立的な「セックスワーカー(sex worker)」という呼称が広く使われるようになりました。

 性的人身売買は多くの国で発生しています。性的およびその他の形態の人身売買が横行している地域として、東南アジア、東欧、サハラ以南のアフリカなどが挙げられます。ストリップクラブやマッサージパーラーといった商業的性サービスに関連する施設は、その業態が社会の周縁に位置していたり​​違法であったりすることが多いため、性的人身売買の温床となりやすい場所です。また、空港やトラックストップなどの交通の要所も、性的人身売買やその他の形態の人身売買が頻繁に行われる場所となっています。

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慰安婦問題 その2 その歴史

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売春に対する認識は、社会によって異なる文化的価値観に基づいています。ある社会では売春婦が公認された職業の従事者と見なされてきた他方で、別の社会では忌み嫌われ、激しく非難され、投石や投獄、あるいは死刑といった罰を科されてきました。売春の客に対して同様の厳しさをもって臨んだ社会はほとんどなく、実際、多くの社会において、客が法的な制裁(repercussions)を受けることはあってもごくわずかか、あるいは全くないのが実情でした。

 Wikipediaによりますと、古代アナトリア(Anatolia)、現在のトルコ周辺の「リュディア」(Lydia)や古代イタリアの「エトルリア(Etruria)」、アルジェリアの「ウレド・ナイル族(Ouled Naïl)では、思春期(puberty)の通過儀礼(rite of passage)や持参金(dowry)を得る手段として少女に売春が求められたこともあり、特定の階級の巫女に売春を義務付けた宗教さえ存在しました。

 古代ギリシャやローマでは、売春婦に対して特徴的な服装の着用と重い税の支払いが義務付けられていました。ヘブライ法(Hebrew law)は売春を禁止してはいませんでしたが、その対象を外国人女性に限っていたといわれます。これらは現代の感覚から見ると極めて驚きですが、当時は女性が自立して結婚資金を確保する手段や豊穣と多産を願う神聖な通過儀礼として、社会的に非難されるどころか、むしろ承認された営みであったことが特徴的です。

 中世ヨーロッパ(Middle Ages)では、教会の指導者たちは、悔い改めた売春婦を更生させ、その持参金を工面しようと試みました。それにもかかわらず、売春は盛んに行われたといわれます。それは単に売春が黙認されていただけでなく、法によって保護・認可・規制され、重要な公的歳入の源泉ともなっていたのです。ヨーロッパ各地の大都市には公認の売春宿(brothels) が設けられました。フランスのトゥールーズ(Toulouse)では、その収益が市と大学の間で分配されていました。またイギリスでは、売春宿は当初ウィンチェスター司教(Winchester)によって、後には議会によって認可されていました。 

時事通信より引用

 現代の感覚からすると、大学や教会、あるいは議会といった公的・倫理的な機関が売春宿の運営や収益に関わっていたというのは信じがたいことかもしれませんが、中世、特に12〜16世紀頃のヨーロッパでは、売春は「社会的秩序を保ち、より大きな大罪や無秩序を防ぐためのもの必要悪」として、公的に認可、管理されるのが一般的でした。

 19世紀後半、西洋社会における様々な変化を背景に、売春を抑制しようとする動きが再燃しました。フェミニズム(feminism)の台頭に伴い、男性の放蕩を女性の地位や身体的健康に対する脅威と見なす人々が増えました。また、プロテスタント諸国における宗教に基づいた新たな道徳主義も影響を及ぼしました。

 1860年代以降、禁酒運動(temperance movement) や女性参政権運動と連携する形で、売春反対運動が活発化しました。売春を目的とした女性人身売買を根絶するための国際的な協力体制は1899年に始まりました。1921年には国際連盟(League of Nations)が「婦人児童売買問題委員会」を設置し、1949年には国連総会が売春の抑制に関する条約を採択しました。

 アメリカにおいて売春の取り締まりは、1910年に連邦法であるマン法(Mann Act)が成立するまでは、せいぜい散発的なものに過ぎませんでした。同法は、不道徳な目的での女性の州間移送を禁止するものでした。1915年までには、ほぼすべての州が、売春宿を禁止したり、売春による収益を規制したりする法律を制定されていました。

 第二次世界大戦後も、多くの西側諸国では売春が禁止され続けましたが、一部の都市では非公式に容認されていました。多くの法執行機関は、売春に伴う犯罪、特に客を標的とした窃盗や強盗の取り締まりを重視するようになりました。また当局は、少女が強制的に売春に従事させられることを防ぐための介入も行いました。現在、アメリカの大部分の地域で売春は違法とされていますが、ネバダ州(Nevada)の一部の郡では合法とされています。

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慰安婦問題 その1 慰安婦とは

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世界最古の職業といわれる売春行為(prostitution) は、今も世界中で見られます。言うまでも無く金銭やその他の金品と引き換えに、無差別な性的行為を行うことです。売春をする者は女性、男性、あるいはトランスジェンダー(transgender)であり、その行為は異性間または同性間で行われることもありますが、歴史的には、売春を行う者の大半は女性であり、客の大半は男性でした。

 売春に関わる人々の呼び方は時代によっていろいろ変化します。売春婦(prostitute)は昔から使われています。女性解放運動から奴隷女性(slave woman)とか性奴隷(sex slaves)が登場し、アメリカでは1920年代にホワイトスレイブ(white slave)という用語が生まれます。最近では、中性名詞のような響きを持つ性労働者(sex worker)と呼ばれるようになりました。

 慰安婦(comfort woman)という言葉が、売春を行う女性、あるいはそのように見なされる女性を指す言葉として広く使われるようになりました。その背景には、1930年代から1940年代にかけての旧日本軍による慰安所の設置と、当時、国が認めていた公娼制度が深く結びついています。1932年の上海事変以降、日本軍は海外の戦地に赴く兵士のために、性的なサービスを提供する施設を公式・非公式に設置し始めました。これが慰安所です。

Comfort Women ウィキペディアより引用

 当時、日本国内や朝鮮半島や台湾などの植民地には、法的・公的に売春が認められている公娼制度が存在していました。軍はこのシステムを海外の戦地にそのまま持ち込む、あるいは現地で利用する形で慰安所を運営したのです。その際、そこで働く女性たちのことを、軍の公文書などで「慰安婦」と呼ぶようになったのが始まりです。つまり、軍隊の慰安所に属し、兵士を対象に性的な接待を行った女性という意味で使われ始めました。

