ウィスコンシンで会った人々 その14 日本の教員と「イクボス」

6月2日、滋賀県内の中学校、高校、特別支援学校の校長を集めた研修会が大津市内であったと報道された。研修の話題は「イクボス」。NPO法人代表理事の講演を聞き、出席者全員が「教職員の仕事と家庭の両立を応援しながら自らも仕事と私生活を楽しむ「イクボス」となる」などと書かれた宣言書にサインしたというのだ。笑いを堪えられなかった。

「イクボス」という造語を知ったのは最近のことである。「男性の従業員や部下の育児参加に理解のある経営者や上司のこと」とある。新語や造語には弱い。この造語にあたる英語は知らない。そもそもないはずである。なぜなら、父親も母親も働くのが当たり前。両方が育児をしないと仕事は成り立たない。皆が「イクボス」なのだ。

わが国で「イクボス」が話題になる要因には、女性の職場での地位が不安定なこと、男性の就業時間が長いこと、就業開始や終了時間、職場が均一であることによるものと思われる。

第一の女性の職場での地位だが、昔からその地位は不安定であった。妊娠、出産、子育てに対する配慮が誠に不十分だったこと、それによる男性に比べての昇任や待遇での差別がはっきりしていた。

第二の男性の就業時間である。教員を引き合いにしてみる。2012〜2013年の経済協力開発機構(OECD)の調査では、日本の中学校教員の一週間の仕事時間は53.9時間で、参加34カ国や地域で最も長かったというのである。

第三の就業開始や終了時間、職場が均一ということとである。誰もが同じ就業時間であっては子育ては難しい。例えば保育所に誰が送り迎えするかである。職場についても、自宅やサテライトオフィスでの仕事が可能であれば子育てはかなり改善される。

学校の教員であるが、授業の開始や終了時間はどの学校も同じであるからこれを変えることはできない。だが4時半とか5時半に帰宅できることは可能なはずだ。OECDによる調査で、一週間の仕事時間は53.9時間というのは異常な事態なのである。むしろ労働協約や契約によって下校時間をきちんと守ることが大事だ。公立学校の教員には特例法で時間外手当を支給する必要がない。従って残業は駄目だということである。

そこで提案だが、教職員は5時帰宅を遵守することだ。校長や教頭は「イクボス」になる必要は全くない。むしろ教職員組合との協約を学校内で履行するように気を配ることだ。教職員は、時間外手当がでないのだから残業をする必要がないと決めてかかることだ。

まぜっ返すようだが、どうしても残業をしなければならないときは、管理職に時間外手当を要求すべきなのである。協約や契約を遵守すること、授業以外の校務などで仕事量を減らすこと、不毛な会議を減らすことを実行することが必要だ。

「イクボス」よりも就業規則にうるさい管理職にならなければならない。「イクボス宣言書」に署名したという校長は、なんとアホなのかとさえ思えてくる。労働協約や契約のことを知らないことを露呈している。教員の「働き過ぎ」という実態に一刻も早くメスをいれなければならない。そのためには先進国の教職員の働き方を参考にすべきだ。

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