素人のラテン語 その十三 シソーラスと類語辞典

私は文章を書くとき、辞典や百科事典を必ず使います。それで思い出す二つの出来事があります。高校の英語の授業で英文の訳を指名されたときです。”Power of Hitler became gradually strong” といった文章を翻訳するときです。私は「ヒットラーの力が頭をもたげてきました」と訳したのです。すると先生が、「頭をもたげてきたというのより、”台頭してきた”という文章にしなさい」というのです。もう一つは北海道大学での教養部での英語の時間で、教授が「大学生になったのだから英英辞典を使いなさい」という言葉です。

  「頭をもたげる」というは、なんとなくが単調な響きがあります。「台頭してくる」という文章のほうが、的確な表現であることに気がつきます。このように、高校生から大人になると当然ながら言い換えが可能な違う単語を使うことが期待されてきます。

英英辞典についてですが、日本語で文章を作るときと同じように、英語でもそれ相応の単語を使い文章化しなければなりません。例えば論文は、専門用語とか業界語を使うのは当然としても、文章自体が洗練されていなければなりません。中学校で習う単語は専門用語になりません。しかし、より大人の単語を使うとしてもその語彙を知っていないと使えません。あるアメリカ人から「交際する」という表現の場合、「intercourse」という単語を使うのは誤解を受けると云われたことがあります。確かに辞典には「交際」という説明もありますが、「性交」が「intercourse」の主たる意味なのです。

単語とか語彙の使い方を学ぶには辞書だけでは不十分です。どうしても英語語句辞典とか類語辞典などが必要となってきます。こうした辞典には、単語を使った文章が例として掲載されています。単語の正しい使い方を学ぶには英和辞典とか和英辞典では不十分なのです。

英語語句辞典の代表が「Roget’s Thesaurus of English Words and Phrases」です。1852年、英国でピーター・ロジェ (Peter Mark Roget ) が、語彙を意味によって分類します。この辞典は通称、「英語語句宝庫」といわれ英語語句辞典の始まりといわれています。”Thesaurus”とはギリシャ語で宝物庫という意味だそうです。我が国では、通称「シソーラス」と発音されています。