 戦後、この言葉はしばらく一般的な記憶から薄れていましたが、1990年代以降、大東亜戦争中の女性の動員や強制性の有無、人権侵害の歴史的責任をめぐる政治的・社会的な論争、いわゆる従軍慰安婦問題として、再び大きく注目されるようになりました。1990年代、一連の朝日新聞による慰安婦≒女子挺身隊との誤解に基づいた報道がなされ、韓国では、対日感情が悪化していきました。

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嫌煙権論争と慰安婦問題の共通点

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嫌煙権論争と慰安婦問題が似ていると指摘される主な理由は以下の4つの観点から説明されます。

・「被害の告発」と「道徳的優位性」のパラダイム
 両者に共通するのは、それまで社会的に看過されていた、あるいは表面化していなかった被害を当事者が告発することで、議論の主導権が大きく動いた点です。これはパラダイム(paradigm)の転換ともいわれます。特定の時代や分野において、人々が当然のこととして共有してきた物の見方、考え方、認識とか判断の枠組みが変わったのです。

 嫌煙権運動の展開ですが、かつては大人の嗜みとしてどこでも喫煙できた社会に対し、「非喫煙者は煙によって健康や快適さを害されている被害者である」という視点を提示しました。それに対して、慰安婦問題は、戦後長く公に語られなかった歴史に対し、大東亜戦争下での元慰安婦の人々が国家権力や戦時秩序による被害者であるという告発によってクローズアップされました。

 どちらのケースも、「被害者 vs 加害者」という構図が明確になることで、運動側が強い道徳的優位性、いわゆるモラル・ハイグラウンド(moral high ground)を持ち、社会的な支持や法制度、言論の変革を促す原動力となりました。

・「言語の定義」と「主観的アプローチ」を巡る対立
 議論の核心にある言葉の定義や当事者の証言をどう評価するかという点でも、次のような構造的な類似性が見られます。

 まず嫌煙権論争ですが、受動喫煙という言葉の定着が運動を決定づけました。これに対し、反対派や慎重派からは不快感という主観的な問題を、科学的根拠を超えて絶対視していないか、という反論がなされるようになりました。

 次に慰安婦問題です。強制連行や性奴隷(Sex Slaves)といった表現の定義を巡り、日韓両国や研究者の間で激しい論争が続いています。客観的な公文書などの物的証拠を重視する立場と、当事者の記憶や証言の尊厳を重視する立場の対立が続いています。

・メディアによる「正義の二極化」
 どちらの問題も、新聞やテレビなどのメディアが大きく取り上げることで社会問題化し、メディアの論調によって世論が二分されました。報道が過熱し、特定のメディアがキャンペーン的に問題を取り上げることで、それまで関心の薄かった人々にまで関心が広がりました。

 嫌煙権論争と慰安婦問題の議論が深まるにつれ、「健康を守る正義 vs 喫煙の自由を守る権利」、「人権を尊ぶ正義 vs 国益・歴史の真実を守る主張」といった形で、双方がそれぞれの正義を掲げて妥協のない対立に陥りやすい性質を持っています。

・被害の範囲と影響の「不可視性」
 目に見えにくい被害や過去の出来事を現在進行形の課題としてどう扱うかという点も指摘されます。たばこの煙は拡散しやすく、どの程度の拡散が具体的な発がんや疾患に直結したかを個々のケースで完璧に証明することは容易ではありません。ですが全体としての健康上のリスクを根拠に喫煙の規制が進みました。

 慰安婦問題では、過去の大東亜戦争下における精神的・肉体的苦痛は見えにくく、時間が経つほど実態の検証が難しくなります。どのように当事者の精神的傷痕をどのように理解し、その尊厳を回復するかが問われ続けています。

 嫌煙権論争と慰安婦問題が似ていると言われるのは、潜在していた被害の告発が社会の共通認識というパラダイムを塗り替えていくプロセスや、主観的な語りや正義論が先行し、客観的な定義やデータ派との間で激しい感情的かつ論理的対立を生む構造が酷似しているからです。

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嫌煙権論争と慰安婦問題の本質

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嫌煙権(Right to a smoke-free environment) 論争と慰安婦問題は似ているといわれます。その理由を考えてみます。嫌煙権論争の本質は、単なる「タバコの煙が好きか嫌いか」という個人の嗜好の問題ではなく、公共の空間における個人の権利と自由の衝突であり、ひいては法や社会規範が個人の私的行為にどこまで介入すべきか、という対立にあります。

Wikiediaより引用

 嫌煙権論争と慰安婦問題は、一見すると公衆衛生や・マナーと歴史認識・外交という全く異なる分野のテーマです。しかし、社会運動の広がり方、メディアの役割、当事者の語りの扱い、そして対立の構図において、いくつかの共通点や類似性が議論の対象になってきました。

 かつてタバコは「単なる迷惑(マナーの問題)」と捉えられていましたが、科学の進歩によって「受動喫煙による明確な健康被害(加害性)」が証明されたことで、論争の本質がガラリと変わりました。そして嫌煙権論争が生まれます。

 近代社会の基本原則には、「他人に危害を与えない限り、個人の自由は保障される」という危害原理(John Stuart Mill)があります。やがてマナーだった時代からお互い譲り合いましょうという道徳論への発展します。健康被害が証明され、 喫煙が 他者への明確な加害行為とみなされるようになり、嫌煙権側が法的・社会的な規制を求める強力な正当性を得ました。

 嫌煙権論争の本質とは、個人の嗜好の自由が他者の健康と生存の権利を脅かすとき、社会はどちらを優先し、いかに空間を切り分けるべきかという、公衆衛生と個人主義のバランスをめぐる法哲学的、かつ社会的な対立だと言えます。現在では世界的に健康権の優位という形で決着がつきつつあり、論争はいかに実効性のある分煙や禁煙環境を作るかという実務的な段階に移行しています。

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国際卓越研究大学の認定と助成額

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認定制度によって助成される研究費は、国が創設する10兆円規模の「大学ファンド」の運用益から、最長25年間にわたり、1校あたり年間数百億円規模の資金が助成されます。実際の支給額は各大学の事業計画や企業からの研究費などの外部資金の獲得実績に応じて変動します。具体的な助成金は以下の通りです。

 第1号認定となった東北大学は、計画初年度(2025年度)の助成額は約154億円となっています。第2号認定となったのは旧東工大・医科歯科大が合併してできた東京科学大学です。東京科学大学は、2026年4月より体制強化計画を開始しています。第3号認定が決まったのが京都大学です。今年度分として約200億円が助成される見通しです。しかし、助成額は国家予算の115兆円に比べて25年間に渡る一校数百億円規模という認定大学の助成額は、まだまだ少ないと思われます。

 卓越大の「選び方」で重要なのは、各大学が助成金を使って「どう変わろうとしているかという体制強化計画に注目するのが最も本質的です。卓越大に選ばれる、あるいは候補になる大学は、これまでの古い大学構造を壊すような大胆な改革を掲げています。例えば京都大学の計画では、教授を頂点とする従来の閉鎖的な研究室という小講座を廃止し、分野横断的な研究がしやすい「デパートメント制」への移行を明言しています。「風通しの良い環境で、最先端の融合研究がしたい」という場合は、こうした組織改革の進捗が目安になります。 卓越大の認定を受けた京都大学は、卓越大としての全学ビジョンを次のように掲げています。

・自由で独創的な研究による知の創生によって、社会の多元的な課題解決と社会を変革するイノベーションの創出に貢献
・世界のアカデミアを牽引する優れた研究者とグローバルに活躍する高度な専門能力を有する人材を養成と輩出
・国際社会に開かれた総合大学として、世界から多様な人材が集う国際的な知の拠点(ハブ)を形成

 卓越大に選ばれるには、資金の多くを「優秀な若手研究者の育成」や「博士課程の学生への生活費相当の支給など経済的支援に充てる義務があります。若手研究者や院生への支援手厚さで選ばれるのです。

 卓越大は、「国際化」と「民間連携」の度合いで選ばれます。英語での講義や研究環境の構築や、海外トップ大からの研究者招致、企業との大型共同研究が爆発的に増えることになります。世界基準の環境や社会実装に直結する研究を望むなら、間違いなく有力な選択肢になります。

 この制度に選ばれた大学では、世界から優秀な研究者が集まるだけでなく、博士課程の学生に対する授業料免除や給付型奨学金の支給といったサポートが劇的に手厚くなるはずです。若手が経済的な心配をせず、世界最高水準の設備で研究に没頭できる環境が整えられることが期待されます。

 今や東北大、東京科学大、京都大などがリードしていますが、企業などから大学へ支払われる「寄付金」や「共同研究費」の管理をめぐり、過去に複数の不祥事が発生している東京大学も長期にわたる審査が続けられています。各大学の「研究等体制強化計画」は文科省や各大学のウェブサイトで公開されています。日本の大学全体の底上げではなく、「世界で勝てる数校のトップランナーを国を挙げて育てる」という、これまでになく劇的で集中した投資政策、それが国際卓越研究大学といえます。

 現在、中小の大学は、文科省から支払われる運営費交付金が年々減少傾向にあり悩んでいます。卓越大にのみ焦点があてられるのではなく、地域経済や社会と密着に結びつく地方の大学の振興も求められています。こうした大学もまた、日本学術振興会および文部科学省が交付する競争的資金である科学研究費補助の獲得に努力すべきことは当然です。

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国際卓越研究大学は世界に通用するか

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日本の学術界を大きく変えかもしれないといわれる国際卓越研究大学(卓越大- University for International Research Excellence)制度について解説します。卓越大とは、日本から世界トップレベルの研究力を発揮する大学を育てるために、国が新たに創設した研究開発支援の認定制度です

 この認定制度の背景には、近年の国際的な論文ランキングにおいて日本の大学の地位が低下しているという強い危機感があります。海外のトップ大学であるハーヴァードド大学(Harvard University)やスタンフォード大学(Stanford University)などのように、巨額の基金運用益(endowment)を研究環境や人材獲得に投資できる仕組みを日本でも作り、世界に互した研究力の好循環を生み出すことが狙いです。

 認定制度には大きく分けて、以下の3つの特徴があります。第一は、 認定する政府機関です。卓越大を最終的に認定し認可するのは文部科学省です。ただし、文科省が単独で決めるわけではなく、専門家で構成される有識者会が各大学の計画を厳格に審査し、さらに内閣府の総合科学技術・イノベーション会議への諮問や意見聴取を経て、文科大臣が正式に認定する仕組みになっています。

 認定される大学は、巨額の支援を受ける代わりに、大学には非常に高いハードルが課されます。年3%の事業規模の成長が求められます。すなわち企業からの共同研究費など外部資金の獲得や、大学独自の基金を増やすことで、経済的に自立し成長していく計画が求められます。

 次に大学には経営体制であるガバナンスの刷新が求められます。研究と経営を分離し、外部の有識者も交えた「合議制の機関」を設置してトップダウンで迅速な意思決定ができる体制に変えることが求められます。

2025年度の一般会計税収の理由

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2026年7月に発表された一般会計税収の全体的な傾向と金額の目安は以下の通りです。総税収はおよそ84兆2,226億円で前年度の約75.2兆円から大幅増となりました。さらに法人税・所得税・消費税のすべても前年度を上回る好調な結果となりました。なぜこのような過去最高の税収入の増加になったのか?大きな要因は「企業業績の好調」「物価上昇のインフレ」、「賃上げ」の三点といわれます。

 まず法人税の伸びですが、企業業績の好調があります。歴史的な円安の継続や、企業の価格転嫁が進んだこと、さらに訪日外国人の需要の回復などが追い風となり、自動車産業や観光業、大手企業を中心に過去最高水準の純利益を記録する企業が相次ぎました。これにより、企業が納める法人税が大きく上振れしました。

 次に消費税の伸びです。物価の上昇にともない、商品の小売価格やサービス価格が全体的に底上げされました。消費税は「商品の価格×税率」で計算されるため、物価が上がればそれだけ税収も増えます。また、訪日外国人による国内での旺盛な消費行動も消費税収を押し上げる要因となりました。

 賃上げと所得税の伸びの関係です。人手不足や物価高への対抗策として、多くの企業で高水準のベースアップやボーナスの増額が実施されました。働く人の給与の額面である名目賃金が上がったことで、個人の所得に対して課される所得税の総額が増加しました。

 このように税収は過去最高を更新し続けていますが、高齢化に伴う社会保障費や防衛費などの歳出も膨らみ続けているため、これだけの税収があっても不足しています。その一つの理由は、一般歳出のうちの債務償還費や利払い費などの国債費が約28兆円となっていているからです。そのため、依然として約30兆円規模の新規国債を発行して穴埋めしている状態が続いています。60年償還ルールというのがあるせいです。本来ならば、借換国債で政府の借金を帳消しにすべきなのですが、、、

 政府と日本銀行をあわせた組織は、統合政府と呼ばれています。統合政府は、膨大な金融資産などを保有しています。政府が発行する国債ー借金の総額は近年では約1,340兆円規模に上ると報じられています。ただ、政府の借金である国債を日銀が買い取っているため、両方の借金と資産を合算し相殺して、本当の国の借金状態を把握するのが大事なのです。単に政府の借金だけを喧伝するのは国民に大いなる誤解を与えます。

 財務省などが発表する「国民1人あたり1000万円以上の借金」という数字は、この相殺を行っていない単純な合計額です。財政破綻への懸念: 統合政府のバランスシートで国全体の財務状況を評価すると、保有資産も大きいため日本はすぐに財政破綻するわけではないのです。

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2025年度の一般会計税収の発表から考える

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2026年7月3日に2025年度の国の一般会計歳入の決算速報が発表されました。かつて2025年12月5日にこのブログで「税収入の仕組みと税収弾性値」という原稿をアップしました。そのとき話題にしたのは「税収弾性値」というテーマです。税収弾性値とは、経済成長に対する税収の伸び率を表す指標です。具体的には、名目GDP成長率が1%増加したときに、税収が何%増加するかを示す数値です。この値が高いほど、経済成長に連動して税収が増加する効果が大きいことを意味し、財政再建に有利だとされます。

財務省のホームページから引用

 財務省はこれまで、税収弾性値を低く「1.1」と見積もって「経済成長しても税収は伸びない」と主張し、増税の根拠にしてきました。しかし柳ヶ瀬氏はこれを問題視し、国会での質疑や、参議院に提出した 質問主意書を通じて政府に迫りました。結果として、政府は過去10年間(平成22年度〜令和元年度)の平均税収弾性値が「3.23」になることを、質問主意書への答弁書で認めざるを得なくなりました。このことから、経済成長によって国の税収は政府が想定する以上に大きく増えることが明らかになっています。 

 長年、財務省が税収弾性値「1.1」という数値を使って、税収入を予測してきました。税収弾性値を低く設定しておけば、「社会保障の自然増分を稼ぎ出す成長を期待することも難しい、従って増税する必要が生まれる」という説明です。社会保障費の必要性を十分喧伝しておけば、後は自ずと「増税するしか無い!」という結論が導かれることとなるのです。これが財務省が「1.1」を捨てなかった理由です。この財務省の実に狡猾な方針は柳ヶ瀬議員によって見事に看破されました。

 さて、2025年度の総税収は、当初の見通しを大きく上回るおよそ84兆2,226億円となり、6年連続で過去最高を更新、初めて80兆円の大台を突破しました。主要3税である法人税、所得税、消費税の概要と、そうなった背景や理由は次稿で説明します。

 

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政策金利上昇のチャンスを捉えるーープラスの恩恵

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日本銀行は2026年6月16日に、31年振りに政策金利を0.75%から1%に引き上げました。それに伴い三菱UFJ銀行など三社のメガバンクは普通預金の利息を0.3%から0.4%へ引き上げました。かつての0.001%という超低利の時代は去りました。2024年初頭の0.001%の時代と比較すると400倍の水準です。100万円を預け入れた場合、1年間で受け取れる利息は税引前で 4,000円となります。

 普通預金が0.4%に底上げされるため、定期預金金利、特に1年以上のものは、それを上回る水準で1年もので0.4%台後半〜0.5%超、長期のものは1%の大台へ展開するという見通しです。従って持っている普通預金の一部を定期預金などに移すのは理にかなっています。

楽天カードから引用

 なぜ日銀は政策金利を上げる決定をしたかです。金利というのは物価を調整する役割を持つといわれます。金利が上がると消費は下がります。企業は資金を借りるのを渋り設備投資を控えるのです。金利が下がると、その逆の現象となり銀行などから融資を受け、設備投資が促され消費者の需要が上がります。

 今回、日銀が政策金利を上げたのは、中東での戦争、ウクライナ情勢による原油価格の上昇とそれに伴う急激な原材料価格の上昇、円安に伴う輸入コストの上昇、食料品価格の上昇が大きくなる事を懸念したことです。金利上昇でモノやサービスの需要が減れば人件費上昇に歯止めがかかり、インフレの抑制につながります。今回の金利の引き上げは、インフレが暖まってきたので、急激な物価上昇のショックを少なくするためにとった決定だといわれます。ただ日銀は、経済活動の過熱を抑え、インフレ率を2%に安定させることを目指しています。

 政策金利の引き上げは銀行が顧客に払う預金金利の上昇につながります。年金などの運用利回りが上昇し利息収入も増えることで、金融資産を持つ家計にはプラスの恩恵がありそうです。

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政策金利上昇のチャンスを捉えるーーじっと待つか

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多くのマンション管理組合は、多額の修繕積立金を抱えています。ですが一銭の利息も付かない決済用普通預金となっているところがあり、「とにかく元本を絶対に減らしたくない」という「動かないでじっと待っていることにメリットがある」と信じて疑わない不可解な組合もあります。

 マンションなどへ金融支援する住宅金融支援機構が発行する債権は、10年満期時で年平均利率が税引前で2.1%というものです。これに加えて、メガバンクの定期預金を組み合わせ、リスクを分散させながら、積立金の運用を考えるのは、時代の趨勢であります。「元本を絶対に減らしたくない」と考える姿勢は変えるべきなのです。その理由を以下で述べます。

 動かないでじっと待っていることにメリットがあるのがかつてのデフレの時です。デフレでは物価は下がり、現金の価値が守られる時です。物価が下がるということは、需要が供給より少ないということです。デフレ期では、企業はリスクを避け、内部留保を増やす一方、人件費を抑制しました。人々の需要が増えず企業は設備投資を控え、賃金も物価も上がりませんでした。

 国家にとって大事な技術革新のための十分な投資も行われず、他国の成長や発展に遅れをとるのです。デフレでは、消費者は節約志向となります。給料が上がらず、年金や医療など社会保障への将来不安もあるため、人々は消費を切り詰め、貯蓄に回すようになりました。

 他方、金利が上がり積極的にチャンスをとりにいくのがインフレの時です。預金利子が上がり、資産運用などで株や投資信託をすることで利益を得ることができるのです。当然ながら、物価は上昇しますが、賃金もそれに劣らず上昇するのです。このとき、箪笥預金などをじっと守ってきた人の資産は目減りするのは当然です。

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アメリカ連邦の祝日ージューンティーンス

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アメリカで比較的新しく連邦の公的な祝日として制定された、奴隷解放を記念する日がジューンティーンス(Juneteenth)です。名前の由来は、6月(June)と19日(Nineteenth)を組み合わせたかばん語(混成語)です。

 この祝日の歴史的な背景についてです。1863年1月1日にエイブラハム・リンカーン(Abraham Lincoln) 大統領は「奴隷解放宣言」(Emancipation Proclamation) を出します。しかし、南北戦争(Civil War) の最中だったこともあり、南部の一部の地域にはその内容がすぐには浸透しませんでした。

Gordon Granger

 宣言から2年半近く経った 1865年6月19日、テキサス軍管区の司令を任された北軍(Union)のゴードン・グレンジャー将軍(Gordon Granger) がテキサス州(Texas)ガルベストン(Galveston)に到着し、未だ拘束されていた黒人奴隷たちに彼らが自由の身になったという軍令を読み上げました。この「テキサス州の奴隷たちへついに解放の知らせが届いた日」が、ジューンティーンスの始まりです。

 グレンジャー将軍が読み上げた大統領の「一般命令第3号」は以下のようでした。

合衆国大統領からの布告により、あらゆる奴隷は自由であると、テキサスの人民に告知する。対人権と財産権について、以前の主人と奴隷の間における完全なる対等性を伴うものであり、彼らの間にこれまでに存在する関係は、雇用者と被雇用労働者の間におけるものとなる。

Juneteenth

 連邦の祝日になった経緯は公民権運動の一環といってよいようです。すなわち長年、この日はアフリカ系アメリカ人のコミュニティを中心に大切な記念日として祝われてきました。2020年に起きた人種差別抗議運動(Black Lives Matter)などをきっかけに、国全体で祝うべきだという機運が急速に高まりました。

 そして 2021年6月17日、ジョー・バイデン大統領(Joe Biden) が法案に署名したことで、アメリカで12番目の連邦祝日として正式に制定されました。連邦祝日の新設としては、1983年の「キング牧師記念日」(Martin Luther King Jr. Day) 以来、38年ぶりのことでした。

 この日は、パレードやフェスティバルが行われるほか、アメリカの歴史や自由の尊さについて家族や地域で考える大切な祝日となっています。

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給付付き税額控除とは その6 イギリスの社会保障給付制度

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主にイギリスで導入されている低所得者向けの総合的な社会保障給付制度がユニバーサル・クレジット(Universal Credit)です。バラバラだった6種類の福祉手当をオンライン申請で一本化し、「働くほど収入が増える仕組み、つまり就労インセンティブ」を重視している点が特徴です。

 イギリスでは、2013年から段階的に導入が進められている制度です。その具体的な仕組みと特徴は以下の通りです。
1) 制度の主な特徴6つの給付の一本化:
 これまで別々に管理されていた求職者手当、住宅手当、児童税額控除など6つの手当が「ユニバーサル・クレジット」として一つに統合されました。

参考資料: Office for National Statistics

2) 働く意欲の向上と貧困の罠の解消:
 従来は一定時間以上働くと給付金が大きく減額され、かえって手取りが減る「働くほど損をする」構造がありました。ユニバーサル・クレジットでは、収入が増えても給付金が段階的に減っていく仕組みを採用し、働くメリットが生まれるように設計されています。

3) オンラインによる単一窓口:
 原則としてデジタルでの申請と管理が行われ、所得状況に応じて月単位で給付額が自動調整されます。構成される手当基本となる基礎手当に加えて、扶養する子どもの数障害の有無や介護責任住宅費の状況に応じて加算が行われます。

 その他、カナダの制度は、勤労給付(Canada Workers Benefit, CWB)とかカナダ児童手当(Canada Child Benefit, CCB)があり、低所得勤労者や子育て家庭に対して、税額控除と現金給付を組み合わせた支援が行われています。フランスでは、活動手当(Prime d’activité)という働く低〜中所得者に対する給付付き税額控除的制度で、所得に応じて現金給付が行われています。

 日本の社会保障政策の議論においても、この制度はしばしば参考にされています。日本では生活保護や児童手当、就学援助など多くの制度が縦割りで存在しているため、これらを統合し簡素化して、マイナンバーなどを活用する確定申告によって個人の正確な所得資産を把握するなど、制度設計や実施方法を検討しつつあります。こうして以上のような海外制度を参考にして効率的かつ柔軟に給付を行おうとする「日本版ユニバーサル・クレジット構想」が一部の政治家や有識者から提唱されています。

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給付付き税額控除とは その5 アメリカの給付付き税額控除

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給付付き税額控除は、所得税の控除枠を使い切れない低所得層に対して、その差額を「現金給付」として支給する画期的な仕組みです。アメリカの他、税額控除を導入している国は多く、カナダ、イギリス、イタリア、オーストリア、ベルギー、オランダ、ルクセンブルク、スウェーデン、フィンランド、ニュージーランド、韓国等、OECD加盟国で10か国以上にも及んでいます。税額控除は主に「就労促進」や「子育て支援」の文脈で導入されています。

 先行して導入している欧州諸国やアメリカで、勤労所得税額控除:Earned Income Tax Credit (EITC) の運用実績があります。格差是正や労働意欲の向上につながる制度に思えます。勤労所得税額控除とは、低・中所得の勤労者を対象とした「給付付き税額控除」制度です。所得増と貧困削減を目的とし、条件を満たせば税負担の軽減や現金給付を受けられます。

 同時にこの制度には、いくつかの深刻な実務上の問題点や課題も指摘されています。それを大きく分けると、以下の4つの問題点があります。

1) 不正受給と過誤支給:
 税額控除を適用するには「世帯所得」や「家族構成(子どもの同居要件など」を厳密に把握する必要がありますが、これを狙った不正や、制度の複雑さゆえの申請ミスが多発しています。これが現場での最大の悩みの種といわれます。
・所得の過少申告:  自営業者や現金手渡しで給与を受け取る層が、給付金を目当てに所得を低く申告するケース。
・世帯偽装:  給付率が最も有利になるよう、書類上だけで同居や別居のステータスを操作するケース。
・チェックの限界:  アメリカの事例では、支給された税額控除の約25〜30%近くが「適正ではない」というデータもあり、税務当局が短期間でこれらすべてを審査するのは物理的に困難とされています。

2) 制度の複雑化と「行政・申請コスト」の増大:
 公平性を追求して「子どもの数」「共働きかどうか」「資産の有無」など細かな適格要件を付け足していくと、制度がどんどん複雑化します。

 制度が複雑すぎて一般の人が自分で申請できず、有料の申告作成業者に頼まざるを得ない現象が起きています。代行業者の介入という問題です。結果として、「貧困層のための給付金の一部が、手続きの代行手数料として業者に吸い取られる」という本末転倒な事態も起きています。

 行政の縦割り問題もあります。税金を徴収する「税務官庁」と、生活困窮者を支える「社会保障官庁」が、お互いのデータをリアルタイムで連携し一致させるためのシステム構築に莫大なコストがかかります。

3) 就労インセンティブの「逆転現象」:
 この制度は通常、所得が増えるにつれて給付額がグラデーションで減っていくように設計されますが、設計が非常に繊細です。

 働くほど損をする壁があります。 所得が一定ラインを超えた瞬間に、給付金が急激に減額されたり、他の社会保障例えば、住宅手当などが打ち切られたりすると、「これ以上働くと手取りが減るから、労働時間を抑えよう」という貧困の罠といわれる就労抑制が働いてしまいます。

 ヨーロッパ諸国はこの「崖: cliff effect」をなだらかにするために、給付の減額率を緩やかにする工夫をしていますが、その分、今度は中所得層まで給付対象が広がってしまい、財政負担が膨らむというジレンマも抱えています。

4) 正確な「資産・所得の捕捉」という前提:
 ヨーロッパ諸国がこの制度を運用できているのは、国民一人ひとりに紐づいた確実なマイナンバー制度など共通番号制度と、金融口座や資産情報の網羅的な把握が完全に定着しているからです。

 給与所得だけでなく、隠れた金融資産がある人にまで給付が行き届いてしまっては不公平になります。そのため、利子や配当といったすべての所得を国が迅速かつ正確に把握できるインフラが不可欠であり、これが不十分な国ではスタートラインにすら立てないという難しさがあります。

 まとめると給付付き税額控除は「必要な人に過不足なく現金を届ける」という点では優れていますが、それを実現するための「捕捉の難しさ」、「不正の温床」、「行政事務の肥大化」という、非常に重い運用コストと背中合わせの制度であると言えます。

 日本の国会や選挙でもたびたび導入が議論されますが、上記のような「正確な資産把握」や「既存の生活保護制度との整合性」といったハードルが高く、いまだ慎重な姿勢が続いているのは、こうしたヨーロッパやアメリカの苦い教訓があるためです。

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給付付き税額控除とは その4 給付一本化

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現在進行中の国民会議と財務省との議論の落としどころについてです。既に述べてきたような懸念を踏まえ、国民会議や国会の場で財務省を含む政府側が提示している最新の設計図では、当初想定されていた複雑な仕組みをより簡素化する方向へ舵が切られています。

① 「減税」はせず、まずは「給付一本化」へ
 本来の給付付き税額控除は「税金から引き、引ききれない分を現金給付する」という2本立てですが、これを行うと税務署の計算が複雑になりすぎます。そのため、現在の実務者協議では「当面は税額控除はせず、個人の所得に応じた給付に一本化する」という方向で調整が進められています。これにより、事務コストを大幅に抑える狙いがあります。

② 対象を「働いている中低所得者」に限定し高齢者らは対象外
 資産を持っているのに給付されてしまう不正や注意義務や倫理観が薄れるモラルハザードを防ぐため、対象を「現役の働く中低所得層」に絞る方針が強まっています。つまり、年金受給者や生活保護世帯などは原則として対象外とし、「勤労所得」に応じて給付額を変動させる仕組みです。

③ 「年収の壁」の解消と「子育て世帯」への重点配分
 財務省としても、単なるバラマキではなく「労働不足の解消」につながる政策であれば、予算を投じる大義名分が立ちます。そのため、収入が増えるほど手取りがなめらかに増える設計し、働くほど損をする『年収の壁』の解消し、さらに「子育て世帯」には給付額を上乗せして所得上限を引き上げるなど、少子化対策と連動させる形で決着がはかられるかもしれません。

このような議論の経過を調べると、当初の給付付税額控除の設計図は大きく変わり、低所得者など支援が必要な人々は、この仕組みの恩恵を受けられないような情勢です。政争に明け暮れる政治は、庶民の感覚からすればなにか縁遠いような、本末転倒ともいうべき有様です。

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給付付き税額控除とは その3 財務省の意向

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財務省の給付付き税額控除の導入についての意向を掘り下げることにします、財務省は、歴史的にその意義は認めつつも、実務面や財政面の課題が極めて多いため、慎重に精査すべき、というスタンスを長くとっています。「慎重に」とは、本質的にはこの制度を実施したくないという意味です。しかし、2025年後半から始まった政府の「税と社会保障の一体改革」や「国民会議での議論を経て、財務省も含めた政府の具体案が急速に形作られつつあります。

(読売新聞より引用))

 財務省がこれまで懸念してきたポイント及び、現在の具体的な検討の方向性は以下の通りです。財務省が最も懸念していたのは、「不公平な給付とか不正受給」と「財源の確保」です。次に正確な所得や資産の捕捉が難しいという公平性の問題があります。徴税するときはある程度の誤差が許されても、国から現金を配る給付となれば、1円の誤りや不正も厳しく批判されます。特に自営業者の所得、いわゆる「クロヨン問題」や、多額の資産を持ちながら「今年の労働収入はゼロ」という高齢者層に対し、正しく判定して現金を配れるのかという実務上の大きな壁があります。

 「クロヨン問題」とは、職業によって税務署が把握できる所得の割合に不公平があるという問題です。サラリーマンは所得の「9割」を把握される一方、個人事業主は「6割」、農林水産業者は「4割」しか把握されないとされていました。クロヨンとは、それぞれの捕捉率(9:6:4)の頭文字をとったものです。

 給付付税額控除には、事務負担の肥大化があるといわれます。全国民の所得状況をリアルタイムに把握し、税務署や自治体が個別に減税と給付の計算を行うには、多額のシステム投資と人手が必要です。単なる減税ではなく現金給付を伴うため、対象者の線引き次第では数兆円〜10数兆円規模の歳出が毎年発生するといわれます。財政規律を重視し国債の発行に慎重な財務省としては、確実な財源がないまま導入することに強い警戒感を持っています。しかし、システム投資は一過的な措置であり、長期的にはリターンが得られることを考えるべきです。

 財務省のスタンスをまとめると、かつては「所得が捕捉できない」「財源がない」と後ろ向きなのですが、現在は「働く現役世代の支援と就労促進に限定し、実務を極力シンプルにした給付制度」にするのであれば、社会保障改革の一環として本格的に制度化を容認するという現実的な姿勢にシフトしているといえます。

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給付付き税額控除とは その2 社会保障国民会議の考え

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社会保障国民会議(以下国民会議)において「給付付き税額控除」議論が続いています。2026年6月時点、制度導入に向けた具体的な方向性が固まりつつある段階です。ですが、財政規律を重視し財源をいかに確保するかを懸念する財務省との立場の差があります。

財務省の意図と、現在の国民会議における議論の主な違い・特徴は以下の通りです。

  1.  国民会議による現在の設計方針2026年5月以降の実務者会議において示された骨子は、「純粋な税額控除との組み合わせ」から「給付への一本化」への転換という非常に重要な特徴を持っています。

 当初想定されていた「税額控除(納税額の減額)」と「現金給付(差額の還付)」を組み合わせる複雑な仕組みではなく、行政上の簡素化と迅速な支援を優先し、所得連動型の現金給付として実施する方向が示されています。次に世帯単位ではなく、マイナンバー等を活用して「個人単位」で支援を行う方針です。対象と目的ですが、 中低所得の勤労世代を主要な対象とし、「年収の壁」の解消や、就労意欲を阻害しない形での家計支援を目的としています。制度の執行体制としては、公金受取口座を活用し、申請不要の「プッシュ型」給付を目指しています。

  1.  財政規律の側面からは、事務効率を重視する財務省と、「政策効果・スピード・政治的決断」を優先する首相官邸・与党側の国民会議との間での調整という側面があります。

 違いの制度論 vs. 実務論に関してです。財務省は、給付付き税額控除という名称通り「税制」としての整合性や、公平な所得捕捉を重視する傾向があります。一方で、国民会議側は、システム構築に時間のかかる複雑な税額控除制度よりも、「現金を給付する」という実効性を先行させる判断をしています。

 次に政治主導の速度感についてです。高市首相の肝入り政策として、2027年度の本格導入というタイトなスケジュールが引かれており、官邸・与党側は「完璧な税制の構築」よりも「速やかな支援の実現」へ舵を切っています。

 今後の見通しですが、2026年夏前の「中間取りまとめ」を経て、骨太の方針への反映、そして秋の臨時国会への法案提出が目指されています。今後は、この「給付一本化」の案が、税制上の「所得再分配」としてどこまで機能するのか、また社会保険制度との整合性をどう確保するのかが、最終的な制度設計の焦点となるようです。

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給付付き税額控除とは その1 4つの利益

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この制度が導入されると、国民には以下のような具体的な社会的なメリットが生まれます。
1)  低所得層や非課税世帯にも確実に支援が届くことです。2024年に行われた定額減税では、減税しきれない世帯に対して別途「調整給付金」を配るなど、手続きが非常に複雑でした。給付付き税額控除が恒久的な制度として定着すれば、所得が低い世帯にもワンストップで自動的に現金が給付され、格差の是正や生活の安定につながります。

2)  消費税の「逆進性」が和らぎます。消費税は、所得の低い人ほど「収入に対する税負担の割合」が大きくなるという問題、つまり逆進性を抱えています。給付付き税額控除によって基礎的な生活費にかかる消費税分を計算し、低所得層に還付することで、実質的な税負担を公平にすることができます。消費税の逆進性とは、所得が低い人ほど収入に対する税負担の割合が重くなる性質のことです。所得の多い人ほど高い税率が適用される累進課税とは逆に、所得に関わらず一律の税率が課されるため、生活必需品の支出割合が高い低所得層に重くのしかかる点が問題視されています。

(読売新聞より引用)

3)  「年収の壁」を意識せず、就労インセンティブ、つまり働く意欲が高められます。アメリカの勤労所得税額控除などでは、「働いて収入が増えるほど、国からの給付額、あるいは減税額が手厚くなる」という設計が一般的です。「これ以上働くと社会保険料や税金で損をするから労働時間を抑えよう」という、いわゆる「年収の壁」による働き控えを抑え、働けば働くほど手取りがなめらかに増えていく安心感が得られます。

4)  子育て世帯などへの重点的な上乗せが可能となります。一律10万円給付などの一律の現金給付とは異なり、税のシステムと連動しているため、子どもの数に応じて控除額を増やすといったカスタマイズが容易です。これにより、本当に支援が必要な現役の子育て世帯にピンポイントで手厚い支援を届けることができます。

 今後の課題もあります。国民にとってメリットの多い制度ですが、マイナンバー等による正確な所得把握という課題です。国が資産も含めて誰がいくら稼いでいるかを正確に、リアルタイムで捕捉する必要があります。そのため、行政のデジタル化やマイナンバー制度との連携、さらには数兆円〜十数兆円規模となる財源をどう確保するかが、制度の本格導入に向けた大きな議論の焦点となっています。

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給付付き税額控除とは

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給付付き税額控除とは、一言で言えば「減税」と「現金給付」をセットにした仕組みのことです。従来の減税である所得控除や通常の税額控除は、税金を多く納めている人ほど恩恵が大きく、所得が低くて納税額が少ない人や、非課税世帯には恩恵が及びにくいという弱点がありました。この弱点を克服し、すべての所得層に公平に支援を届けるために考案されたのがこの制度です。

 給付付き税額控除が、具体的に国民にどんな利益があるのかです。次のように所得によって具体的な仕組みを説明します。もし1人あたり「5万円」の給付付き税額控除が導入された場合、所得の状況によって以下のように3つのパターンに分かれます。

(毎日新聞より引用)

1) 所得が高く、所得税を10万円納めている人の場合
 10万円の税金から5万円が差し引かれ、実際の納税額は6万円になります。
2) 所得が低く、所得税を1万円だけ納めている人の場合
 まず税金の1万円がゼロになります。引ききれなかった残りの4万円は現金でに振り込まれます。
3) 所得税が非課税(0円)の人の場合
 引くべき税金がそもそもないため、5万円がそのまま全額現金で給付さまれます。

 このように、税金を治めているかどうかにかかわらず、全員が一律で同じ4万分の経済的支援を受けられるのが給付付き税額控除に最大の特徴です。

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二人の王様のユーモアと風刺のジャブ

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国王即位後、チャール国王の初めてのアメリカ訪問は、多くのアメリカ国民に感銘を与えたようです。上下両院での演説は単なる外交辞令ではなく、今の世界の諸々の課題に共に勇気を持って立ち向かおうとする気概やエスプリが込められていたのです。演説の途中、何度も議員らが敬意や感動、そして称賛の意を表すために立ち上がって拍手を送る姿がありました。

 議員の総立ちにより演説は一時途絶えますが、その間議員らは、今混乱するアメリカの施政について、もう一人のキングに対する疑惑や反感を考えたに違いありません。このキングは、議会における演説では決して民主党議員から総立ちの賞賛を受けたことがなかったのです。共和党議員ですら総立ちになって拍手するのですから、キングは歯ぎしりをしたはずです。

Charles III

 演説中、チャール国王はこのもう一人のキングの名前は出しませんでした。それが相手に対する国王としての矜持と礼儀だったからです。外交では批判する相手を名指しすることはありません。しかし、議員達は、チャール国王の演説の文脈に、数々の荒々しい発言を繰り返すもう一人のキング、ドナルド・トランプ大統領を容易に想像できたのです。

 チャール国王の演説草稿は、もとはといえば歴史学者ともいえそうなスピーチライターが国王と相談して起草したものと思われます。聴衆の心に響くストーリーを構成し演出するため、過去のイギリスとアメリカの関係について考証し、事実に基づいて起草したことが伺えます。

 歴史上、イギリスと植民地であったアメリカはいわば兄弟のような関係がありました。1760年代のイギリスはジョージ3世の施政下にありました。彼は絶対的な主権を維持し、植民地に対して一貫して強硬な為政をしいていきます。彼は、「植民地は本国に従属すべきもの」という信念を持っていました。植民地への「重商主義政策」と、それに伴う「課税強化」です。それに対して植民地側は和解の嘆願をを送ります。ジョージ3世はそれを拒絶し、彼らを「反逆者」と断定するのです。

 1700年代のアメリカ大陸におけるイギリスとフランスの覇権争いは、「北米植民地戦争」と呼ばれます。ヨーロッパ本国での戦争と連動して何度も衝突を繰り返しましたが、最終的にはイギリスの圧倒的な勝利で幕を閉じました。ジョージ3世は対話よりも軍事力を優先し、ドイツから傭兵を雇い入れてまで植民地の施政に介入します。この強硬姿勢が、それまで国王個人を敬愛していた植民地の人々に「国王は暴君である」と認識させ、独立宣言へと突き動かす一因となっていきます。

 ホワイトハウスでの晩餐会で、二人のキングが交わしたウイットに富むジョークも話題となっています。それは、ダボス国際会議でトランプ大統領が、「第二次大戦で、アメリカがなかったならば、欧州諸国はドイツ語を使っていただろう」という演説に対するものでした。チャール国王はそれに言及して「あえて申し上げれば、イギリスがなかったならば、皆さんはフランス語を話していただろう」と植民地戦争で、フランスの影響力を払拭させたのを遠回しに言ったユーモアだったのです。

 今回のチャールズ国王の訪米は、相手への節度ある賞賛を交えながら、イギリスの立場をしなやかに示した機会となったようです。それが議会での演説であり、晩餐会での答礼スピーチに示されています。

Two kings exchange jab of humor and satire.

King Charles’ first visit to the United States since his accession to the throne seems to have impressed many Americans. His speeches to both houses of Congress were not merely diplomatic formalities, but imbued with a spirit and determination to bravely confront the various challenges facing the world today. Throughout his speeches, members of Congress repeatedly rose to their feet and applauded, expressing their respect, admiration, and praise.

The speeches were temporarily interrupted by the standing ovations, during which the members of Congress must have been contemplating the current turmoil in American governance and their suspicions and resentment towards another king. This king had never received such a standing ovation from Democratic members of Congress during his speeches.Even Republican lawmakers rose to their feet and applauded, so he must have been gnashing his teeth.

During his speeches, King Charles did not mention the name of this other king. This was a matter of royal pride and courtesy. In diplomacy, one does not name the target of criticism. However, in the context of King Charles’ speeches, the members of Congress could easily imagine the other king, President Trump, who has made numerous harsh remarks.

King Charles’ speech draft was originally written in consultation with the king by a speechwriter who could be described as a historian. It appears that the speech was based on a thorough examination of past British-American relations, in order to construct and present a story that would resonate with the audience.

Historically, Britain and its colonies, America, had a relationship akin to brotherhood. In the 1760s, Britain was under the rule of George III. He maintained absolute sovereignty and consistently imposed a hardline policy on the colonies. He held the belief that “colonies should be subordinate to the mother country.” This manifested as “mercantilism” and the accompanying “increased taxation” of the colonies. The colonies sent petitions for reconciliation, but George III rejected them, declaring them “rebels.”

The struggle for hegemony between Britain and France in the Americas in the 1700s is known as the “North American Colonial Wars.” These conflicts, linked to wars in Europe, involved repeated clashes but ultimately ended in an overwhelming British victory. King George III prioritized military force over dialogue, even hiring mercenaries from Germany to intervene in colonial administration. This hardline stance led the colonists, who had previously revered the king personally, to perceive him as a tyrant, contributing to the Declaration of Independence.

A witty joke exchanged between the two kings at a White House dinner has become a topic of discussion. It was in response to President Trump’s speech at the Davos conference, where he stated that “if America hadn’t existed in World War II, European countries would have spoken German.” King Charles responded by saying, “If I may say so, if Britain hadn’t existed, you would all have spoken French,” a humorous indirect reference to Britain’s role in eliminating French influence during the colonial wars.

King Charles’s recent visit to the United States appears to have been an opportunity to subtly demonstrate Britain’s position while offering respectful praise to the other side. This is evident in his speeches to Parliament and his reciprocal speech at the dinner in the White House.